女優・加藤貴子 「不妊治療に高齢出産…勝手に抱いた気合と覚悟は、いつの間にか意地と過度な負荷に」
連載18回目となる女優・加藤貴子さんのお話は、何もする気が起きないときでも、“ちょっと待った”のない育児について。この連載は、44才で第一子、46才で第二子を出産した、加藤さんの赤裸々な育児話と、育児に影響を与えた言葉を紹介しています。
やる気が起きないときのやり過ごし方
私は20代のころからときどき、やる気や気力がうせて、だれとも会わずに自分だけの世界に引きこもりたくなるときがあります。それはたいてい季節の変わり目に訪れるのですが、あれこれ自分のしりをたたいて抵抗を試みるも、そもそも打ち勝とうという気力が乏しいので、大抵は“時間の許す限り引きこもる”ということになっていました。
とくにそこから脱する手段もコツも持つに至らず、40代に突入。人生半ばまで来ると少しは学習効果も得て、抵抗するのも疲れるので、無気力が訪れたときは悪あがきせずに、まんじりともしないながらも好きなことをしてやり過ごしていました(ええ、好きなことは…少しはやれるのですね…たとえば好きなだけ寝る、とか…汗)。
そんな私を夫も理解してくれたので、結婚後もとくに自分のリズムを崩すことなく、やり過ごすことができていました。ところが、子どもが生まれてからはそうはいきません…。生活は子ども中心。気力うんぬんどころか、熱を出そうがけがをしようが、こちらの都合は二の次で、日々の生活はやってきます。
お母さんに休みはありません。今日はどうもやる気が出ないのでお母さんではなくお姉さんで、というわけにもいきません。もちろん当たり前だと思っていますし、覚悟もしていました。まわりや世間から散々言われた、「かわいいだけじゃ子どもは育たない。子育てには大きな責任が伴う。それを背負っていけるのか?何よりもそういうことが幸せなんだと思えるのか?」という言葉が思い出されます。
“引きこもる”ことができない中での、無気力との向き合い方
先日とうとう正念場がやってきました。突然気力がエンプティ。どんなに自分をふるいたたせても、体が言うことをきかない。弱った…。
私の友だちは、見渡せば偶然にも、保育士の資格を持っている人多数で、現役でやっている人もいれば、家業を継いだり事業を起こしたり、中には里親家庭になったりする人もいて、子育てしながら仕事をこなしている、スーパー母ちゃんがちらほら。そして、そんなスーパー母ちゃんの子どもたちはどの子もステキに成長している。
「気力が出ない」なんて甘ったれたこと言ってる自分はどうしたらいいのか?と、必要がプライドを追い越して、わらにもすがる気持ちで尋ねたら、意外な答えが返ってきました。
「そういうときはサボっちゃいなよ」
「たしかにかわいいだけじゃ子育てはできないかもしれないけど、かわいいからお母さんを続けられるんだよ」
「責任だけじゃ続かないと思うよ。お母さんが笑顔でいられることが子どもにとってはいちばん大事」
「たまにはふりかけごはんだけの日があったっていいじゃない。おいしいよ」
不妊治療の末にやっと授かった子どもたち。しかも高齢出産。子どもたちにふびんな思いをさせないようにと抱いた気合いと覚悟が、いつの間にか意地になり、身の丈に合わない過度な負荷を、自分にかけていたようです。
それからは疲れがたまったり、頑張り過ぎちゃってるな~と自覚できるときは、友だちの言葉を思い出して、「今日は手を抜かせていただきます」と家族皆の前で宣言し、適度にサボっています。
文/加藤貴子 構成/ひよこクラブ編集部
スタートを切ったら待ったなしの育児ですが、365日100%の力で過ごせる人はいません。だからこそ、普段から多くの人やものに頼り、息抜きしながら育児ができるといいですね。次回も、加藤さんの育児の対するリアルな思いを紹介します。お楽しみに!
加藤貴子さん(かとうたかこ)
Profile
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。