【女優・加藤貴子】実母&義母との3世代同居を開始!お互いに支えあう家族のかたち
たまひよONLINEで連載中の子育てエッセイで、育児に影響を与えた言葉を紹介してママたちの共感を集めている女優の加藤貴子さん。2021年4月から、義母・実母との3世代同居を始めたそうです。息子たちにとってはばあばが2人!
ばあばたちとの同居や、7才と4才の子どもたちの変化について話を聞きました。
3世代同居、うまくいくコツはルールより思いやり
――夫の母、自身の母との同居に至った経緯を教えてください。
加藤さん(以下敬称略) 昨年、90才の義父が尿路感染症(にょうろかんせんしょう)をきっかけに入院をし、入院が長引いて歩けなくなってしまったんです。義母は1人暮らしになり高齢だし、どうにかしなければという状況になりました。一方で私の母は静岡に住んでいたんですが、コロナ禍で外出を控えたらこちらも足腰がよわってきてしまったんです。私は仕事の関係で静岡に頻繁に通えないこともあり、もうそれならいっそ全員で共同生活をしよう、ということに。
義父が車いすで病院から外出してきても大丈夫なように、夫の実家をバリアフリー対応にリフォームして、今年の4月から、義母、実母、夫、私、子ども2人の共同生活が始まりました。義父が入院している病院はその家から近いので、会いにも行きやすくなりました。
――3世代というか、夫婦両方の親と3世帯の同居というのはなかなかないですよね。覚悟が必要だったのでは?
加藤 よく決断したわね、3世代で同居なんてえらいね、とよく言われるんですけど…覚悟もなにも、家族みんなが健康で過ごすために、必要に駆られただけなんです。親が歩けなくなったら、という心配もありましたし。同居によって雑多な用事は増えましたが、実は助かっていることがすごくあります。私の姉も義兄姉もたくさん助けてくれますしね。
――都市圏では核家族化が進んでいて、親世代との同居にあまり気が進まない人もいますが…
加藤 もちろん、摩擦が起きたりけんかをしたり、ストレスもあります。私も夫も実の親にはつい無遠慮になってしまうところがあって、私は義母に実母の文句を言ったりもするんですが(笑)、義母は「たかちゃん、それは感謝しなきゃいけないわよ」なんて冷静にアドバイスしてくれるんです。
夫も私も、相手の親には優しくできるので、フォローしあえてバランスがすごくいいと思います。同居にあたってとくにルールなどは決めませんでしたが、みんなが思いやりを持って行動してくれています。子どもたちにとっても思いやりの気持ちを自然にはぐくめる環境はとてもありがたいです。
――ばあば同士も仲がいいんですか?
加藤 そうですね、いろんな情報をシェアしあっていますね。私の母は美肌ケアが大好きなんですが、義母に「どうしてそんなに肌がきれいなの」と聞かれて、母がケアのしかたを教えてあげると、義母も肌がきれいになり始めたんですよ(笑)。
義母はおすすめの整骨院を母に教えてくれて、おかげで母の足腰が少しよくなって階段の登り下りが楽になってきたようです。
同居を始めてすぐのころ、母2人とも転んでけがをしてしまったんですが、自分の不注意でけがをするとみんなが大変になると思ったらしく、2人とも自分の体や健康に気をつけてくれるようになりました。
2人とも、新しい環境になじむように自分を変えていくことがとっても上手で、尊敬しています。変化を受け入れながら生活をしていく工夫ができるんですよね。さすが、戦後の激動の時代を見てきた人たちは、やっぱりすごいです。
子どものそばにいてくれるだけで心強い存在
――子育ての面ではどんなことが助かっていますか?
加藤 義母は84才、実母は83才なので、7才と4才の子どもたちを長時間預かってもらうのは難しいですが、ちょっと買い物に行くくらいなら、子どもと一緒にテレビを見ながらおしゃべりをして過ごしてくれます。あとは、私が食事を用意しただけで仕事に出なければならないようなとき、子どもが1人で食べないようにそばにいてくれます。
2人とも「子育てしているあなたたちがいちばん大変なんだから、できる限りのことはやるわよ」と声をかけてくれ、本当に心強いし助かっています。調子がいいときには、実母は料理を作ってくれたり、義母は洗い物をしてくれたりします。
――ちょっとしたことでも、子どものそばにいてもらえるのはとても安心感がありますね。お子さんたちは3世代同居が始まってからどんな様子でしょうか。
加藤 私がすごく怒ったとき、子どもたちはおばあちゃんのところにすぐ逃げます(笑)。それはいいことですよね。それに、親以外の意見が聞けるのもいいこと。私が小さいころは近所のおじさんに怒られたり、近所のおばさんに優しくしてもらったりしましたけど、今はあまりそういう機会はないですよね。
また、長男は小学校に上がって初めて「戦争ってなに?」と聞いてきたのですが、ばあばたちは幼いころに戦争を経験しているので、直接話を聞くことができました。そのほかにも、昔ながらの童謡とか、探し物が出てくるおまじないとか…ばあばたちから学ぶことってすごくたくさんあるなぁと感じます。
もし、子育てと介護のダブルケアになったとしても…
――今後、子育てと介護のダブルケアになったら…という心配はありますか?
加藤 そうですね、それはあるかもしれないなとは思っています。でも、もしそうなったとしても、子どもにはいい影響があるだろうと思うんです。
ばあばたちと同居して、子どもたちにとっては無条件で愛してくれる人が2人増えたわけです。その人たちが病気になったときには、介護の手助けを一緒にしてもらうつもりでいます。心配というよりは、そのときには家族みんなで助け合って生きていきたいと思っています。
ばあばたちとの同居で子どもたちはたくさん我慢することもあるでしょう。でも少しずつ子どもたちが人を思いやる気持ちを身につけてくれていると感じます。
最近は、私が大声で「ばあば、ごはんだよー!」と呼ぶと、長男がばあばの部屋へ走って教えに行ってくれたりするんです。私が長男に「ありがとう、助かったよ」と伝えると、これはお母さんが助かることなんだと少しずつ学んでくれているようです。子どもたちの成長には、こういう小さなことの積み重ねが大切なんじゃないかな、と思います。
お話/加藤貴子 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
3世代同居は覚悟が必要なのでは?と思ってしまいますが、「みんなで助け合っていますよ」とにこやかに話す加藤さん。お互いが思いやりを持つことを大事にしているから、とてもいいチームワークで協力しあえるのでしょう。ばあばたちの存在は子どもたちの成長にもいい影響を与えてくれそうです。
加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。