まさか自分が…おなかにずっと『ごめんね、ごめん』と泣いた日々…“双胎間輸血症候群”になった話
3歳の双子の男の子を育てながらSNSに育児漫画を投稿しているさゆりさん。ふだんは双子あるあるだったり育児中の面白エピソードを漫画にしていますが、さゆりさんが妊娠中に双胎間輸血症候群という双子の赤ちゃんの命に関わる診断を受けたときの漫画が話題に。双子のママ以外はあまり耳にしない病名ですが、その壮絶な体験にだれもがぎゅっと胸が締め付けられるような思いになります。
プロフィール /さゆり
夫と双子の男の子はるくん&あっくん(3歳)と暮らすママ。Twitter(@NANASHIORI)やブログ「ふくふくツインズ」で育児漫画を中心に公開している。
1日の思い出を振り返るように描き始めた双子育児漫画
――育児漫画を描き始めた理由を教えてください。
さゆりさん「子どもたちが寝てくれるようになった生後6ヶ月頃、昼間はまだまだ大変で写真を撮る時間がなかったので、夜になってから1日の思い出を振り返るように描きはじめたのがきっかけです。今も2人が寝ている時間に描いています」
――双子の妊娠がわかったときのさゆりさんの心境は?
さゆりさん「最初、検査薬で妊娠が分かったときの夫は『僕は何となく妊娠してるって分かってたけどね』なんて余裕の表情でした。
けれども診察中に『男の子かなぁ?女の子かなぁ?』なんて考えていたら先生から『あ、双子だね』ってさらっと言われたあの瞬間を私は今もはっきり覚えています。そのときの夫の顎が外れそうなくらい驚いた表情も……。とっても驚きました(笑)」
妊娠が発覚し、双子だとわかり喜んでいたさゆりさん夫婦。順調に妊婦生活を送っていたある日、ふとおなかの異変に気がつきました。
19週ごろに感じたおなかの異変
<エコー確認中の先生の顔が硬直……!>
※「TTTS(双胎間輸血症候群)になった話」の漫画の一部抜粋しています。全ページはTwitter(@NANASHIORI)で見ることができます。
双子出産のリスクに「まさか、自分が」
おなかに異変を感じつつも、いつもどおりワクワクしながら妊婦健診に行ったさゆりさんですが、そこで思いもよらない言葉を聞かされることに……。
――“双胎間輸血症候群”だと知らされたときの状況や心境をお聞かせください。
さゆりさん「『まさか、自分が』と思いました。
双子だと分かった日に、先生から『まずはリスクの話をさせてください』と言われていました。2人は一卵性で胎盤を共有しているのでリスクも高い方でした。白い紙に起こるであろうリスクを書きながら説明してくれていたのですが、そのときは『この子たちは大丈夫だろう』と思っていました。
双胎間輸血症候群だと診断された日、おなかにずっと『ごめんね、ごめん』と泣いていました。景色が一瞬で暗くなり、『私たちはどうなるんだろう』『この子たちは生きられるんだろうか……』そんなことばかり考えていました」
妊娠19週ごろの妊婦健診で……
<検診中にもう一人先生がやってきて“双胎間輸血症候群”と診断される>
手術条件が揃わない…具合が悪くなっていく2人をただ見守る
双胎間輸血症候群と診断されて大きな病院に入院。双子の赤ちゃんを助けるには胎盤の血管を分離させるレーザー手術が必要とのこと。けれどもこのときはまだ手術できる条件が揃っておらず、毎日エコーで観察してようすを見ることになりました。
――条件が揃わず手術ができなかった間のさゆりさんの心境を聞かせてください。
さゆりさん「入院してもすぐに手術ができず、条件が揃うまで3日ほどかかりました。とにかく辛くて、早く手術がしたかったです。暗い部屋で3人の先生が相談しながらエコーをしてくれたのですが、『まだできないな……』と呟いていたのを聞いたときは本当に絶望でした。病室に帰って、おなかをさすりながらずっと泣いていました」
羊水の深度が足りず手術ができない
<2人の生命力を信じて手術条件が揃うまで待つ>
――手術できるとなったときのさゆりさんの心境と決意をお聞かせください。
さゆりさん「とにかく嬉しかったです。それまで条件が満たされず、おなかの中でどんどん具合が悪くなっていく2人をモノクロのエコーで見守るしかできませんでしたから……。手術が決まった日は『やるしかない。生きるためにはこの道しかない』そう思いました」
手術できる条件が揃ったとき
<正直怖いけれど…手術しか助かる方法がない!>
※「胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術」のこと
手術中のさゆりさんの心境
<これまでのできごとが頭の中を駆け巡る>
手術中、モニターに映し出された赤ちゃん
<さゆりさんのおなかの中で、2つの小さな体が必死に生きていた>
手術はさゆりさんの体にも強い痛みを伴うものでしたが、手術の最後にモニターで2人の姿を見て「手術が終わったんだ」と安心感を覚えたそう。
ベビー用品や妊婦さんを見るのも辛かった時期を乗り越えて……
あとは手術後の変化に2人が耐えられるかに委ねられました。その夜、さゆりさんは息苦しさと腹痛で一睡もできず、不安と緊張を抱えながら診察を迎えました。
――無事に手術が成功したと聞かされたときと、37週で無事に生まれてきてくれたときの心境を聞かせてください。
さゆりさん「先生が成功したと教えてくれたとき、あんなに怖かったエコーをやっと見ることができました。それまでは確認できなかった小さな小さな膀胱を確認できたときは嬉しくてずっと泣いていました。
私は病名を告げられた日から『もしかしたら、2人を抱っこできないかもしれない』そう思っていました。ベビー用品を見るのも、大きなおなかの妊婦さんを見るのも辛かったです。おなかが大きくなると、今まで感じたことのない苦しさを感じていましたが『2人が生きている』と実感できて嬉しかったです」
手術後の診察で……
<手術は成功!22週まで入院して無事に退院>
さゆりさん「そして37週目に2人の産声を聞いた日、助産師さんが2人を連れてきてくれて、私はずっと『がんばったね、がんばったね』と言いながら2人の小さな小さな手をそっと撫でていました。あの手術中のモニターで見つけた手のひらを、今やっと触ることができたんだと嬉しい気持ちでいっぱいでした。
子どもたちのために治療してくださった先生、そして毎日私とおなかの子どもたちに話しかけてくれて、励ましてくれた看護師さん、助産師さんには感謝の気持ちでいっぱいです」
37週目にしてついに出産
<親子3人で乗り越えた出産>
――現在のお子さんの近況をお聞かせください。
さゆりさん「2人は現在3歳になりました。イヤイヤ期で大変な日もありますが、『ありがとう』や『だいすきだよー』と笑顔で言ってくれた日は疲れが飛ぶような気がします。
3歳になると自分の気持ちを言えるようになってきて、『今日何が楽しかった?』って聞いたらずっと1日の楽しかったことや嬉しかったことを聞かせてくれます。保育園でお友だちができたみたいで、友達の話しもしてくれるようになりました」
最近の2人のようす
<レスリングの試合を観て>
一般的に出産のリスクが高くなると言われている双子妊娠・出産。けれどもリスクを聞いてもいまいちピンとこないし、実際になってみないとわからないことがほとんどではないでしょうか。もちろん多胎出産に限らずですが、改めて出産は母も子どもも命がけだと気付かされるさゆりさんの貴重な体験レポートでした。
ふだんは明るくほのぼのとした双子育児漫画を投稿しているさゆりさん。「いろんなお母さんが少しでも笑顔になってくれるような漫画をこれからも描いていきたいと思います」と話してくれました。双子育児中の人もそうでない人も楽しめるので、さゆりさんのSNSやブログをぜひのぞいてみてくださいね♪(文・清川優美)