妊婦は注意!生肉や家庭菜園で先天性トキソプラズマ感染症に?発達の遅れや障がいが起こる可能性も…。予防対策5つのポイント【産婦人科医】
コロナ禍では、感染症というと新型コロナウイルスを思い浮かべる妊婦さんが多いかもしれません。しかし、妊娠中はほかにも注意したい感染症があります。赤ちゃんへの影響が心配な感染症のなかから、今回はトキソプラズマ症について、帝京大学医学部付属溝口病院産婦人科の土屋裕子先生に教えてもらいました。
トキソプラズマ症は主に生肉を避けることで予防可能
ママから赤ちゃんに感染することを母子感染といいますが、このうち、妊娠中にママが感染して、おなかの中の赤ちゃんが感染するケースもあります。それによって流産・早産や、生まれてくる赤ちゃんに重い障がいを引き起こすものがあり、それらの感染症の総称を、頭文字をとって「TORCH(トーチ)症候群」と呼びます。
T: Toxoplasma gondiiトキソプラズマ
O: Others:梅毒や水痘、エイズ、パルボウイルスB19(りんご病)など
R: Rubella virus風疹
C: Cytomegalovirus サイトメガロウイルス
H: Herpes simplex virus 単純ヘルペスウイルス
妊婦さん自身への影響が少なく、気づかないまま感染し、おなかの赤ちゃんに感染していることもあるため、妊婦さん自身がTORCH症候群を知ることや妊婦健診をきちんと受けること、基本的な感染予防と対策が大切になります。
トキソプラズマ症は、初感染が疑われる場合には薬剤を使用することで、胎内感染率が低下するといわれており、万が一の場合の対処法があります。
妊娠初期の初感染に注意を!
トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫という寄生生物による感染症で、人を含め、ブタやニワトリ、ヤギやネコなどの動物に感染します。大人が感染してもほとんど症状はなく、発熱やリンパ節の腫れが起こるケースもあります。妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、妊婦健診等で抗体検査を行います。施設によっては検査をしていない場合もありますが、希望すれば検査は可能です。
次の妊娠を予定している場合、同じ施設ならデータは残りますが、別の施設で妊婦健診を受ける際は新たに検査が必要になります。もしも2回目以降の妊娠で血液検査の結果に問題があった場合に、以前の妊娠中の血液検査の結果があると、おなかの中の赤ちゃんがどのくらいの確率で感染しているのかを調べるときにとても参考になります。ぜひ産後も妊娠中の検査データは母子手帳と一緒に保存しておきましょう。
流産・早産、脳や体の発達の遅れ、将来的な視力障がいの恐れも
妊婦さんが妊娠初期に初めて感染し、おなかの赤ちゃんも感染すると、流産・早産や死産の原因になることがあります。
また、赤ちゃんに現れる障がいとしてもっとも多いものは網脈絡膜炎(もうみゃくらくまくえん)で、先天性トキソプラズマ感染症に罹患した赤ちゃんのうち4〜27%が視力障がいを起こすといわれています。症状や障がいの重さはさまざまで、小学校中・高学年になってから視力のトラブルが出てくるケースもあります。
感染しないための予防対策5
加熱が不十分な肉やネコの排せつ物、またガーデニングや家庭菜園、砂遊びなどで手に病原体がついて、口から体内に入るケースがおもな感染ルート。下記の感染予防を行いましょう。
1、妊娠中、生肉は避け、肉類を食べるときは十分に加熱する
自分で肉を焼いて食べるケースなどでも中まで焼けているか注意を。また生ハムや生サラミも、妊娠中は避けましょう。
2、泥がついた生野菜や有機野菜、果物はよく洗う
3、妊娠中に初めて猫を飼い始めるのは控える
4、ネコのトイレ掃除は夫や家族にお願いし、自分でする場合はマスクとゴム手袋の着用を
5、ガーデニングで土を触るときは手袋を着用し、触ったあとはしっかり手を洗う
文/茂木奈穂子、たまごクラブ編集部
日本は食品の衛生管理が行き届いていますが、おなかの赤ちゃんを感染症から守るためにも、妊娠中はできるだけ火の通ったものを食べるほうが安心です。もし心配なことがあれば、まずは主治医の先生に相談してみましょう。
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