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コロナ禍で増えた!?帝王切開。2人目の赤ちゃんは経腟分娩で産みたい人が増える理由は?【専門家】

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赤ちゃんの誕生を介して帝王切開
※写真はイメージです
mvaligursky/gettyimages

近年、コロナ禍の影響もあり帝王切開分娩となる人が増加傾向にある中、1度帝王切開を経験したママが、2人目の出産方法に経腟(ちつ)分娩をするTOLACという言葉が知られてきています。関西福祉大学看護学部・助教の川﨑千春先生は、ママたちがなぜ経腟分娩を希望するかの理由について、ソーシャルメディア(※1ウィメンズパーク)の投稿内容を分析した研究を発表しました。自身も3人の子を帝王切開で出産した経験を持つ川﨑先生に、ママたちの気持ちについて話を聞きました。

帝王切開後の次の出産で、TOLACを希望するママが増えている?

――近年、帝王切開による出産件数は増えているのでしょうか?

川﨑先生(以下敬称略) 帝王切開分娩の件数は増加傾向にあるといわれています(※2)。その原因には、高齢出産や不妊治療(生殖補助医療)の増加によるハイリスク分娩が増えていることが影響していると考えられます。またこの2年ほどは新型コロナウイルスに罹患(りかん)したことで帝王切開を余儀なくされたケースもあるという現状があります。

――帝王切開による出産を経験したママのうち、2人目以降の出産方法に経腟分娩を希望する人が多いのでしょうか?

川﨑 ある医療施設では、1度帝王切開を経験した人のうち、2回目の分娩方法は68.2%が経腟分娩をおこなったというデータがあります。全国的な統計はありませんが、このデータからも、1回目の出産は帝王切開だけれど、2回目は経腟分娩を希望する女性が多いとは言えると思います。

帝王切開後に妊娠した妊婦さんが、経腟分娩をめざすことをTOLAC(Trial Of Labor After Cesarean:トーラック)と言います。私が分析したソーシャルメディアではVBAC(Vaginal Birth After Cesarean:ブイバック)という言葉を使用している人が多かったですが、VBACはTOLACが成功した場合のことを言います。

2011年ころから1度帝王切開手術をおこなった妊婦さんに対しては、医療者側からTOLACの方法があることと、子宮破裂などのリスクを説明すること、という内容が産婦人科診療ガイドライン(※3)に記載されています。ただ、TOLACを希望できるかどうかは、施設によっても異なります。また、TOLACを実施できる施設数自体がそもそも少ないというのが現状です。

――ママたちは、どのようにしてTOLACが可能な施設を探しているのでしょうか?

川﨑 今回分析したソーシャルメディアでは「○○市に住んでいますがTOLACできる施設はありますか」という書き込みが多かったことから、ママたちがネットなどで自分で探しているという様子が見て取れました。分娩施設によっては、1度帝王切開を経験すると「次の分娩も帝王切開です」と言われた、というママもいましたが、次は経腟分娩を希望したいと考えて、探しているママもいるようです。

ママたちがTOLACを希望する理由とは?

――帝王切開を経験したママたちが、TOLACを希望する理由について教えてください。

川﨑 1つは帝王切開の術後の痛みが想像以上につらかった、傷の治りが悪かったなどの身体的な苦痛です。
2つ目は緊急帝王切開となって自分が思い描いていた出産と違う形になってしまったことや、帝王切開に対する周囲の偏見に傷ついたことなどの精神的苦痛があります。それらがトラウマのようになってしまって、つらかった経験を二度としたくないと思っている状況が見受けられます。

また、帝王切開の術後は傷の痛みでなかなか思うように動けないのですが、経腟分娩は産後の回復が早そうであるとか、経腟分娩なら産後すぐに育児を開始できるといった理由もありました。
そのほか、帝王切開では立ち会い出産ができなかったために出産を家族で共有したい、帝王切開は経腟分娩よりも入院日数が長くなるために家族の負担を軽減したいという理由もありました。

――理由の1つになっている、帝王切開に対する偏見とはどのようなことでしょうか。

川﨑 「帝王切開はラクだ」という誤ったイメージを持つ人がいて、実母や義母や友人などの近しい人に「帝王切開だからラクだったでしょ」「陣痛の痛みを知らないんだね」などの心無い言葉を言われて傷ついている状況があります。

また、日本では陣痛をともなう経腟分娩をする人が多いので、心のつらさをだれにも話せない、話しても理解されないということや、経腟分娩のママたちが陣痛の話をしていると疎外感を抱く苦しさも感じるようです。

――出産は方法にかかわらず命にかかわる大変なことですが、帝王切開の経験をつらいと感じてしまうママも少なくないのですね。

川﨑 私も3人の子どもを帝王切開で出産しています。私は助産師だったので、自然分娩を経験したら妊婦さんたちにもっといいケアをしてあげられるんじゃないか、という気持ちがありました。ところが1人目の出産の時、予定日を過ぎてからインフルエンザにかかってしまったんです。当時の病院の状況などからもやむをえず帝王切開となったのですが、もっと自分が納得した形でお産をしたかった、という思いが強くあります。

2人目はTOLACを希望しましたが、結局は施設が遠かったり、上の子を見てもらえる家族がいなかったりで、あきらめた経験があります。だから、TOLACを希望するママたちの気持ちが痛いほどよくわかります。

納得のいくお産にするために「バースプラン」と「バースレビュー」を

――帝王切開によって身体的・精神的苦痛がトラウマになってしまわないように、医療者や周囲がサポートできることはどんなことがあると考えていますか?

川﨑 帝王切開はどの妊婦さんにも起こりうることです。初めて出産する妊娠中から帝王切開に関する情報をしっかり提供しておくことと、「バースプラン」を考える際にも経腟分娩・帝王切開の両方の場合を考えておくのもいいと思います。最終的には赤ちゃんの命の安全がいちばんなので、それをきちんと確保するためには、帝王切開もお産の1つの形であると知っておくことが大切です。

もし緊急に帝王切開になった際にも、立ち会った医療者は必ず「バースレビュー」という分娩の振り返りをママと一緒に行って、ママが出産を前向きにとらえているのか、納得できなくて心理的な支援が必要なのかを見分けて、支援につなげる必要があると思います。

帝王切開を経験したママたちから、パートナーから「おなかの傷は勲章だね」と言われて心がラクになったり、医療者から「帝王切開はママが赤ちゃんの負担をすべて背負ってくれるお産だから自信を持って」と言われたことに助けられた、というようなことも聞きます。
このようなあたたかい言葉で、出産を前向きにとらえることができるといいと思います。家族も含めて、ママの精神面の支援が求められていると考えています。

――予定帝王切開のママの場合は、バースプランはどのようなものになるのでしょうか。

川崎 帝王切開の場合は手術室でできることは限られてしまいますが、手術中に自分の好きな音楽をかけてほしいとか、手術室から戻ってきたら赤ちゃんと写真を撮りたいとか、事前に希望を伝えておくといいでしょう。分娩後にどんな育児をしたいかも含めて、医療者とママとでコミュニケーションをとり、ママたちが自分の気持ちを吐き出せる場を作ることが大切だと考えています。
その上で、次の出産時にはママたちがTOLACか帝王切開かを納得して選択できることが大切だと考えています。

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

お話・監修/川﨑千春先生

川崎先生は「日本の子どもの予防接種や健康診査の問診票にある出産方法を記入する欄に『正常分娩』と『異常分娩』の2択しかないことも疑問に感じる」と言います。
「『異常分娩』というと、帝王切開したことが悪かったかのように思えてしまいます。医療的な理由があるかもしれませんが、分娩方法を聞くのなら、『経腟分娩』『帝王切開』『無痛分娩』『吸引分娩』などと選べるようにすべきと考えています」(川崎先生)

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※1 ベネッセコーポレーションの女性向け口コミサイト。2022年1月末にサービス終了

※2 厚生労働省 令和2(2020)年 医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況

※3 産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020

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