【医師監修】妊娠が判明したら~ママとパパが妊娠初期に気をつけたいのはこんなこと
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妊娠がわかると、口にするもの、肌に触れるもの、外からの刺激など、目に見えるものから見えないものまで、「これは赤ちゃんに影響しないかな?」と気になってしまいますよね。だからといって、生活をガラリと変える必要はありませんし、普通に生活していて大丈夫です。ただし、注意すべきこともあります。妊娠初期のママがどんなことに気をつけたらいいのか、東峯婦人クリニック院長の松峯寿美先生に聞きました。
赤ちゃんの器官形成期、とくに注意したいのは。たばこや薬、感染症など
「おなかの赤ちゃんに影響するもの」の代表格がたばこのニコチン。薬も種類によっては、妊娠4~9週末までの赤ちゃんの器官形成に影響を与える可能性があるため、妊娠初期にはとくに注意が必要です。また、風疹(ふうしん)などの感染症にも注意しましょう。
薬の使用は慎重に
薬の服用に注意が必要なのは、おなかの赤ちゃんの中枢神経(脳、脊髄)や内臓、目、耳などの器官が作られる妊娠4~7週末までの期間。器官形成期と呼ばれるこの時期に、赤ちゃんが影響を受けやすい成分を含んだ薬を服用すると、“催奇形性”といって、細胞分裂が正常に行われずに形態異常が起こる危険性があります。
一方、妊娠判明後に産婦人科で薬が処方されるケースもあります。自己判断で飲むのをやめてしまうと、かえってママと赤ちゃんの状態に悪影響を及ぼすことも。医師の説明をよく聞き、納得したうえで服用しましょう。
妊娠判明前の妊娠4週未満に服用した薬に関しては心配いりません。
●薬のことで相談したいときは「妊娠と薬情報センター」(国立成育医療センター内)へ
たばこは百害あって一利なし
たばこに含まれるにコチンには、血管を収縮させる作用があります。そのため、たばこを吸うと、おなかの赤ちゃんとママを結ぶ胎盤の血流が減少し、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が届かなくなってしまいます。また、たばこの煙に含まれる一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結びついてしまうと、本来結ばれるはずの酸素と結合できなくなり、母子ともに低酸素状態になる恐れが。赤ちゃんの発育を妨げてしまったり、流・早産、低体重出生児、胎盤のトラブルを招くリスクも。
妊娠前の喫煙が赤ちゃんに影響することはありませんが、妊娠が判明したら禁煙しましょう。
アルコールも赤ちゃんに影響するリスクが!
妊娠中に過度のアルコールを飲み続けると、「胎児性アルコール症候群」といつて、赤ちゃんに発育障害などの影響が表れる心配が。「自分はそんなに飲まないから」と考えてしまいがちですが、油断は禁物。「この程度の飲酒量であれば胎児に影響しない」という安全な量が確立されていないのが実状なのです。
飲酒は習慣化しやすく、ストレスから酒量が増えていく可能性も考えられます。
妊娠前の飲酒が赤ちゃんに影響することはありませんが、妊娠判明後は禁酒しましょう。
妊娠初期、とくに気をつけたい感染症は?
感染症にかかるとママ自身がつらいだけでなく、赤ちゃんに影響する心配もあります。とくに気をつけたいのは風疹。抗体の低い人が妊娠20週までの間に感染すると、白内障や難聴、心臓奇形など、先天性風疹症候群という障がいを持った赤ちゃんが生まれてくる可能性があるからです。妊娠初期の血液検査でママの風疹抗体価が16倍以下の場合は、免疫が低いと考えられるため、注意が必要です。
また、麻疹(はしか)にも注意しましよう。妊婦さんが感染して、赤ちゃんに先天奇形を引き起こす可能性は低いですが、妊婦中は重症化しやすく、流・早産につながる可能性が高くなります。
一方、インフルエンザを予防するには、妊娠週数を問わず、予防接種を受けることが可能です。インフルエンザウイルスが赤ちゃんに影響することはありませんが、妊娠中に感染すると悪化しやすく、流・早産を引き起こす要因となるとも。万一、感染してしまった場合は、抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザで早期治療を受けることが重要です。
風疹・麻疹をはじめとした感染症の流行シーズンには、手洗い・うがいを徹底するとともに、人込みや子どもが多い場所への外出を避ける必要があります。
トラブルを予防するために、日常生活で気をつけたいこと
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妊娠確定後は、生活を改善しようと思うママが多いでしょう。すこやかな妊娠生活を送るためにも、日ごろの食生活や生活習慣を振り返ってみましょう。体調を整えて、トラブルを予防するには、慎重であるべきことがあります。
とりすぎに注意が必要な食品をチェック!
妊娠中は栄養バランスのよい食事を1日3食きちんと食べましょう。炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをまんべんなくとるには、いろいろな食材を少量ずつ食べるのがおすすめ。貧血予防のための鉄分や、赤ちゃんの神経管閉鎖障害などのトラブルを予防する葉酸やミネラル分など、上手にとりたい栄養素もありますが、良質な栄養を含む食品であっても、摂取量や食べる回数に注意が必要なものもあります。食品に含まれる成分や注意点などを知っておくと安心です。
積極的にとりたい食品
・大豆製品、小松菜、あさりなど
鉄分が豊富に含まれ。妊婦さんの貧血を予防します。
・ほうれん草、ブロッコリー、モロヘイヤ、いちごなど
細胞の増殖に欠かせないビタミンB群の一種、葉酸を摂取するのに効果的。
・ヨーグルト、ごぼう、サツマイモ、りんご、わかめなど
ヨーグルトに含まれる乳酸菌や、根菜やくだもの、海藻に含まれる食物繊維には、腸内環境を整える働きがあります。
要注意な食品
・レバー、うなぎ
妊娠初期に、動物性ビタミンAを含むレバーやうなぎを食べすぎると、赤ちゃんに影響する心配が。たまに食べるぶんには問題ありませんが、連日続けて食べるのは避けましょう。
・生肉・加熱不十分な肉
熱を通していない生肉の刺し身や、加熱不十分のレアの肉は食中毒を起こす心配があるため、できるだけ避けましょう。ふん便を介してトキソプラズマに感染する可能性もあるため、十分な加熱を。
・まぐろ、金目鯛など
大型回遊魚に含まれるメチル水銀は赤ちゃんの中枢神経に影響する心配が。ただ、良質なたんぱく質やDHAなどの栄養素が豊富なので、週1~2回食べる程度なら大丈夫です。
・ひじき
有害な無機ヒ素が含まれることが心配されますが、厚生労働省では「1日4.7g以上を継続的に食べなければ問題はない」としています。食物繊維が豊富なので、たまに食べる程度ならOK。
・ナチュラルチーズ
加熱処理されていないカマンベールやブルーチーズには、リステリア菌が存在する恐れが。感染するとインフ
ルエンザに似た症状が現れ、早産や赤ちゃんのトラブルにつながる心配があるため、避けたほうがいいでしょう。
・カフェイン
カフェインは胎盤を通して赤ちゃんに届きます。カフェインには鉄を体外に排出する働きがあるので、貧血気味の人は飲みすぎないように注意。1日1杯前後にしましょう。
トラブルを避けるために、妊娠初期は慎重に
・立ちくらみや転倒に注意
つわりの影響で立ちくらみ、ふらつきが起こりやすくなる人もいます。階段の上り下りは慎重に。あわてて転倒したりしないように、時間に余裕を持って行動しましょう。
・車の運転はできれば避けて
眠けやだるさなどで反射神経が鈍くなる時期なので、体調がすぐれないときの運転は避けましょう。
・仕事をしている人は無理しないこと
フルタイムで働いている人は、無理しないように注意。体調不良のときなどに周囲のサポートを得られるよう、赤ちゃんの心拍が見えて妊娠が確定する妊娠10週前後には職場の上司には報告を。
・運動は妊娠中期以降から
マタニティ向けのヨガやエアロビクス、スイミングなどは妊娠中期から始めるほうがいいでしょう。スキーやスノーボード、スギューバダイビングのスポーツは、危険が多いので控えてください。
・旅行
旅行に行くなら、体調が安定する妊娠5~7カ月が適しています。行き先が海外の場合は、きちんとした医療を受けれらる地域が安心。そうでなければ、突然の体調不良など、何かあったときに日本の医療施設のような対応をしてもらえないことが多いからです。旅行の事前に必ず主治医に相談してください。
妊婦健診をきちんと受けましょう
妊婦健診はママと赤ちゃんの健康を守るのが目的。妊娠初期は、初診で妊娠が判明してから妊娠3カ月までは2週に1回、4~6カ月までは4週に1回のペースで行われます。ママの体調がよく、何も変わった様子がなかったとしても、トラブルを予防するためにも、毎回の健診を欠かさずに受けましょう。もしも切迫流産(せっぱくりゅうざん)や妊娠高血圧症候群などのトラブルの兆候がみられた場合でも、早期発見・早期治療が可能です。
パパたちに気にとめてほしいこと
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妊娠によって体が変化し始めたことに、ママはちょっぴり不安を感じている時期です。パパも仕事があって大変だと思いますが、できる範囲で家事をサポートしたり、ママにやさしい言葉をかけてあげてください。夫が話を聞いてくれるだけで、妻は安心できるものなのです。
パパのやさしさが、つわりを軽減させることもある
妊娠初期のつわりの症状はさまざま。重いつわりで寝たきりになる人がいる一方、1日中ムカムカした状態が続いたり、眠くてたまらずにゴロゴロしたり、食べていないと気持ち悪くなる食べづわりの人もいます。そして、思うように家事ができなくなる時期でもあります。「家事もしないで、また寝ているの?」「また食べているの?」などと、否定的な言葉をかけるのはご法度。つわりには精神的なものが影響し、夫の態度一つで、つわりが軽くなったり、重くなったりすることもあるのです。妻の気持ちを聞いてあげるなど、メンタルを支えてあげてください。
パパも禁煙を心がけて
ママ本人がたばこを吸わなくても、パパや同居する家族が喫煙していると、おなかの赤ちゃんに害が及ぶということを知っておきましょう。たばこの煙の副流煙には、たばこを吸う人が吐き出す主流煙の数十倍から数百倍もの濃度の有害物質が含まれています。その副流煙をママが吸い込むと、有害物質のニコチンが胎盤の機能を低下させ、赤ちゃんが低酸素状態に陥って低体重出生児になったり、流産や早産を招く恐れが。胎盤が先にはがれてしまう常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)というトラブルを引き起こすリスクも高まるため、ぜひ禁煙を!
妊娠中のセックスは気づかいが大事
妊娠初期のセックスは控えるほうがいいですが、妊娠5カ月以降、妊娠経過が順調であれば、ママの負担にならない範囲でソフトなセックスをしても大丈夫です。ただし、妊娠中は免疫力が低下して、体液中の雑菌に感染し、流産、早産を引き起こす心配も。コンドームを着用し、深い挿入は避け、時間も短めにすることが重要です。
お互いに心配で、セックスが自粛モードになっているときは、体にやさしく触れ合ったり、抱きしめ合うなどして、お互いの気持ちを確かめ合いましょう。
妊娠が判明すると、「これは赤ちゃんに影響したりしないかな?」と、不安になってしまいがちですね。でも、あれこれ心配になるのは「赤ちゃんを守ってあげたい」と、母になる心の準備が始まっている表れ。妊娠初期に注意すべきことを気にとめつつ、「無理しない」をモットーに、妊娠生活を楽しんでくださいね。
(文/大石久恵、たまごクラブ編集部)
初回公開日 2019/1/24
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