たかが虫刺され、でも虫によっては命にかかわることも!【小児科医が解説】
保育園や公園での外遊び中に、たくさん虫に刺されてしまったという男の子。虫に刺されたときの対処法や、虫よけ薬の選び方など、お母さんの疑問に陽ちゃん先生はやさしく答えます。
赤ちゃん、ママやパパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、印象深いできごとをつづります。先生は育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#31
虫に刺されてしまったら、まずはきれいに洗うことが大切!
その日来院したのは、保育園に通っている男の子。腕や太もも、おでこにも虫に刺された跡があります。
「保育園に行っても、公園に行っても、うちの子はいっぱい刺されて帰ってくるんです」
――今の季節、虫刺されで受診するお子さんは多いですね。
「家族みんなが刺されても、この子だけひどく腫れ上がるんですよね。同じ虫だと思うんですが、どうしてなんでしょうか」
――虫刺されは、小さいお子さんほどひどくなりますよ。
「やっぱりそうなんですか?」
――何度も刺されるうちに抵抗力がついて、あまりひどくならなくなりますね。逆に、反応力がついてしまって、ハチやムカデでアレルギーを起こすこともありますが。
そう話しているそばで、その子はぼりぼりとあちこちをかいています。
「薬局で虫刺されの薬を買ったのですが、効かないみたいで」
――そうですか。結構腫(は)れてますものね。
「虫に刺された場合、どうしたらいいでしょうか」
――まずは、きれいに洗いましょう。石けんを使ったほうがいいですね。
「え?洗うんですか?」
――汗で症状が強くなることもありますし、虫によっては針が残っていることもあるので、まずは洗いましょう。そのあと、少し冷やします。冷やしたほうが、かゆみが治まり、かくのも減るかもしれません。
「薬はどんなものを塗ればいいんですか?」
――抗ヒスタミン薬や、ステロイド入りの軟こうを塗ります。
「ステロイドって、なんだか使うのが心配です…」
――肌の狭い面積に短期間ですから、心配いらないと思いますよ。単なる虫刺されでも、頻繁にかいているとかき壊してしまい、そこに菌が入ってとびひの原因になることがあります。かゆみを抑えることは大切です。
たかが虫刺され、でも虫によっては命にかかわることも!
「でも、虫さされで死ぬことはありませんものね」
――いえいえ、あまりにかゆみがひどいときには飲み薬を使うこともありますし、ハチなどは、息苦しくなったり、めまいが起きたり、いわゆるアナフィラキシーを起こしたりすることもありますから軽く考えられません。
蚊は多くの場所で見られますが、まれにアレルギーを持っている人がいます。また、デング熱や日本脳炎を運ぶこともわかっており、刺されないに越したことはありません。
ブヨは、山林にいることが多く、都会の大人も、慣れていない人が多く、刺された跡がひどくなりやすいものです。
ハチは8月をメインに春から秋まで活動します。刺されると痛いだけでなく、アナフィラキシーの原因にもなるので要注意です。
ノミはペット、ダニは家の布団などがすみかになります。ペットのシャンプーなどで駆除すること。布団を干したり、掃除機をかけたりすることを心がけます。
「危険な虫も意外と身近にいるんですね…。でも、外でも遊ばせてあげたいし…。外遊びするときは、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?」
――熱中症には気をつけないといけませんが、自然の中に入るときには、生地は薄くてもいいので、長袖長ズボンがいいでしょうね。色は白っぽいものがいいです。また、サンダルではなく靴と靴下で、足もともしっかり守りましょう。
「最近は、虫よけグッズもいろいろなものが売られていますよね」
――薬をしみこませたリストバンドやシールですか?1個使っただけで全身を守ってくれるのかどうか、効果はよくわかりませんね。
「虫よけの塗り薬はどうですか?」
――虫よけの薬には、ディートという成分と、イカリジンという成分のものがあります。ディートは6カ月未満には使えませんし、回数にも決まりがあります。虫よけを買うときは、イカリジンが入ったものを使うといいでしょう。
「わかりました。いろいろ調べて勉強してみます」
そう言って診察室を出ようとされたお母さんに、最後に声をかけました。
――お子さんが虫刺されの跡をかいてしまっても大丈夫なように、つめを切っておいてくださいね。
構成/ひよこクラブ編集部