え?まさか毛虫で…。子どもの肌に赤いぶつぶつ 洗濯物も注意・小児科医

太ももの裏に、何か発疹(ほっしん)があると来院した、3才の男の子とそのお母さん。発疹が出る前日、公園に立ち寄ったと聞いた陽ちゃん先生は“毛虫”が原因だと診断して…?
赤ちゃんやママ・パパにいつもやさしく寄り添う陽ちゃん先生こと、小児科医の吉永陽一郎先生が、日々の診察室で起きた、印象深いできごとをつづります。先生は育児雑誌「ひよこクラブ」でも長年監修として活躍中です。「小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより」#17
関連:つめがはがれてきた…原因は手足口病!? 発疹が治ったあとにも症状が[小児科医・陽ちゃん先生の診察室だより]
初夏の公園に潜む悪魔とは?
気持ちのいい初夏のある日、3歳の男の子とそのお母さんが来院しました
「昨日の夜、おふろに入るとき、左の太ももに発疹が出ていることに気づいたんです。本人はかゆがっていて」
―—そうですか。診てみましょう。熱はないんですね。
「はい。熱もせきもありません。」
患部である、左太ももの後ろ側をよく見ると、赤い小さなぶつぶつがびっしりと出ています。見るからにかゆそうです。
右の太ももの後ろにも発疹はありますが、明らかに数は少ない様子。左のふとももの前面にはほぼありませんし、太もものつけ根から上には、まったく症状は出ていませんでした。
―—昨日、どこか外へ出かけませんでしたか?
「あの、実はコロナ騒ぎ中によくないかなとも思ったのですが、あまりに子どもがせがむので、昨日の昼間にちょっとだけ近所の公園に行きました」
―—それですね。
「えっ? 外で変な病気でももらったんでしょうか」
―—毛虫が原因のようですね。
「とくに、毛虫を触ったりはしていませんが…?」
お母さんは、不思議そうです。
毛虫とは、ガの幼虫です。5月から6月、それから8月から9月に卵からふ化し、自宅や保育園、公園の木の葉っぱにたくさんくっついています。
毛虫は驚くと、多くの毛をまき散らすのですが、それが風に乗って肌につくと、触れた範囲にびっしりと皮疹(ひしん・皮膚の表面の生じた発疹の総称)が出ます。これが“毛虫皮膚炎(けむしひふえん)”です。
毛がたくさん落ちているところだと、靴下や洋服に守られていない素肌に毛がふれることで、皮疹が出ます。毛が落ちている芝生やベンチに座ると、太ももの後ろ側に症状が出ることになります。
今回の男の子は、症状がある部分とない部分がはっきりわかれているので、原因は体の中ではなく、外からの刺激だと考えられます。毛が触れたところと触れていないところで、皮疹が出る場所にかたよりが出たのでしょう。
また、皮疹の大きさや赤さがほぼ似ているのも“毛虫皮膚炎”の特徴の一つに当てはまっていました。
「毛虫を見てもいないのに、毛虫にやられることがあるんですね」
――そうですね。初夏、それから夏の終わりと、シーズンが2回来ますから、注意してくださいね。
「どちらも、子どもが外で遊ぶのにちょうどいい時期なのに…」
――樹木のそばで仕事をすることが多い植木職人さんは、一年中気をつけているそうですよ。葉っぱの裏で越冬している毛虫もいるそうで。
「なんだか、公園に行くのが怖くなりました。保育園の外遊びも大丈夫かなぁ」
洗濯物にも、要注意!
――外遊びもそうですが、おうちの洗濯物にも気をつけてくださいね。
洗濯物を干す場所のそばに木があって、そこにもし毛虫がいると、風に乗って毛が飛び、洗濯物にくっつくことがあるんです。
その服を着ると、同じようにブツブツが出ます。この場合は、服で隠れるところに発疹が出ますね。
「自宅のとなりには、木が生えています。じゃあ、家にいても発疹が出てしまう可能性があるんですね…」
—そうですね。毛虫が好む植物は、ツバキやサザンカだと聞いています。毛虫駆除を行ったあとなどは、周囲にたくさんの毛が落ちている可能性があるので、しばらく近づかないほうがいいですよ。
予防法としては、肌の露出が多いまま茂みの中に入ったり、木登りしたりすることは避けましょう。地面に座るときには敷物を敷く、自然の中では長袖長ズボンを着るなどの対策をするとよいですね。
もしも毛に触れた、刺されたと思ったときは、手で払わずに粘着テープなどをはり付けてはがすことで毛を取り除いてください。
「わかりました。それで、この子の太ももはどうしたらいいでしょうか?」
――塗り薬を出しておきましょう。弱いステロイドの塗り薬です。1日に2回ほど塗れば、3日くらいでよくなるでしょう。お大事にしてくださいね。
外に出るのが怖くなってしまったお母さんとは対照的に、男の子は早く外で遊びたいとうずうずしているようでした。
文・監修/吉永陽一郎先生 構成/ひよこクラブ編集部
※写真はイメージです。
関連:【小児科医リレーエッセイ】育児のコツは小児科を有効に活用して!〜プロのコーチにつけば上達も早い~
吉永陽一郎先生(よしながよういちろう)

国内初の子育て専門診療科である聖マリア病院母子総合医療センターの「育児療養科」科長などを経て、現在は福岡県久留米市の吉永小児科医院・院長。
■おすすめ記事
・部屋の中は危険がいっぱい!子どもの事故を防ぐための考え方とポイント
更新