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口唇口蓋裂とは?発症頻度・原因・治療法・ホームケアまで【医師監修】

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親と話す小児医師
※写真はイメージです
takasuu/gettyimages

口唇口蓋裂は、アジア人に比較的多い先天性疾患です。日本人では約500人に1人という割合で発症します。近年では、治療が確立されてきており、適切な時期に手術を行い、小児科医、耳鼻科医、言語聴覚士、小児歯科医、矯正歯科医、口腔外科医などの多職種によるチームアプローチによる治療を行っていきます。口唇口蓋裂の基礎知識や手術のこと、ホームケアなどについて土佐泰祥先生に聞きました。

口唇裂は上唇の割れ。口蓋裂は口の中の割れ。約半数が両方を併せ持ちます

口唇裂とは、生まれつき上唇が割れている状態。完全型では鼻の孔(穴)の床の部分も割れています。歯ぐきが割れているところに骨移植術が必要になることもあります。
口蓋裂は、生まれつき口の中の上部に裂ができている状態。約半数は口唇裂と口蓋裂が合併して起こります。

口唇口蓋裂には、さまざまな裂型が

口唇口蓋裂には、さまざまな裂型があり、さまざまな分類があります。主な分類は、次のとおりです。

●片側唇裂、片側唇顎口蓋裂

右側か左側かどちらかの上唇に裂(割れ)がある場合には片側唇裂と呼ばれます。上唇のみ割れている不全唇裂と、上唇の割れが鼻の孔(穴)まで達している完全唇裂があります。歯ぐきから口の中の天井まで裂(割れ)がある場合には、唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)と呼ばれています。

上の写真は、右側の上唇と歯ぐきがに裂(割れ)があるので右側不全唇顎裂。

●両側唇裂、両側唇顎口蓋裂

左右両方の上唇に裂(割れ)がある場合には両側唇裂と呼ばれています。こちらも片側と同じように、上唇のみ割れている不全唇裂と、上唇の割れが鼻の孔(穴)まで達している完全唇裂があります。
両側で上唇のみ割れている場合は両側不全唇裂と呼ばれ、上唇の割れが鼻の孔(穴)まで達している場合は両側完全唇裂で、左右で不全と完全が混在する場合もあります。
歯ぐきから口の中の上部まで裂(割れ)がある場合には、両側唇顎口蓋裂と呼ばれています。

●口蓋裂(口の中の上部の裂のみ存在)

口の中の上部で、硬口蓋(口の中の上部手前)と軟口蓋(口の中の上部奥)の両方に裂(割れ)がある場合には硬軟口蓋裂と呼ばれています。
口の中の上部で、軟口蓋に裂(割れ)がある場合には軟口蓋裂と呼ばれています。
口の中の上部で、口蓋垂(のどちんこ)に裂(割れ)があり、粘膜はくっついていて一見口蓋裂(割れ)がわかりにくいですが、粘膜の中の筋肉が割れている場合もあります。これは粘膜下口蓋裂と呼ばれ、一見軽度なので、見逃されて発見が遅れることもあります。

口唇口蓋裂は、妊娠初期の形成異常。遺伝的な要因と環境的な要因の両方が複雑に影響する多因子遺伝が約65~70%。

おなかの赤ちゃんは、妊娠4~7週ころに口唇が。上あごなどの口蓋は、その後、妊娠12週ころまでに完成しますが、口唇口蓋裂はその時期に形成異常が起きて発症します。

口唇口蓋裂発症の原因の大半は、遺伝的な要因と環境的な要因の両方が、複雑に影響しあいながら一定のレベルを超えると発現(発症)する多因子遺伝と考えられています。環境的な要因には、妊娠初期の薬(抗けいれん薬など)の服用や放射被爆、喫煙などがあげられています。実際には、さまざまな要因が複雑に影響しあって発症にいたるようです。
現代の医療でも、はっきりした決定的な原因はわからないことが多い病気です。

口唇口蓋裂には、さまざまな問題が。誕生直後に直面するのが授乳の問題

口唇口蓋裂は、見た目だけでなく授乳やことばの発達、歯並びなど、さまざまな問題を抱えます。口唇口蓋裂治療にたずさわる、医師、歯科医師、言語聴覚士、看護師などの医療職は、まず赤ちゃんの誕生を祝福し、家族への心理的ケアを行いながら、治療の流れを説明し、育児を支援していきます。その中で哺乳は、生まれてすぐに直面する問題の1つです。

ママの母乳を吸うとき、赤ちゃんは口を大きく開けて乳房を含み、唇を密着させます。そして舌を波のように動かし、圧をかけることで母乳が出始めます。
しかし唇に割れ目があると、乳房に唇が密着しづらくなります。さらに口蓋に裂があると、空気がもれて圧をかけにくくなります。
そのため母乳を飲ませるのが難しいときは、ピジョンなどから発売されている口唇口蓋裂用の特別な哺乳びん用の乳首を使うことも。赤ちゃんと乳首との相性もありますが、特別な乳首を使うと、スムーズにミルクが飲めるようになります。空気も一緒に飲み込みやすいので、授乳中に何度か上手にげっぷをさせます。ホッツ床(しょう)(Hotz床)という哺乳を助ける補綴物(ほてつぶつ)を作成することもあります。

口唇裂は3~5カ月、口蓋裂はことばを発し始める1歳~1歳半ころを目安に手術するのが一般的

口唇裂の手術は、割れた唇をふさぐ手術を通常3~5カ月ごろ、体重6kg前後以上を目安に行います。割れていると唇が引きつれた状態になっているので、手術で引きつれを改善し、割れ目をきれいにふさぎ唇の形を整えます。術後は5~7日で抜糸します。

上の写真は、手術前。

上の写真は、術後。4カ月で口唇鼻形成術を施行し、順調に成長。

口蓋裂の手術は、割れた口の天井を閉じる手術を1歳~1歳半ころ、体重10kgくらいを目安に行います。口の中に割れ目があると、軟口蓋にある筋肉も中央で左右に割れていて、飲食物が鼻からもれたり、おしゃべりをするときに、口に空気をためることができず、上手にことばを発
することが難しい状況のままとなります。そこで、手術で筋肉を本来ある生理的な方向に正してつないで、口の中の割れ目をふさぎます。

一人一人の患者さんの口の裂(割れ)の状態により、術者がさまざまな工夫を加えていることが多いです。口蓋裂は、通常解ける糸を使うので抜糸は不要です。吸収糸の吸収開始時期は術後約6〜7カ月とされていますが、赤ちゃんが舌で結んだ糸をこすったりすることにより自然脱落する期間は変化します。

手術は裂型にもよりますが、成長とともに必要時に1〜数回行うことになります。
なかには瘻孔(ろうこう)といって口の中に穴が開いている場合も。子どもの小指の先端以上の大きさで穴が開いているときは、ことばの発達などに影響が出やすいので、再手術が必要になる場合もあります。手術は子どもの顎発育やことばの状況を評価しながら、手術時期を検討します。成長とともに鼻や唇の形、傷あとが気になってきて修正手術を行うこともあります。

合併症により、口唇口蓋裂以外の治療・手術が必要になる場合も

合併症は手足や耳の形成異常、ヘルニアや心臓の形成異常などが約9%に認められます。ところが口蓋裂単独では約13%とその頻度が少し上がります。たとえば先天性心疾患では、一般集団の発生頻度0.6〜0.8%に対して、口唇口蓋裂群では1.2%と、こちらも少し高くなっています。そのため、口唇口蓋裂以外の治療・手術が必要になる場合もあり、小児科(遺伝、新生児、心臓、神経など)や関連外科との連携が大切です。

言語面に関しては、言語聴覚士が早期から介入

言語聴覚士は0歳の早期から介入します。0歳時は養育者への育児(心理的)支援を行いながら、聴覚管理や言語発達の促進などを行います。口蓋形成術後は引き続き、聴覚管理、言語発達や構音発達、鼻咽腔閉鎖機能(びいんくうへいさきのう)をよい方向に導きながら発達を促し、言語障害の予防を行っていきます。

口蓋裂の子どもがすべて言語障害になることはありません。しかしながら、その経過の中で、ことばの問題がある場合には、関連各科と連携を取り、一人一人の子の状態に応じて言語療法を行っていきます。

1)口蓋瘻孔が見られた場合
ことばに影響を与える口蓋瘻孔がある場合は、形成外科や小児歯科と連携し、3歳ごろから瘻孔閉鎖床の検討を行います。

2)歯列の狭窄がことばに影響を与えていると判断された場合
4歳もしくは5歳ごろ、歯列が狭く、ことばに影響を与えていると判断された場合は、矯正歯科医と相談して、早期の矯正治療を検討します。

3)う蝕(むし歯)がことばに影響を与えていると判断された場合
口蓋裂の子どもは早期から歯科や小児歯科でむし歯予防の処置や歯磨き指導の口腔管理が行われています。しかしながら、う蝕(むし歯)があり、ことばに影響が出てくる場合もあります。その場合は、歯科・小児歯科での治療をすすめます。

4)鼻咽腔閉鎖機能不全がある場合
声が過度に鼻にかかるなどの場合は、鼻咽腔閉鎖機能の問題があります。その治療は、まずは言語療法で治療を行います。しかし言語療法のみでは限界がある場合があります。そのような場合、言語の評価のみならず、関連職種と連携して、鼻咽腔閉鎖機能の評価を行います。その結果に基づいて、言語療法のみで改善が難しい場合は、スピーチエイドという発音補助装置を作成する必要があるか?または、口蓋裂二次手術の必要があるか?術者と協議し、治療方針を決め、言語療法を継続していきます。

5)構音障害がある場合
構音障害には、鼻咽腔閉鎖機能に問題があり構音障害がある子どもと、鼻咽腔閉鎖機能は問題ありませんが構音に問題がある場合もあります。鼻咽腔閉鎖機能に問題がある場合は、4)のように、鼻咽腔閉鎖機能の治療を行うときがあります。構音訓練に関しては、子どもの構音障害の特徴に応じた構音訓練を行なっていきます。

口唇口蓋裂はむし歯になりやすい傾向が。歯やあごの矯正を行う場合も

口唇口蓋裂の子は、上あごの歯列が狭い、顎裂部分の歯並びが悪いなどのために、むし歯になるリスクも高まります。口蓋形成術後、退院したら、歯磨きは普通にできるのでしっかり歯磨きをしましょう。ママ・パパは、仕上げ磨きを毎日してあげてください。

小学校に入学したあとは、1週間の7日から学年を引いた回数、たとえば小学1年生では、7-1=6で週6回、6年生なら、週に1回のチェックと仕上げ磨きをしましょう。中学生になってもとくに、12歳臼歯、奥歯が生えるまでは歯科医院と協力してチェックが必要となります。

また、なかには歯やあごの矯正が必要になる子もいます。矯正のスケジュールの目安は次のとおりです。

1)術前顎矯正(0~5カ月ごろ)
3~5カ月で行われる口唇裂の手術前に、上あごの歯槽骨の位置を整える矯正治療。ホッツ床(しょう)(Hotz床)というやわらかい樹脂製のプレートなどを用います。

2)顎矯正治療(幼児期~学童期)
あごの形や大きさ、かみ合わせが気になる場合は矯正が必要です。上あごの形を治す拡大装置、フックがついたマウスピースなどの口腔内装置と、顔に当てたフェースマスクに歯科用ゴムを引っかけて額とあごを固定し、上あごを前に引き出す矯正器具などが用いられます。
あごの矯正は、10歳までが有効とされています。

3)仕上げの矯正治療
中学生以降になりあごの大きさの成長が落ち着き、永久歯が生えそろったら仕上げの矯正治療を行います。あごの大きさに大きなずれがある場合は、外科矯正という手術を併用した矯正治療を行うこともあります。

口蓋裂は鼻と耳をつなぐ管の機能が弱く、中耳炎になりやすい傾向も

口蓋裂があると、鼻と耳をつなぐ管(耳管)の働きを調整する筋肉の機能が弱いため、耳管が炎症を起こし中耳炎になりやすいです。急性中耳炎は、鼓膜(こまく)の内側の中耳腔に炎症が起きて痛みや耳だれなどが見られます。体の具合が悪くないのに、グズグズ機嫌が悪い様子が続く、耳をいじったり、耳を触ると泣く、発熱があるなどの症状を示すときは急性中耳炎を疑って耳鼻科へ。

また滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、中耳腔に滲出液が溜まる病気です。痛みはありませんが、適切に治療しないと難聴や耳閉感の原因になります。難聴があると、ことばの発達や構音に影響を与えますので、早期の発見が重要です。小さな音に反応しない、呼んでも振り向かない、聞き返しが多いなどの症状が見られたら、耳鼻科を受診しましょう。

問題がなければ、手術の翌日から経口摂取も

施設により多少異なることもありますが、術後、問題がなければ手術の翌日から、経口摂取が可能になります。幼児の場合も10倍がゆから始め、7倍がゆ、5倍がゆとだんだんかたくして傷の状態を見ながら3~7日ぐらいかけて軟飯ぐらいのかたさにしていきます。水分補給も同時に進めます。

術後1カ月は、傷口をぶつけないように注意

術後、最も注意が必要なのは傷口をぶつけないようにすることです。術後1~2週間で傷は癒合しますが、大きな力が加わると傷が開いてしまうことも。そのため術後1カ月は、十分注意を。
退院後は、家の中でも屋外でも、転んで傷口をぶつけたりしないようにしましょう。
家庭内では、乳幼児の事故防止と同様に、以下のような点に注意してください。

1.すべって転ばないように、床にカーペットなどは敷かない
2.ぶつかってけがをしないように、テーブルや棚などの角にはクッション材を取り付ける
3.ソファやベッドから転落しないようにする
4.段差は、つまずかないようにガードする
5.スプーンやフォーク、歯ブラシなどを口にしたまま歩かない

保育園や幼稚園の登園は、主治医と相談してください。

おせんべいなど食べてはダメなものは、園の先生とも情報共有を

退院後、入浴や歯磨き、洗顔は通常通り行えますが、術後1カ月は傷口が開かないようにやさしく行います。退院後は、医師の指示がなければ離乳食も幼児食も通常通りに戻してOK。ただし傷口に入らないように、おせんべいなどのかたいものやごま、いちご、キウイなどの粒があるもの、すいかなどの小さな種があるものは避けましょう。保育園や幼稚園に通っている子は、先生とそうした情報共有も必要です。

なかには、鼻の形を整えるためにレティナという樹脂製の矯正装具をつける子もいます。レティナは1日1回水洗いして清潔を保ち、テープを貼り替える必要があります。また、あごや歯を矯正する装具が必要な子もいますが、口唇口蓋裂だからといって家庭で特別な医療ケアが必要な訳ではありません。

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

監修/土佐泰祥(とさ やすよし)先生

口唇口蓋裂は、ひと昔前の情報に、少しずつ新知見が取り入れられてきています。口唇口蓋裂発症の要因については研究が進む中で、遺伝単独は約25%、遺伝的な要因と環境的な要因の両方が複雑に影響する多因子遺伝が約65~70%で、原因不明なことも多いです。医療技術や医療器具、医療材料の進歩により術後の傷あとはだいぶきれいになります。
わが子が口唇口蓋裂とわかるとママやパパはかなり動揺しますが、医師が症状の特徴や治療方法、術後のことなどをていねいに何回かにわたり説明していくと納得して、治療に前向きになるママやパパがほとんどだそうです。

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