新型コロナ「もし子どもが感染したら?」家庭内感染を防ぐ自宅療養のポイント【小児科医監修】
新型コロナウイルス感染症の第5波といわれる中、子どもたちにも感染が広がっています。万一、子どもが感染したらお世話などはどうしたらいいのでしょうか。帝京大学医学部附属溝口病院 小児科医・黒澤照喜先生に、家庭内感染を防ぐ方法や自宅療養のポイントを聞きました。
家庭内感染を食い止めるには、感染のメインルートを抑え込むことが第一
新型コロナウイルスによる家庭内感染が広がっています。家族の1人でも感染すると、家庭内感染を食い止めるのは難しいように思いますが、黒澤先生は感染のメインルートを抑えれば、家庭内感染を防げる可能性が高いと言います。
「新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫(ひまつ)感染がメインです。感染力が強いデルタ株も同様です。感染のメインルートは、せき・くしゃみ(鼻水)などの飛沫です。感染者の飛沫が感染していない人の目・鼻・口に入る、または、ウイルスのついた手で目・鼻・口に触れることで感染します。
したがって家庭内感染を防ぐには、このメインルートを抑え込むことが第一です。そのほかの感染経路もありますが、このメインルートと比べると明らかに感染リスクは少ないです。また子どもから大人への感染は、インフルエンザのほうがうつりやすいです」(黒澤先生)
注意していても万一、家族全員が感染し、自宅療養となった場合は、子どものお世話などはどうしたらいいのでしょうか。
「どんなに注意していても、感染リスクをゼロにすることはできません。新型コロナの対策は、防災の備えと似ているのですが、家族が重症化した場合、子どものことはどうするか先を見越して相談しておくことが大切です。
また新型コロナのワクチンは、感染率や重症化率を下げる効果があります。ママやパパは、可能であれば接種してください」(黒澤先生)
コロナ対策は、防災対策と似ている! あわてないためにも、今から備えを
家族に感染者が出て、濃厚接触者になると原則2週間の自宅待機が必要です。ただし家族が次々、感染すると2週間以上自宅待機になることも。
また新型コロナに感染した場合は、10日以上療養します。そのため、子どもがいる家庭はとくに備えが必要です。
「新型コロナの自宅療養は災害時のようにライフラインが止まるわけではないので、水は水道水で大丈夫。水の買い置きは不要です。買い物はネットスーパーなどを利用しましょう。また子どもが感染して自宅療養になったときを想定し、次のものを準備しておくと安心です」(黒澤先生)
子どもの自宅療養必需品リスト
【子どものお世話・看病に必要なもの】
・不織布マスク
・アルコール消毒液
・ハンドソープ
・子どもの着替え(発熱などで汗をかきやすいので薄手を多めに)
・ビニール袋(汚れもの入れ)
[大人が使用可能ならば]
・ゴーグル、またはフェイスシールド
・使い捨てエプロン
・使い捨て手袋
【飲み物・食べ物】
・水
・お茶類
・経口補水液
・イオン飲料
・離乳食の冷凍ストック
・食べ慣れているベビーフード
・ゼリー、プリンなど(のどごしがいいもの)
【薬・ホームケアグッズ】
・解熱剤(常備薬がある場合は、使用期限を確認する)
・体温計
・水枕
子どもの自宅療養で知っておきたいことQ&A
万一、子どもが感染して自宅療養になったら、わからないことがいろいろ。自宅療養のギモンを、黒澤先生に聞きました。
Q 子どもが新型コロナに感染しても、入院にはならない?
【黒澤先生から】
基礎疾患のない健康な子が新型コロナウイルスに感染した場合は、重症化の可能性が低いと考えられるため、自宅療養が中心になるでしょう。ただし家庭内感染が広がり、子どものお世話ができる人がいない場合は、子どもの入院が検討されることもあるようです。
Q 子どもが感染して自宅療養のときは、 不織布マスクをつけさせたほうがいい?
【黒澤先生から】
新型コロナウイルスに感染していてもマスクをしないほうがいいのは、2歳未満の子です。2歳未満は、マスクをすると窒息などの危険があるのでやめましょう。また2歳以上でも、新型コロナに感染すると、呼吸状態が悪化することがあるので無理につける必要はありません。
ただし小学生以上は、大人同様の感染力を持つという報告もあるため、状況が許せば不織布マスクをつけたほうがいいでしょう。大人は感染していなくても、不織布マスクをつけてください。
Q 子どもだけが新型コロナに感染した場合、部屋を分けて隔離しないとダメ?
【黒澤先生から】
家庭内感染を広げないためには、可能ならば部屋を分けて隔離したほうがいいでしょう。乳幼児で隔離が無理なときは、つき添う大人をできるだけ1人に決めてください。
また窓を開けて空気の出入り口を2カ所作り、1時間に1回5~10分換気をしましょう。
Q 感染した子のお世話をするときは、使い捨て手袋などは必要?
【黒澤先生から】
乳幼児は、大人と比較すると感染力は低いです。またおむつ替えや授乳、食事、着替えなどお世話の回数も多いので、基本的には不織布マスクをつけて、お世話のあとにハンドソープを使ってよく手を洗うことを徹底してください。
使い捨て手袋やエプロン、ゴーグル、フェイスシールドなどをつければ感染リスクはより下がりますが、現実的に難しいときは無理してつける必要はありません。
Q 子どもだけが感染したとき、授乳や添い寝はどうしたらいい?
【黒澤先生から】
家庭内感染を防ぐのは第一ですが、実際には子どものお世話が優先になると思います。また体調が悪いときほど、子どもはママ(パパ)のお世話を求めるものです。
この場合の新型コロナウイルスの主な感染ルートは、手で目、鼻、口を触ることです。そのため不織布マスクをして、お世話のあとはハンドソープでよく手を洗ってください。また感染した子の体にはウイルスが付着しているので、お世話をするママ(パパ)は、お世話の最中などに目をこすったりするのはNG。手で顔を触らないように注意してください。
Q 新型コロナは、感染した子どものおしっこやうんちにも排出される?
【黒澤先生から】
うんちの中のウイルス量は、くしゃみやせきなどで飛び散るウイルス量と比べて少ないものの、感染源にはなります。そのためうんちのときのおむつ替えやトイレのお世話が済んだら、アルコール消毒またはハンドソープで手洗いをしっかりしてください。
またおしっこの中に、ウイルスが排出される可能性はさらに少ないのですが、感染した子の体にはウイルスが付着しているのでおむつ替えのあとなども、同様に手洗いを忘れずに行いましょう。感染した子がトイレを使って水を流すときには、ウイルスが飛び散らないようにトイレのふたを閉めてから流してください。
Q 子どもが感染したら、入浴はさせないほうがいい?
【黒澤先生から】
高熱でつらそうなときは、入浴は避けたほうがいいのですが、熱があっても元気ならばおふろに入って構いません。ただし入浴のお世話をするママ(パパ)は、不織布マスクをするのがいいでしょう。一緒に裸になって湯船に入るのはできるだけ避け、タオルの共有はやめましょう。シャワーやお湯で絞ったタオルなどで体をふくだけでもOKです。
Q 家族に感染者がいるとき、手指消毒をするタイミングは?
【黒澤先生から】
医療の現場では、一処置一手洗いが大切といわれています。これは患者さんごとに対応する前・対応し終わったあとに少なくともアルコール消毒を行うという原則です。
しかし家庭内で、そこまでするのは現実的ではありません。そのため少なくとも
1)食事の前後
2)感染した家族がそばでせき、くしゃみをしたとき
3)感染した家族のお世話が終わったとき
4)ドアノブなどの共有部分に触れたとき
などを中心に、アルコールによる手指消毒を行うか、ハンドソープでしっかり手洗いをしてください。
Q 感染した人の食器は、紙皿にしたほうがいい? 洗濯は別にしたほうがいい?
【黒澤先生から】
食器類は、基本的には界面活性剤を含む食器用洗剤で洗えば十分です。心配なときは漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒してもいいでしょう。
また洗濯は、一緒に洗って構いません。ただし洗濯前の衣類などにはウイルスが付着しているので、取り扱いには注意してください。衣類などに触ったあとは、ハンドソープでよく手を洗いましょう。
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
新型コロナウイルスは、子どもは感染しても重症化しにくいといわれていますが、黒澤先生は「子どもも感染者数が増えれば、今後、重症者数も比例して増えていくことが予測される」と言います。万一、自宅療養中に子どもの具合が急変して、保健所に電話をしてもつながらないときは、かかりつけの小児科に電話をしていいそうです。「呼吸が苦しそう」「意識がはっきりしない・ボ~ッとしている」「けいれんを起こした」ときは救急車を呼んでください。