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この場所が危ない!性犯罪に狙われやすい子・狙われにくい子の違いは?【専門家】

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母の手のクローズアップは、小さな娘の手をカバー
※写真はイメージです
fizkes/gettyimages

悲しいことに子どもの性被害は、後を絶ちません。小学生になり、子どもだけで行動するようになると、より注意が必要になります。そのため幼児期から、家庭でも防犯教育をしていきましょう。子どもをねらった犯罪に詳しい、立正大学文学部社会学科教授 小宮信夫先生に、子どもに教えるときのポイントを聞きました。

「いかのおすし」は、内容をきちんと理解していない子が多いのが課題

子どもの防犯標語で有名なのが「いかのおすし」です。「いかのおすし」は、平成16年に東京都教育庁と警視庁少年育成課で作られたもので、全国の幼稚園や小学校などの防犯教室で教えられています。

――「いかのおすし」という防犯標語がありますが、子どもを性被害から守るためには「いかのおすし」を教えることが有効でしょうか。

小宮先生(以下敬称略) 「いかのおすし」の内容を知っていますか。
いか いかない(知らない人についていかない)
の  のらない(知らない人の車に乗らない)
お  おおごえをだす(助けて!と大きな声を出す)
す  すぐにげる(安全なところ、大人がいるところに走って逃げる)
し  しらせる(どんな人が、何をしたのか、家の人や学校などに知らせる)

子どもたちは「いかのおすし」という言葉自体は覚えていますが、問題なのはほとんどの子が内容を言えないことです。内容を覚えていて、いざというとき行動に移せなければ防犯教育の意味がありません。

――子どもを性被害から守るには、どんなことを教えるといいのでしょうか。

小宮 犯罪機会論という考え方を理解して、犯罪の機会を与えないようにすることが第一です。私が、防犯教室でよく指導するのが「入りやすく見えにくい場所には近づかない、そこにいるときには十分警戒する」ということです。
犯罪の多くは「入りやすく見えにくい場所」で起こっています。

――たとえば、どんなところでしょうか。

小宮 公園のトイレやスーパーのトイレなども「入りやすく見えにくい場所」ですよね。とくに男子トイレと女子トイレの入り口が近いと、男が女の子のあとをつけてトイレに入り、個室に連れ込みやすいです。またガードレールのない道は、犯人の車に乗りやすい「入りやすい場所」です。

塀が高い家が立ち並ぶ住宅街なども「見えにくい場所」です。歩道橋の上も目撃されにくい「見えにくい場所」です。

2021年8月、母親らと卒園記念の写真を貸しスタジオに撮りに来た女の子が、撮影後に男に「かくれんぼしよう」と誘われて、母親らの目の届かない場所に連れ込まれ、いたずらされた事件がありました。この事件もスタジオの一角にある「入りやすく見えにくい場所」という、すっと入れて親の目の届かない場所で起きています。

そのため幼児期から「ここの公園のトイレは、入りやすくて、見えにくいから危ないね」などと教えてあげてください。親子で入りやすく見えにくい場所をゲーム感覚で探してもいいです。

小学生、中学生になるとSNSで性被害にあうケースもあります。SNSはだれでも使えるので入りやすく、そこには「なりすまし」が多くいるので見えにくい場所です。

犯人は警戒心が強くて、親や先生に報告しそうな子はねらわない

「入りやすく見えにくい場所」という視点を持つと、私たちの暮らしの中には「入りやすく見えにくい場所」が多数存在することがわかります。

――入りやすく見えにくい場所とは、たとえばマンションのエレベーターも含まれると思います。小学生になって子ども1人でエレベーターに乗るときは、どのように教えたらいいでしょうか。

小宮 子どもをねらう犯人は、子どもの様子をよく見ています。犯人が嫌うのは、警戒心が強くて、親や先生にすぐ報告しそうな子です。そのためエレベーターに、子ども1人で乗るときは、必ずボタンの近くにいるように教えてください。万一、何かあったらエレベーターの非常ボタンを押すように伝えましょう。
また相手に背中を向けてはいけません。背中を見せるということは、すきがあるということです。エレベーターの中では背中を見せないようにして立ち、時々、ちらっと相手の顔を見るように教えてください。犯人は、そうした子どもの様子から「この子は、防犯教育を受けているな。親や先生に、すぐに報告するだろうな…」ということがわかるはずです。そういう子には、手を出さないと思います。

――「入りやすく見えにくい場所」に注意するのは外だけでいいでしょうか。家の中は大丈夫でしょうか。

小宮 子ども部屋などは、入りやすく見えにくい場所です。親せきや知り合いなど人の出入りが多い家は注意したほうがいいです。
親は親せきや知人を信じやすいのですが、親せきや知人から子どもが性被害を受けることもあります。訪問者との会話に夢中になるのではなく、子どもが置かれている状況にも目を配ってください。

――性被害を防ぐために、幼児期から性教育をすることは有効でしょうか。

小宮 性にかかわる大切なプライベートゾーン、いわゆる水着ゾーンはほかの人に触れさせないなどと教えることは、もちろん有効です。ただ幼いうちは、いろいろ教えても理解できないので「入りやすく見えにくい場所」というキーワードと一緒に教えてあげましょう。
入りやすい=手が入りやすいと置き換えて、着替えるときは「下着だけだと、手が入りやすいでしょ。着替えるときは、まわりに警戒して」と教えてください。

「入りやすく見えにくい場所」というキーワードを使うことで、子どもも覚えやすくなります。

犯罪は未然に防ぐリスクマネジメントの視点を持つことが第一

小宮先生によると、防犯には「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」という2つの考え方があると言います。

――「リスクマネジメント」と「クライシスマネジメント」についてわかりやすく教えてください。

小宮 防犯対策には、犯罪を未然に防ぐ「リスクマネジメント」と、危ない場面に遭遇したときの「クライシスマネジメント」という考え方があり、防犯対策にはどちらも必要です。

――危ない場面に遭遇したときの「クライシスマネジメント」とは、どんなことでしょうか。

小宮 たとえば走って逃げたり、大声を出して助けを求めたりすることです。
クライシスマネジメントは、実際に犯罪に巻き込まれたときに、とっさにとる行動なので成功するとは限りません。たとえば助けを求めて大声を出そうとしたために、口をふさがれて窒息死した子もいます。クライシスマネジメントで、自分を守るには限界があります。
そのため子どもには、危険な場面にならないように、犯罪を未然に防ぐリスクマネジメントに重点を起いた防犯教育をしてほしいと思います。

お話・監修/小宮信夫(こみや のぶお)先生

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

小宮先生は「日本は性犯罪に甘い」と言います。子どもをねらったわいせつ事件が起きても情報開示がされなかったり、学校などの教育現場で平然と教師によるわいせつ事件が起きるのも性犯罪に甘いためです。大切な子どもを守るのは、日ごろからの防犯教育です。小宮先生のYouTubeチャンネル「小宮信夫の犯罪学の部屋」では、子ども向けの防犯教育動画「あぶないとこって、どんなとこ?」を見ることができます。

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