「ママのためのおちんちん講座」の男女逆バージョンはアリ??【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第22回。今回は、「ママのためのおちんちん講座はOKだけど、パパが女の子の性器について学ぶ講座はNG?」というのがテーマです。父親が娘の性器や性について知ることは大事なことのような気もしますが、なんとなく「いいのかな?」「必要なのかな?」というような気持ちも抱いてしまうこの問題。岡田先生と一緒に考えてみませんか。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#22です。
「ママのためのおちんちん講座の男女逆はヤバイ」という投稿
私の書いた記事や、講座を取材してもらった記事が、ニュースサイトやネット掲示板に転載されることがあります。ネガティブな書き込みを見ると落ち込むので、基本的にコメント欄は見ないようにしているのですが、先日、偶然目にすることがありました。
「ママのためのおちんちん講座」を開催した際の取材記事だったのですが、そのコメントの中で「これ、男女逆で『パパのためのおまた講座』だったらヤバいよねww」という投稿が目に入ってきました。
私は、男性器の専門家である泌尿器科医として講座を開催しているため、女性器に関する講座は考えたことがなかったのですが、「父親が女性器について学ぶ」という講座があってもいいはず。「ママが男の子の性器について学ぶ講座」はOKで、「パパが女の子の性器について学ぶ講座」はNGなのはなぜだろうとあらためて考えてみました。
父親が娘の性器のケアについて学びたいと思うのは当然のこと
おちんちん講座に参加する母親たちは、「男性器は自分にはない器官だけど、子ども(息子)のお世話をする上で情報が必要」と感じて学びに来ています。正しい洗い方や、保護者として知っておくべき異常(病気)、成長する上で必要な声かけのしかたなど、みなさんとても真剣。冗談半分だったり、いやらしい目的で参加する方はいません。
同様のことは、女の子を育てる父親にも言えるはず。最近は子育てを自分ごととして、主体的に取り組む父親が増えてきています。その際、女の子の性器の洗い方や注意すべき異常、月経のこと、何才まで一緒におふろに入っていいかなど、性に関して知りたいことってたくさんある気がするのです。
私も現在6カ月の女児がいますが、子どもの女性器を洗うときって結構緊張しませんか?ひだ(大陰唇、小陰唇)の間にうんちや汚れがたまりやすいので、しっかり洗いたい。けれど、石けんはどのくらいつけていいのか、ガーゼで取りきれない汚れはどうしたらいいのか、戸惑います。
男性が男性器について必ずしも正しい知識を持っているわけではないのと同様に、女性も女性器に関する情報をマスターしているわけではありません。女児をケアする際、父親だったらなおのこと、「教えてほしい」と思うことは当然だし、むしろ思ってほしい。
父親にも性に関する情報を届ける機会を増やしたい
それでも、男性である父親が女性器に関心を持つことへの世間の視線が冷たいのは、「男性は女性をすぐに性的な目で見る」「いやらしい目的ではないか」という意識が定着していることが大きいでしょう。
以前、「男性保育士に娘のおむつ替えや着替えをしてもらいたくない」という女児の母親の要望に対し、ネット上で議論が起こりました。
いろいろな考え方がありますが、多くの男性保育士や女児の父親たちが性的な意図などなく、一生懸命、保育・育児に取り組んでいることも事実です。小児性愛者や性犯罪者を子どもから遠ざけるためのしくみは必要不可欠ですが、男性が女性器の構造やケアについて学ぶ機会も保障されるといいなと思います。
さて、ここまで書いてきて、「どうして先生の講座は『ママのための』と母親に限定しているのですか」と突っ込まれそうです。
理由は2つ。
最初「子育て中の方向け」で募集したところ、子どもがいないのに参加しようとした男性(自分の性器について相談したかった)が紛れ込んでしまったため。それ以降、個人で開催するときは「ママ限定」にしていますが、子育て支援センターなどの依頼で開催するときは父親も参加できます。
母親のみのほうが、参加者のかたが話しやすいからという理由もあります。性の話はハードルが高いので、女性のみの空間のほうが安心感があるんですよね。
と、いろいろ試行錯誤の日々ですが、たくさんの父親(男性)にも性に関する情報を届けられるように、今年も頑張りたいと思います。
文・監修/岡田百合香先生 構成/ひよこクラブ編集部
ママだけでなく、パパが子どもの性器のケアや性教育について戸惑いを感じ、知りたいと思うのは自然なこと。ママもパパも、子どもの性に関する情報を、必要なときに学べるようになるといいなと思います。次回も子どもの性や、性器、排せつなど、ママ・パパが気になるお話をお届けします!お楽しみに。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。