【小児科医リレーエッセイ 38】 少子化で「孤育て」社会に…。小児科・保育園・幼稚園、子育てのパートナーに声をかけて!
「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から、子育てに向き合っているお母さん・お父さんへの情報をお届けしている連載です。今回は、福岡県福岡市・いなみつこどもクリニック院長の稲光毅先生です。稲光先生は「かかりつけ小児科、保育園・幼稚園など、子育てのパートナーとして遠慮なく声をかけてほしい」と言います。
子育てにみんなを巻き込もう
みなさんは、子育てや子どもの健康についてわからないことや心配なことがあるときに、だれに相談するでしょうか。とくに1人目のお子さんではさまざまな日常的なことが初めての経験です。「夜間ぐっすり眠っていて授乳ができないが、起こして授乳しなくて大丈夫だろうか」、「排便が3日に1回しかないのはそのまま様子を見ていていいだろうか」、などお母さんが一人で心配することになってしまいがちです。最近はインターネットからさまざまな情報を得ることができるようになりました。しかしネット上の情報は必ずしも正しいわけではなく適切な情報を得るのは簡単ではありません。検索を進めることで、かえって不安が増してしまうこともあります。
かかりつけ小児科をつくり子育ての相談にのってもらおう
赤ちゃんは生後2カ月から5カ月まで毎月、7カ月、12カ月と定期予防接種を受けるのが標準的なスケジュールになっており、必ず小児科を受診します。予防接種の来院に合わせて計測を行ったり、赤ちゃん、お母さんの健康状態についての簡単なアンケートを実施し子育ての相談に応じる小児科が増えています。小児科での予防接種の機会を、予防接種を受けるだけでなく、子育ての相談先としてぜひ活用していただきたいと思っています。
急な発熱や嘔吐下痢、発疹など病気の際にも小児科を受診し、診察の上、薬を処方されたり、点滴を受けたり、入院が必要であれば病院に紹介してもらうことになりますが、医師の立場からすれば、かかりつけとして診ているお子さんは、それまでかかった病気や家族の状況を把握した上での対応がしやすいという利点があります。必要な時に適切な情報を得るためには、早いうちにかかりつけ医をもつことがすすめられます。
保育園や幼稚園は子育てのパートナーです
また、託児所や保育園の先生も重要な子育てパートナーです。生後半年から1年を過ぎ託児所や保育園に通うようになると、子どもは平日の多くの時間を園で過ごします。園の先生は集団生活の中で家庭とは違った環境で子どもたちを見ています。先生との会話は送り迎えのほんの短い時間ではありますが、家庭での様子、園での様子を共有することで子育てのパートナーとしての関係性が深まります。
乳幼児健診では子どもの病気だけでなく、子育てに関連するさまざまな心配事を相談できます
乳幼児健診は1歳の誕生日までに1~2回(多くは生後3~4カ月と6~7カ月または9~10カ月)、および1歳6カ月と3歳の法定健診が公費で行われており、かかりつけ小児科で個別健診として、あるいは保健センターなどで集団健診として実施されます。節目の年齢での子どもの運動発達・精神発達の評価、疾病のスクリーニングに加え、保護者の健康状態や家族環境、経済状況などにも目を配ることになっています。
一方、保育園・こども園・幼稚園での健診では、日常的な集団生活の中での子どもを見ることができるため、社会性の発達の評価がしやすいと言えます。幼稚園では年1回、保育園・こども園では年2回健診が行われます。健診に際して保護者から個別の質問がある場合、診察の結果と園の先生の情報をあわせて園の先生から回答してもらうようにしています。
少子化の進行は、子どもの数の減少にとどまらず地域で子育てを支える機能を低下させ、「孤育て」ともいわれる社会環境が生じています。子どもにかかわっている多くの職種の人たちは、子育て家庭の負担が増していることは大きな問題であることを認識し少しでも力になりたいと考えています。かかりつけ小児科、保育園・幼稚園など、子育てのパートナーとして遠慮なく声をかけてみてください。