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「これを知って、息子への声かけが一変…!」子どもの気質に着目した画期的”親子コミュニケーション術”「ポジティブ・ディシプリン」【ジャーナリスト岸田雪子】

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明るい部屋でくつろげる家族
※写真はイメージです
maruco/gettyimages

子育てを経験したことがなくても、親は子どもができると急に親にならなければなりません。初めての子育てはわからないことや迷うことの連続でしょう。子育てに迷ったとき、ヒントになる考え方の一つが「ポジティブ・ディシプリン」です。2017年ころから「ポジティブ・ディシプリン」を学んだという、ジャーナリスト・コメンテーターの岸田雪子さんに話を聞きました。

発達心理学に基づいた子育てのガイド、ポジティブ・ディシプリン

――岸田さんは最近出版された著書の中で「ポジティブ・ディシプリン」というプログラムについて紹介しています。プログラムがどんなものか教えてください。

岸田さん(以下敬称略) 「ポジティブ・ディシプリン」は、発達心理学に基づいた、養育者支援プログラムです。スウェーデンの子育ての取り組みに影響を受けたカナダの臨床心理学者ジョーン・E・デュラントが、国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレンと開発しました。

子どもが自分で学ぶ力や、将来につながる困難の解決策を考えることを子育ての中心にするガイドです。長期的な視点に立って子育てをすすめ、子どもの発達や、持って生まれた気質など、子どものことを知ることを重視しています。また、子どもは親がコントロールするものではないという考え方が基本にあって、親子がお互いに尊重し合い認め合い、日ごろの課題を解決し、ともに成長しようとするプログラムだと思います。

――岸田さんが「ポジティブ・ディシプリン」に出会ったのはいつごろですか?

岸田 2017年ころに日本で虐待事件が大きなニュースになり、家庭向けにも体罰禁止法が必要ではないか、という機運が高まったころです。私はスウェーデンが1979年に体罰禁止法を作ったことは知っていたので、スウェーデンの取り組みをもう少し体系的に学べる方法はないかと探していたときに、セーブ・ザ・チルドレンの方々に「ポジティブ・ディシプリン」のことを教えてもらい、学び始めました。

もともと自身で学んでいた発達心理の知見や、自分がやってきた子育ての答え合わせのような部分もありました。

――答え合わせというのはどのようなことでしょうか。

岸田 たとえば「ポジティブ・ディシプリン」は、子育ての長期的な目標を考えることから始めます。実はわが家には息子が幼いころに夫婦で決めた子育ての目標がありまして。「まわりも自分も大切にできる、思いやりのある人に。健康で。自立して考える人に」という目標で、それを書いた紙をずっと冷蔵庫に貼ってあるんです。

目につくところに貼ってあるので、息子が学校のプリントを出さないとか、忘れ物が多いとか、日常で子どもを注意したくなるときに「長い目で見た子育ての目標」を思い出すきっかけにしています。すると、感情にまかせて怒るのではなく、「子どもの自立をめざすためには、今、どんな言葉をかけたらいいだろう」と考えられるようになるんです。「ポジティブ・ディシプリン」を学んで、自分がやってきたことが「これでよかったんだ」と答え合わせができた部分もあって、うれしいような衝撃でした。また、息子がもっと小さいときに知っておけば悩まずに済んだな、思うことも多かったです。

息子の「気質」を知ることで、「いい親子関係」がめざせるように

――「ポジティブ・ディシプリン」を知ったあと、自身の子育てにはどんなところを取り入れましたか?

岸田 「ポジティブ・ディシプリン」を学ぶ中で、いちばん目からうろこだったのが親と子の「気質」に着目するという点でした。「気質」というのは、人格のもとになっている根っこのようなもので、人の性格を作る基礎になるものです。親もきょうだいも一人一人違うのが「気質」で、生まれ持ったものはずっと変わらないものです。

私が「ポジティブ・ディシプリン」を学び始めたころ、息子は小学校高学年で反抗期が始まったころでしたが、「気質」について知ったことで、彼とのかかわり方を見直すことができたんです。
たとえば、息子はサッカーに熱中していましたが、試合でうまくいかなかったときなどの落ち込みが、長く続くことがありました。いったん落ち込んでしまうと、ずっとじーっとしている感じで、おふろに入るのも寝るのにもなかなか動かないほど。私は彼の様子を見て、なかなか気持ちを切り替えられなくて大変そうだな、と思う一方で「そんなに悩まなくてもいいのに」と思ったりもしました。
けれどこれは、「持続性が強いという、この子の気質なんだ」と理解すると、見方を変えれば「根気強い」という長所でもあるのだと考えられるようになりました。すると彼の気持ちが回復するような声かけもできるようになって、サポートしやすくなりました。

――親としてこうアドバイスすべき、というよりは、親と子は違う気質を持つと理解して親子関係をよくすることが、子育ての問題解決の一つの方法になるのですね。

岸田 そうですね。多様性の理解、というのがずいぶん広がっていますが、親子も多様であって、分身じゃない。だからこそお互いを尊重し合い、認め合いながら歩み寄る関係作りが大切なのだと思います。
「いい親」をめざそうとすると、私もなかなかうまくいきませんが(笑)「いい親子関係」を築くことはできるはずだと思っています。なぜって親子は究極の相思相愛ですから。そのためにも、「いい親」というプレッシャーを少し肩から下ろして、「いいコミュニケーション手段を身につける」と考えると、笑顔が増やせるのではないかなと思います。

人間の子育てって、哺乳(ほにゅう)類の中でも珍しいものです。人間の赤ちゃんは自分で歩けない、おっぱいに吸いつけない、大声で泣いて周囲にお世話してもらわないと生きられない・・・。しかも子育て期間は20年近くも続きます。長期間、親子で同じ空間で過ごすわけですから、お互いの人生を影響し合う存在であるし、だからこそ親だけでは育てられないのだと思うんです。

子どもっていうのはチームで育てるものであるはず。家庭内のチームや友人のほか、園・学校・地域の子育てセンター・自治体の相談窓口・小児科医・保健師さんなどいろいろな方とのチームで一緒に育てて初めて20年という長い時間を支えることができるものではないでしょうか。
子育てはすべて親がするもの、というプレッシャーを少しでも減らせるような制度的な支えが必要ですし、親御さんも人に頼ることに負い目を感じなくていい社会をめざしたいですね。子どもの幸せも大切ですが、親御さん自身の幸せも大切にしてほしいと思います。

お話・監修/岸田雪子さん 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

だれもが子どもを持って初めて親になるもの。だからこそうまくいかなくて当たり前なのかもしれません。親だからと気負いすぎず、子どもと一緒に親自身も成長しながら、親子お互いの関係をよくするコミュニケーションを築くことが大切なのでしょう。

岸田雪子さん(きしだゆきこ)

PROFILE
ジャーナリスト、キャスター、東海大学客員教授、日本発達心理学会員。
早稲田大学法学部卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了。日本テレビに入社後、報道局記者、キャスターとして複数の情報番組のニュースコーナーを担当。独立し現在はテレビやラジオなどの報道・情報番組でコメンテーターとして活躍中。

『スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方』

親の「声かけ」が、子どもの可能性を引き出し育てる!「世界で今注目の親支援プログラムポジティブ・ディシプリン」×「発達心理学」×「伝えるプロの経験」から生まれた、画期的“親子コミュニケーション術”。(三笠書房)

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