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治療が遅れると1歳までに亡くなる子が多い。ADA欠損症の赤ちゃんの最先端治療と早期発見の重要性【専門家監修】

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泣いて生まれたばかりの赤ちゃんの男の子と幼児の病院で産科の部屋で叫んで赤ちゃんの生命、アジアの最初の日
●写真はイメージです
comzeal/gettyimages

国立成育医療研究センター(以下成育医療研究センター)では、新潟大学のチームと共同で、新生児スクリーニングなどで生後間もない赤ちゃんを重症複合免疫不全症と診断し、治療を行い6カ月で無事退院させました。新生児スクリーニングで重症複合免疫不全症を発見し、無症状のうちから酵素補充療法を開始した症例は、全国初です。今回の治療と研究に携わった、成育遺伝研究部 疾患遺伝子構造研究室室長 内山徹先生に、最先端の重症複合免疫不全症の治療について聞きました。

5万に1人の重症複合免疫不全症。赤ちゃんに見つかったのは、その中のADA欠損症

重症複合免疫不全症とは総称です。重症複合免疫不全症が見つかると、遺伝子検査を行って、より詳しく調べますが、成育医療研究センターで治療を行った赤ちゃんも遺伝子検査を行った結果、生後33日でADA欠損症と判明しました。ADA欠損症は、重症複合免疫不全症では2番目に多い病気です。

――重症複合免疫不全症という病気について教えてください。

内山先生(以下敬称略) 重症複合免疫不全症は遺伝子の変異によって起きる病気で、免疫の司令官であるT細胞が、体内で作られないために、低月齢のうちから感染症にかかりやすく、感染症にかかると重症化しやすい病気です。重症複合免疫不全症は5万人に1人といわれており、生後1年以内に死亡することが多いです。
また重症複合免疫不全症というのは総称で、今回、治療を行ったのは重症複合免疫不全症の中の、ADA(アデノシン・デアミナーゼ)欠損症という病気です。

――重症複合免疫不全症は、男の子に多いなどあるのでしょうか。

内山 重症複合免疫不全症の中で最も多いのが、X連鎖重症複合免疫不全症です。この病気は遺伝子の関係で、男の子しか発症しません。
しかしほかの重症複合免疫不全症は、性別は関係ありません。

ADA欠損症には、成育で研究を行っている酵素補充療法が有効

酵素補充療法は、ADA欠損症の治療に有効で、早期にADA欠損症を発見し、治療を開始することで救える命が増えます。成育医療研究センターでは、1986年に海外で承認された製剤を使って、2010年から研究として治療を開始しています。


――前述のADA欠損症とは、どのような病気なのでしょうか。

内山 遺伝子の変異によりADAという体内の酵素が欠損し、それによって重度の免疫不全になり、低月齢のうちからウイルスや細菌などの感染症にかかりやすくなる病気です。

ADA欠損症は、重症複合免疫不全症の中で唯一酵素補充療法が有効です。

――成育医療研究センターで治療した赤ちゃんも、酵素補充療法を受けたのでしょうか。

内山 国内では成育医療研究センターが中心となって、酵素補充療法の治験を行っています。
今回の赤ちゃんは、新潟大学医学部の新生児スクリーニングで重症複合免疫不全症が疑われ、その後の遺伝子検査で生後33日にADA欠損症と判明しました。そのため成育医療研究センターに入院し、生後43日から酵素補充療法を始めました。重症複合免疫不全症は、感染症にかかると怖い病気なので、コロナ禍の中、両親の運転する車で来院しました。

――低月齢のうちから感染症にかかりやすいということは、無菌室などに入院するのでしょうか。

内山 特別な空調設備を使用して、きれいな空気を循環させるクリーンルームに入院します。
クリーンルームに入るときは、手指消毒は必須ですが、親は赤ちゃんを抱っこしてミルクを飲ませたりはできます。ただし細菌やウイルス感染を引き起こす可能性があるので母乳は与えられません。

酵素補充療法を始めて、1カ月半ほどで免疫の司令官T細胞が増加し始める

赤ちゃんが受けた酵素補充療法は「日本ではまだ新しい治療法」と、内山先生は言います。

――酵素補充療法とは、どのような治療なのでしょうか。

内山 免疫機能の改善を図るための治療です。
ADA欠損症に有効とされるADA酵素補充療法剤は、アメリカでは1987年に開発、1990年に承認されていますが、日本では承認されていませんでした。そこで、2016 年より成育医療研究センターが中心となって治験を開始しました。2019年3月に帝人ファーマの「レブコビ®筋注2.4mg」(一般名:エラペグアデマーゼ)が厚生労働省から製造販売承認を受け、販売されるようになり、日本でも酵素補充療法ができるようになりました。
酵素補充療法は、筋肉注射で1週間に1回、赤ちゃんの太ももに注射をする治療です。注射は1週間ごとに交互に、右の太もも、次は左の太ももというように行います。今回の赤ちゃんは、生後43日から酵素補充療法を開始したところ、免疫の司令官であるT細胞が増えて免疫力が回復したので、6カ月に退院できました。

赤ちゃんが受けた酵素補充療法の結果

――この赤ちゃんは、酵素補充療法を受けてADA欠損症が完治したということでしょうか。

内山 ADA欠損症をはじめとした、重症複合免疫不全症を根治治療するには、造血細胞移植が必要です。
酵素補充療法は、あくまでも造血細胞移植で最適なドナーが見つかるまでのつなぎの治療です。しかし酵素補充療法をしなければ、感染症にかかり1歳までに亡くなってしまうことが多いです。
この赤ちゃんも、成育医療研究センターを退院したあとは、出生地の医療機関の外来で週1回酵素補充療法を続けるほか、家庭でも免疫を高めるために、免疫グロブリン製剤の皮下注射を週1回程度行い、抗菌薬(抗生剤と抗真菌薬)の予防内服が必要となります。

――造血細胞移植で最適なドナーが見つかれば、すぐに移植が行われるのでしょうか。

内山 移植を行うには、抵抗力を考えると年齢が少しでも上のほうがいいいのですが、万一、感染症にかかり重症化することを考えると、早めに移植を行ったほうがいいという考え方もあり、タイミングは検討が必要です。
とにかく最適なドナーが見つかることが第一です。

お話・監修/内山徹先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

ADA欠損症を含む、重症複合免疫不全症は、一部の自治体では、自己負担や無償で新生児スクリーニングを行い、早期発見に努めています。内山先生は「幼い命を救うためには、重症複合免疫不全症に対する新生児スクリーニングの全国導入が必要」と言います。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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