【皮膚科医が解説】赤ちゃんの赤いあざ「乳児血管腫」の基礎知識と最新治療
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生後まもない赤ちゃんにできる赤いあざ「乳児血管腫」(いちご状血管腫)。昨年販売された日本初の乳児血管腫治療薬によって、治療の選択肢が大きく広がっています。神奈川県立こども医療センター皮膚科部長の馬場直子先生に、乳児血管腫の基礎知識と最新治療についてお聞きしました。
乳児血管腫ってどんな病気?
「乳児血管腫は、皮膚の表面や内部にできる“赤あざ”の一種で、良性の腫瘍(しゅよう)です。一般的に生後1~4週にあらわれ、顔や頭など首から上の部位にできることが多く、女の子に多く見られます。
円形・だ円形の丸みのある形状で、1cm以下の小さなものから、10cm以上のものまでさまざま。その90%以上は、5~7才までに赤みや盛り上がりが少しずつ消えていくため、『様子を見ましょう』と、治療をしないケースも多くありました。
しかし、治療をしなかった半数以上の子に、皮膚のシワやたるみ、色素沈着や赤みなどの“あと”が残ってしまったというデータもあります」
「治療する・しない」のボーダーラインは?
「乳児血管腫は、血管があるところならどこにでもできる可能性があります。そのため、気道付近や目など、命や機能に影響がある部位にできた場合には、積極的な治療が必要となります。
上記のような症例以外は、自然によくなるのを待つか、治療を始めるかについては医師によって見解が分かれ、また従来のレーザー照射や手術、ステロイド剤を用いた治療法は抵抗がある…、というママ・パパも多かったのです。そんな中、昨年、国内初の乳児血管腫治療薬が販売され、治療の選択肢が大きく広がりました」
最新治療法ってどんな方法?
「乳児血管腫治療薬は、もともと心筋症の治療に用いられていた有効成分『プロプラノロール』を配合したものです。
2008年にフランス・ボルドー大学で、乳児血管腫をもつ心筋症の患者に使用したところ、血管腫が短時間で縮小したことに気づいた医師・クリスティーヌ・レオテ・ラブレーズ氏によって、その効果が発見されました。
昨年販売された乳児血管腫治療薬は、バニラいちご味のシロップ剤。家庭でも飲ませやすく、その効果の大きさから、これまでのレーザー照射やステロイド剤を用いた治療には抵抗がある…、と感じていた人にも治療の選択肢が広がったと言えるでしょう。
治療の必要性やタイミングは、できた部位や大きさ、時期によって異なります。まずは、かかりつけの小児科に相談した上で、『早く治してあげたい』と思う人は、積極的な治療を希望することも伝えてみるとよいでしょう」
前述の乳児血管腫治療薬を用いた最新治療を受けられる全国の施設は、マルホの乳児血管腫情報サイトから検索できます。気になる人はチェックしてみてくださいね。(取材・文/大武美緒子、ひよこクラブ編集部)
■監修●馬場直子先生
神奈川県立こども医療センター皮膚科 部長、横浜市立大学医学部附属病院皮膚科 臨床教授。滋賀医科大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部附属病院皮膚科を経て、現職。『ひよこクラブ』のスキンケア企画などでも監修いただいている先生です。
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