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プールやお祭り…夏の性犯罪から子どもを守るために、親が注意すべきことは?【専門家】

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水の中で裸足で遊ぶ子供
●写真はイメージです
Hakase_/gettyimages

夏の思い出作りにプール、海水浴、水遊び、お祭りなどに子どもを連れて行こうと計画しているママやパパもいると思います。しかし不特定多数の人が集まる場所は、犯罪が起きやすいそうです。子どもをねらった犯罪に詳しい、立正大学文学部社会学科教授 小宮信夫先生に、子どもを守るために心がけたほうがいいことを聞きました。

子どもが被害にあった性犯罪の実数は不明。報道されているのは氷山の一角

わいせつ行為、盗撮など子どもをねらった犯罪はあとを絶ちません。しかし報道されているのは、氷山の一角だと小宮先生は言います。

「子どもの場合は、子ども自身が犯罪にあったことに気づかないこともあります。それは犯人が言葉巧みに子どもに近づき“お姉ちゃん、むし歯がいっぱいあるね。ほうっておくと痛くなるから治してあげるよ”と言ってディープキスをして“はい、治ったよ”と言ったりするからです。幼ければ、自分が犯罪にあったことはわかりません。
また犯罪にあったとわかっても、親が警察に通報しないことも多いです。そのため子どもが被害にあった性犯罪の実数はわかりません。
しかし夏は、プールや海水浴、花火大会や夏祭り、キャンプなどに出かける家庭も多いと思います。こうした不特定多数の人が集まる場所は犯罪が起きやすいです。子連れのときはとくに注意が必要、基本的には親が目を離さないことが鉄則です」(小宮先生)

多くの人が集まる場所ほど、みんなが傍観者になり何かあっても助けてくれない

人が多ければ、万一、何かあったとききっとだれかが助けてくれると思いがちですが、小宮先生は「そこが盲点」と言います。

「1964年にニューヨークで、キティ・ジェノヴィーズ事件という殺人事件が起きました。被害者は女性で、大声をあげて助けを求めました。しかし38人もの目撃者がいながら誰一人警察に通報しませんでした。当時は、ニューヨークの人は冷たいなどと報道されたのですが、冷たい訳でなく集団心理の一つの『傍観者効果』というもののせいです。
人は少人数だと、何かあったとき警察に通報したり、助けようとします。しかし集団だと、そうした心理が働かなくなります。
たとえば海やプールで、子どもが知らない人に声をかけられて戸惑っていたとします。もし1人や2人の大人がそれを目撃したら、子どもに直接「どうしたの?」「ママやパパは?」と声をかけたり、監視員や警備員を呼ぶでしょう。
しかし多くの人が集まる場所で同じことが起きると、みんな子どもに声をかけずに傍観します。そして「家族なのでは?」「知り合いかもね」と勝手に思って、その場から立ち去ります。
ママやパパは、人が多い場所ではとくに子どもから目を離さないでください。何かあってもだれかが助けてくれると思うのは、大きな間違いです」(小宮先生)

プールの中で体を触られる子も。子ども用プールのほうが犯罪リスクは少ない

プールで泳いだりしているときに、親に気づかれないように水の中で子どもの体に触る痴漢行為もあるそうです。小宮先生は犯罪が起きやすいのは、“入りやすくて、見えにくい場所”だと言います。プールはまさに入りやすくて、水の中は見えにくい場所です。

「30年ほど前ですが、水球というスポーツで水の中で、相手選手を蹴ったりする反則行為が多発しました。それを防ぐ実験として、アメリカの犯罪機会論の学者が薬剤を使ってプールの水の透明度を上げたところ、反則行為が減りました。
犯罪も同様で、プールの水の透明度を上げて見えやすくすると、痴漢行為は減るでしょう。しかし現実問題としては難しいので、ママやパパにできることとしては、子ども用のプールで遊ばせることです。子ども用プールならば、子どもを連れていない犯罪者は入りにくいです。
またプールの中だけでなく、更衣室などプールから上がったあとも、ママやパパが子どものそばについていることが大切です。絶対、子ども1人にしないでください。“上の子や友だちが一緒にいるから大丈夫”と思うのは危険です」(小宮先生)

また2021年12月、未就学の女の子がパパと男湯(公衆浴場)に入っていたところ、知らない男にぶつかるようにして体を触られたという事件もありました。

「こうした犯罪を防ぐには、とにかく親がそばについていることが大切です。親がそばについていて、子どもを見ているということが犯罪の抑止力になります。
例えば、旅先なら貸し切りぶろや部屋のおふろに入ることも防犯対策になります。”せっかくなら大きなおふろに入れてあげたかったな…”と思うかもしれませんが、ほかのことでママやパパと楽しく遊べれば、きっといい思い出になるはずです」(小宮先生)

子どもへの防犯教育は、しまうまとライオンを例に話そう

子どもを犯罪から守るには、ママやパパ自身が気をつけるだけでなく、子どもにも教えることが必要です。ただし「知らない人について行くのはダメだよ」などと教えても効果はありません。なぜなら犯罪者は、知らない人とは限らないからです。未就学児には、ママやパパから離れないことを教えることが第一です。

「子どもに防犯について教えるときは、子どもが興味を持つように、しまうまとライオンの話を例に教えるといいでしょう。
『サバンナでしまうまは、なんでライオンに食べられないで生きていられると思う? ライオンから見る世界は白黒で、しまうまがみんなで一緒にいると大きな動物に見えるんだよ。自分よりも大きい動物がいると思ってライオンは襲って来ないの。でもしまうまが仲間からはずれると、ライオンはすぐに襲ってくるよ。だから〇〇くんも、ママやパパから離れてはダメだよ』
と教えてあげてください。
子どもは好奇心旺盛で、親が目を離すとすぐにどこかに行ってしまう子もいます。こうした話を日ごろからして、幼いうちから防犯意識を高めましょう」(小宮先生)

お話・監修/小宮信夫先生

取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部

不特定多数の人が集まる場所には、犯罪者を素早く検知して警備の対象を絞る「ディフェンダーX」という監視カメラを設置する動きも出ていますが、設置場所はまだ限られています。子どもたちを犯罪から守るには、ママやパパが抑止力になることが基本です。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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