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【瀧靖之×女優・加藤貴子】習いごとのやめどき、マスク生活の心配・・・育児のモヤモヤに脳科学が教えるヒント

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「習いごとをやめるタイミングは?」「ずっと続いているマスクの生活が成長にどのくらい影響を及ぼしているのか心配・・・」など子育てで気になるモヤモヤ。脳科学的な視点で見ると、解決のヒントがあるかもしれません。8才と5才の男の子を育てる女優の加藤貴子さんが、育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第14回。今回は脳の発達の専門家である東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生にアドバイスをもらいました。

習いごとのやめどきはどう判断すればいい?

加藤さん(以下敬称略) 2人の子どもたちは去年から水泳を習い始めました。長男はイヤイヤながら始めた割に今は夢中になっていますが、やる気があった二男は今は水泳をやめたいと言っています。二男には「まだ1年もたっていないから、もう少しやってみようか」と話していますが、習い事の始め方ややめどきはどうやって判断すればいいでしょうか?

瀧先生(以下敬称略) まずは自分でやりたいと思う気持ちが大事で、習い始めは本人がやりたがったり、少し興味を持ったらやってみればいいわけですから簡単だと思います。いつがやめどきかが、けっこう難しいですよね。一つの考え方として、習いごとをした期間が1カ月でも1年でも、その経験自体が人生にとってプラスになるということです。「飽きたから」とか「遊びたいから」とか「ほかのことをやりたいから」やめる理由はさまざまだとしても・・・。
少しだけでも経験があれば、大人になってからまたチャレンジしたいと思ったときのハードルがぐっと低くなります。

加藤 じゃあ、無理に続けさせなくても、本人の考えに任せてもいいんでしょうか。

瀧 そうですね。そしてやめるときには、もう一つの考え方もあります。私たちは運動でも芸術でも勉強でも、何かに取り組むと必ずスムーズに上達の階段を上れるわけではなくて、成長が停滞する踊り場の時期がありますよね。ものごとに取り組むには、何をやってもうまくいかない大変な時期があって、それを乗り越えるともっと楽しくなる時期もあるよ、という事実は親として伝えるべきかな、と思います。
可能であれば、ほかにやりたいことを見つけてやめる形になると、子どもに失敗体験を作らせない方法だと思います。

加藤 失敗体験を作らせない、というのはどういうことですか?

瀧 もちろん失敗することは悪いことではないですが、それによって次にチャレンジする気持ちを奪ってしまうのは避けたいところです。「せっかくここまでやってやめるなんてもったいない」「もっと頑張ればいいのに」と、意志が弱いとか根性がない、と言いたくなる親の気持ちはよくわかります。それはぐっとこらえて「ここまで頑張ったことはすばらしいよ」「ほかにやりたいことにチャレンジしてみようか」と前向きな声かけをする方が、子どもの向上心をより伸ばすことができると思います。子どもが何かにチャレンジして、それが1カ月でも3カ月でも頑張ったことは、それだけで素晴らしいことだからです。

加藤 子どもの様子を見ていると「あれやったら絶対失敗するな〜」とわかることもありますが、そういうときは手を出さずに失敗させてもいいんですか?

瀧 そう思います。命を失う、大けがをするなどのような本当に重大なこと以外のことは、世の中には失敗はほとんどないんだと思います。そのときは失敗と思うことでも、それが将来的にポジティブにつながっていけばいいと思うんです。たとえば牛乳をコップに注ぐのをこぼしてしまったとしても、「自分でここまで入れられたね」「こぼれた牛乳をふけたね」などと声をかけてあげれば「次はこぼさないようにやってみよう」と考えられるでしょう。

努力をほめることが、子どものやる気につながる

加藤 最近、子どものやる気を伸ばすには、結果をほめるより努力をほめてあげたほうがいいと聞きます。子どもにしょっちゅう「見てみて」と言われて、毎回「こんなところがいいね〜」とほめるのも難しいというか・・・。

瀧 ほめることは脳の発達にも非常にいいことはわかっています。ほめ方には2種類あって、結果をほめるか努力をほめるか。たとえば「テストで100点をとってすごいね」とほめると、80点や70点はすごくないと感じてしまう、つまり努力して高みをめざすのでなく、自分ができる範囲の100点をめざしたくなる。一方で「毎日練習したから逆上がりができるようになったね」と努力をほめると、「努力を続けることが素晴らしい」とわかり、さらに子どものやる気を伸ばすことにつながります。
結果をほめることももちろん素晴らしいですが、そこに至る過程をほめてあげることは、自分を見てくれていたんだ、という安心感とうれしさもありますよね。

加藤 結果が出ていなくても、少しでも努力が見えたらほめてもいいんですか?

瀧 もちろんです。将来どんな職業に就くにしても、働くことは努力を続ける毎日ですよね。早く起きたことでも、朝顔の世話でも、ピアノの練習でもなんでもいいんです。子どもが取り組んでいることを認めてあげることが大事だと思います。

加藤 では、子どもの脳の成長のためにしてはいけないこと、気をつけたほうがいいことはどんなことでしょうか。

瀧 虐待などはもってのほかですが、やはりよくないのは無関心です。先ほど子どもをほめる話がありましたが、子どもに関心を持って見つめるからこそ努力をほめられるわけですし、子どもも自分を認めてもらえることにコミュニケーションの温かみを感じます。ほめて自己肯定感を高めることがいいとはよく聞くと思いますが、悪いことをしたときにしかるのも子どもをしっかり見ているからこそ。普段しっかり愛情をかけてあげれば、社会的なルールを破ったときなどに向き合って目を見てしかることも大切だと思います。

コロナ禍のマスク生活で、子どもたちの成長への影響が心配・・・

加藤 コロナ禍のマスク生活ももう3年ほどになりますが、子どもたちがずっとマスクをつけていることでの成長への影響が気になっています。保育園でも先生の口の動きが見えないことが心配ですし、長男はマスクで息苦しくて授業に集中できないので、鼻だけ出させてもらっています。このことは先生はどう思われますか?

瀧 心配なのは、子どもの感情理解や表情理解の面ですね。人は、会話をして気持ちを理解し合うときには、言葉よりも表情やジェスチャーなど言葉以外の情報が多いといわれています。子どもたちが相手の気持ちを理解して適切な行動をとる共感性を育てるためには、表情や感情の理解はとても大事です。一方で、日本の社会的な情勢として、マスクをつけないという選択肢が社会的に受け入れられづらい状況もあると思いますから、自宅や屋外などマスクをしなくていい場所で、多くのコミュニケーションを心がけるしかないのかな、と思います。

マスクをし続けることでの子どもたちへの影響については、今いろいろと研究されているので、これから徐々にわかってくると思います。

ただ、脳には「可塑性」といって変化をする力があることは覚えておくべきです。この期間にできなかったことを将来取り返せないかというとそんなことは決してありません。
習いごとを例にとると、楽器や英会話の習いごとを始めるには3〜5歳ごろからやると効果が高いといわれていますが、それは費用対効果がいいということで、30歳からでも80歳からでも、何歳でも何かを始めて練習すれば時間はかかっても成果は出ます。だから、子どもたちがコロナ禍で経験が少なかったとしても、今後、いろんな経験をすることで取り戻せると考えるといいのかなと思います。

加藤 1日も早く、子どもたちがコロナ前のようにマスクを外して、のびのびと過ごせるようになることを祈っています。

お話/加藤貴子さん、瀧靖之先生 監修/瀧靖之先生 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

子どもとのかかわりかた、これでいいのかな?と迷っていたことも、脳科学の視点から考えると答えのヒントが見つかるのではないでしょうか。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。

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