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ついに研究データが発表。乳児期のパパの育児参加と、思春期の子どものメンタルヘルスに関係あり。産後パパ育休の後押しに【専門家】

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赤ん坊と楽しむ若いアジア人の父親
●写真はイメージです
itakayuki/gettyimages

国立成育医療研究センターの研究グループが、2001年~2017年に行った調査・分析による乳児期の父親の育児参加と思春期のメンタルヘルスの関連性について発表しました。赤ちゃんのころにパパが育児に積極的にかかわることが、子どもが思春期を迎えたときのメンタルヘルスの不調の予防につながる可能性があるというのです。この調査・分析を行った社会医学研究部 行動科学研究室 室長の加藤承彦先生に、乳幼児期のパパ育児のこと、パパ以外の人の育児へのかかわりについて聞きました。

6カ月時点でパパの育児参加が多いグループは、16歳時点でのメンタルヘルスの不調リスクが低い傾向に

加藤先生たち研究グループが行った調査は、2001年に生まれた日本全国の1万8510人の子どもを対象に、パパの育児と子どものメンタルヘルスについて追跡するというものです。子どもが6カ月から16歳になるまで、年1回質問に答えてもらう形式で行い、子どもが6カ月の第1回調査、1歳6カ月の第2回調査、2歳6カ月の第3回調査でパパの育児参加について質問し、第1回と第2回は、以下の6項目について聞きました。

1 食事の世話をする
2 おむつを取り替える
3 入浴させる
4 寝かしつける
5 家の中で相手をする
6 散歩など外に連れて行く

それぞれ
「いつもする・3点」「ときどきする・2点」「ほとんどしない・1点」「まったくしない・0点」
の4択とし、各点数(0~3点)×6項目の合計点(0~18点)により、四つのグループに分けました。

グループ1:0~8点⇒最も少ない群
グループ2:9~11点
グループ3:12点
グループ4:13~18点⇒最も多い群

「また、子どもが16歳になったときのメンタルヘルスの評価は、日本語版『WHO-5精神的健康状態表』で行い、子ども本人に答えてもらいました」(加藤先生)

「WHO-5 精神的健康状態表」
最近2週間、私は・・・
1 明るく、楽しい気分で過ごした
2 落ち着いた、リラックスした気分で過ごした
3 意欲的で、活動的に過ごした
4 ぐっすりと休め、気持ちよくめざめた
5 日常生活の中に、興味のあることがたくさんあった

それぞれ
「いつも・5点」「ほとんどいつも・4点」「半分以上の期間を・3点」「半分以下の期間を・2点」「ほんのたまに・1点」「まったくない・0点」
の5択とし、合計点(0~25点)が高いほどメンタルヘルスが良好であることを示しています。

「今回は、6カ月のときのパパの育児の度合いと、子どもが16歳の時点でのメンタルヘルスの不調のリスクに焦点を当てて分析しました。その結果、6カ月時点でパパの育児参加が最も多かった『グループ4』は、最も少なかった『グループ1』と比べて、子どもが16歳時点でのメンタルヘルスの不調のリスクが相対的に10%低い、という結果になりました」(加藤先生)

乳児時から父子のきずなを深めていくと、思春期の子どもとの関係も良好に

近年、子どものメンタルヘルスの不調が問題視されています。成育医療研究センターが行った「2021年度新型コロナウイルス感染症流行における親子の生活と健康への影響に関する実態調査」では、小学5~6年生の9~13%、中学生の13~22%に中等度以上の抑うつ症状(※)が見られました。

パパが乳児期に育児に積極的にかかわることが、思春期の子どものメンタルヘルスにいい影響を与えるのはうれしいことですが、乳児期のかかわりが思春期に影響するのはなぜでしょうか。

「子どもが6カ月時点と16歳時点の間に何が起きているのかについては今後の研究課題なので、あくまでも推測ですが、乳児期に積極的に子どもとかかわったパパは、それ以降も子どもをしっかり見守るようになり、父子のきずなが深まることが考えられます。その結果、思春期までに良好な親子関係を築くことができ、思春期に発生する悩みや苦しみなどを、子どもが相談しやすくなるのではないでしょうか。

また、富山大学の研究グループは、乳児を育てる父親の育児行動の頻度が高い集団では、心理的苦痛を感じる母親が少ないということを「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」で明らかにしています。このことからも、パパが積極的に育児に参加してママのメンタルヘルスがいい状態にあると、それが子どものメンタルヘルスにいい影響を与えることも十分に考えられます」(加藤先生)

※抑うつ症状/「気分が落ち込む」「何もする気になれない」などの心の状態が強くなり、心身にさまざまな症状が現れるようになること。

ママをサポートしてくれる人であれば、パパ以外の人でも同様の効果が・・・?

パパが単身赴任をしている家庭やシングルマザーの家庭など、パパの育児参加が難しい家庭も少なくありません。パパでなくても、ママ以外に子どものことを見守ってくれる人がいれば、子どものメンタルヘルスを高めることができるでしょうか。

「今回の調査・研究は、パパがいる家庭を対象にして行ったので、パパ以外の大人がかかわったときの子どものメンタルヘルスについては未調査です。今後の検討課題にしたいと考えています。

しかし以前、私たち研究グループがシングルマザーのメンタルヘルスについて調査したところ、両親と同居している人のほうがメンタルヘルスの状態がいいという結果が出ました。
先ほどもお話ししたように、ママのメンタルヘルスの状態は子どもに影響を与えますから、ママがいろいろ相談できたり、育児を助けてもらえたりする人で、子どもともしっかりかかわってくれる人、たとえばおじいちゃん・おばあちゃんや保育士さんなどがいることで、孤立した状態での育児を避けられ、それが子どものメンタルヘルスにもいい影響を与える可能性があると考えられます」(加藤先生)

最初からハードルを上げず、無理なく子どもとかかわれることから始めよう

パパのお世話のしかたや子どもとのかかわり方にママが不満を持っている場合は、逆効果になってしまうようなことはあるでしょうか。

「以前は、パパは育児にかかわらない、もしくは、かかわれないのが一般的でしたが、徐々にパパも育児にかかわる社会に日本は移行しつつあります。
しかし、パパも育児にかかわることで、ママから見たら方法や考え方が違うことで、じれったくなることもあるかもしれません。最初にハードルを上げると、育児に対するパパの意欲をそぐことにもなりかねません。2人で協働して育児に取り組むことに意味があると思って、要領よくお世話できる方法や、子どもが喜ぶかかわり方のポイントなどを一緒に探していくと、パパの育児の質も自然と高まっていくのではないでしょうか」(加藤先生)

パパの育児参加を促すには、夫婦でよく話し合うことが大切ということですね。

「そのとおりです。夫婦とはいえ、育児に対する考え方が最初から一致してるとは限りませんし、仕事・家事・育児の分業をどのようするかは、家庭によって千差万別。子どもが小さいうちからよく話し合ってください。時にはけんかをしながらも、力を合わせて子どもを育てていくことで夫婦のきずなが深まり、子どもが安心して過ごせる家庭が作られていくのだと思います」(加藤先生)

産後パパ育休など、パパの育児参加を社会全体が奨励するようになってきました。子どもの将来のメンタルヘルスの向上という面からも、男性育休はもっと重視されるべきでしょうか。

「育休を取得して、生まれたばかりの子どもとかかわることで、育児の大変さに気づくことは大切です。しかし、育休は期間限定なので、その期間だけ熱心に育児をしても、その後はすべてママ任せになってしまっては、子どものメンタルヘルスの向上にはつながらないかもしれません。育休が終わっても、父親が子どもにかかわり続けられる社会環境を、みんなで作っていく必要があります」(加藤先生)

お話・監修/加藤承彦先生

取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

赤ちゃん時代のパパの育児が、思春期を迎えた子どものメンタルヘルス不調のリスクに影響する可能性があることが広く認知されれば、パパがもっと育児をしやすい社会に変わっていくかもしれません。

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