突然の妻の死でシングルファザーに。「ママは写真だけになってしもうた」という息子の言葉にとまどいも【体験談】
りゅーすけさん(42歳)は、39歳のときに突然妻えいこさんを亡くし、シングルファザーとなりました。現在香川県で5歳になる息子のそうまくんと暮らし、YouTube「【シングルファザー】りゅーちゃんねる」に一人息子との日常をつづっています。そうまくんにえいこさんのことをどのように伝えたのか、2人の生活の様子などについて話を聞きました。
「ママは写真だけになってしまった」との息子の言葉
――妻のえいこさんは、そうまくんが2歳のころに原因不明で突然意識不明となり、亡くなったそうです。そうまくんにはママのことをどんなふうに話していますか?
りゅーすけさん(以下敬称略) どうやって話したらいいのか、あんまりよくわからないんです。妻には姉が2人いますが、息子は2人のことをそれぞれ「ママ」と呼んでいたりして、ママがどういうものかをわかってるのかどうかはっきりしません・・・。めいっ子と息子が会話をしているのを聞いていると、「そうまのママは写真だけになってしもうたからな」とか、さらっと言うこともあるんです。でも、彼が死を理解しているのかどうかはわかりません。
今のところ息子には、お墓参りに行ったときに「ママはこのお墓の中にいるよ」とか、「ママはその辺でそうまのことを見ているんじゃない」という感じで話しています。息子が妻の写真に話しかけたり、お墓にお菓子を持っていって「これ、食べてな」と言ったりするときには、僕が裏声を使ってママの声で返事をしています。彼は僕がしゃべるのを待っている節がありますが・・・、「それパパでしょ、もういいよ」と言われるまで続けたいと思っています。
義父母の協力に助けてもらいながらの子育て
――現在のそうまくんとの生活の様子について教えてください。
りゅーすけ 僕たちの自宅は妻の実家の敷地内にあるので、義父母にとても助けてもらっています。
平日は朝6時半ごろに起きて自分の身支度をし、7時20分ぐらいに寝たままの息子を実家に連れて行って義父母に預けて出勤します。保育園の送迎は義父母にお願いしています。僕の仕事が終わって帰宅するのが18時過ぎぐらい。妻の実家で義母が作ってくれた夕食を子どもと一緒に食べてしばらくゆっくりして、自宅に戻るのが20時くらい。平日のうち2日は実家ではなく、僕が自宅で夕食を作っています。
そのあと息子とおふろに入ったり、ひらがなの練習をしたりして、22時に寝かしつけます。息子が寝てから深夜1時くらいまでパソコンで動画編集などをやっているような毎日です。
――YouTubeでは手際よく料理するシーンも投稿されていますが、もともと家事は得意ですか?
りゅーすけ 結婚前から料理するのは好きでした。僕の両親も共働きで忙しかったので夕食作りを手伝うようになり、自分でいろいろ作るようになりました。結婚してからも、おふろ掃除や洗濯などもやっていたので、シングルファザーになってからとくに家事が大変だったことはありません。
息子との時間を増やすために転職を
――仕事と子育ての両立で大変なことはありますか?
りゅーすけ 妻が亡くなった当時はハウスメーカーの営業をしていたんですが、事務所が自宅から片道1時間くらいの場所にあり平日の帰宅は21時ごろ、土日が仕事になることも多かったので、息子との時間を増やすために、今の医療事務の仕事に転職しました。自分のやりがいや収入よりも、まず第一に息子と一緒に過ごす時間を増やしたかったんです。
今は、仕事と子育ての両立はまったく大変と思っていないです。というのも、すぐ隣にいる義父母が息子の面倒を見てくれていますし、よく遊びに来る妻の2番目の姉とめいっ子たちも息子とたくさん遊んでくれるので助かっています。今の職場では残業をしないようにしていますし、子どもの急な体調不良でも休める環境です。
――自分1人でリフレッシュしたいな、と思うことはありますか?
りゅーすけ 僕は1人で過ごしたいと思うことがあんまりないんです。趣味もないし、やってみたいこともないし・・・。子どもと一緒に、たわいないことでゲラゲラ笑うのがいちばんリフレッシュになっています。仕事が平日に休みのことがあるんですが、子どもが保育園に行ってるときにも、結局家で掃除をしたり、ダラダラ過ごしたりしています。
子育てで心配なことは・・・
――子育てで気になることや心配なことはありますか?
りゅーすけ 最近、息子がYouTube動画ばかり見るようになってしまっていることや、もう少し勉強をさせたほうがいいのかなということが気になっています。夕食のあとに一緒にひらがなや簡単な足し算の練習をしていますが、ひらがなはまだ見本を見ながらじゃないと書けないので、ちょっとだけ心配しています。世間一般的に5歳の子がどのくらい字がかけるか、足し算ができるか、アルファベットがかけるかがわからないので、なんとも言えないのですが・・・。もう少し小さいときからやらせてあげたほうがよかったのかもしれない、とは少し思っています。
あとは、僕の姿が見えなくなるととても不安がることがあります。何も言わずに部屋を出るとすぐ追いかけてきて「何も言わんとどこかに行かないで」と怒られます。玄関を開けて2〜3歩のところだとしても「ちょっとゴミ捨て行ってくるわ」「車に何か取りに行ってくるわ」と、必ず声をかけるようにしています。
――息子さんの子育てで迷ったときにだれに相談していますか?
りゅーすけ 妻の2番目の姉が看護師なので、ちょっと子どもが風邪をひいたり熱を出したときにはすぐ電話して相談します。義母も元看護師なので、気になることを相談して「これくらいなら大丈夫」と言ってもらえると安心するし、すごく助かってます。
人を大切にできる優しい子に育ってほしい
――当初は息子さんとの生活の記録用にYouTubeチャンネルを開設したそうですが、今はりゅーすけさんにとってどんな意味がありますか?
りゅーすけ 本当に単なる育児記録のつもりで始めました。するとアップしてわずか2週間ぐらいで義姉とめいっ子に見つかり、義姉を通して義父母も見てくれるようになりました。僕からはとくに伝えてはいないのですが・・・。動画を見た義父母は、「鉄棒が上手にできたんだね」「自分でおふろ掃除したなんてすごいね」と息子に声をかけてくれているようです。
今も息子の成長記録というのは変わりません。が、なぜか見てくれる人が増え、僕たちのできごとがWEB漫画化され、それが本にもなって・・・妻が亡くなった当時の思いをつづった映像や本が、こんなに多くの人に見てもらえるとは思いもよりませんでした。僕は人としゃべるのが苦手だし、動画の文章を考えるのにも時間がかかるんですが、今は僕たちの日常を見てくれる人が笑ってくれることを励みにしています。
――そうまくんには、これからどんなふうに育ってほしいと思いますか?
りゅーすけ 周囲の人たちに助けられながら、息子は元気に育っています。このまま元気で、周囲の人を大切にできる優しい子に育ってくれれば、もうそれだけで十分です。
お話・写真提供/りゅーすけさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
突然シングルファザーとなったりゅーすけさんですが、妻のえいこさんの家族にも支えられ、みんなで息子のそうまくんをあたたかく見守りながら育てています。
「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。
『私がシングルファザーになった日』
ある日突然大切な人を失い、シングルファーザーになったりゅーすけさんの苦悩や後悔、のこされた幼い息子との日々を描いた実話コミックエッセイ。りゅーちゃんねる・きむらかずよ著/1210 円(KADOKAWA)