SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 二男が生後1カ月のときにダウン症と診断され、頭が真っ白に。「ダウン症は得体の知れない怖いものだと思っていた」育ててみてわかったこと【対談 奥山佳恵・加藤貴子】

二男が生後1カ月のときにダウン症と診断され、頭が真っ白に。「ダウン症は得体の知れない怖いものだと思っていた」育ててみてわかったこと【対談 奥山佳恵・加藤貴子】

更新

お互い「佳恵ちゃん」「貴ちゃん」と呼び合う、仲よしの奥山さんと加藤さん。

加藤貴子さんは、44歳で第1子、46歳で第2子を出産。奥山佳恵さんは28歳で第1子、37歳で第2子を出産していて、二男・美良生くんのダウン症を公表しています。ダウン症は染色体の突然変異による先天性疾患で、運動発達の遅れや軽度の知的障害、特徴的な顔つきなどを示すといわれます。家族ぐるみでの付き合いがあり、おたがいの家を訪問しあうほど気が合う2人。美良生くんと加藤さんの2人の息子も仲よく遊んでいると言います。奥山さんと加藤さんに子育てについて聞きました。

ダウン症を得体の知れないモンスターだと恐れていた

「長男の子育てのほうがずっと大変だった」と笑顔で話す奥山さん。

――奥山さんの第2子の美良生くんは、生後1カ月のときにダウン症だとわかったそうです。当時のことを教えてください。

加藤さん(以下敬称略) うちの長男と二男は3歳差だけど、佳恵ちゃんは二男の美良生くんが生まれたとき、長男の空良くんは10歳くらいだったよね。

奥山さん(以下敬称略) そう。長男の子育てのときに育児ノイローゼになる手前まで煮詰まってしまって、夫の提案で環境を変えようと神奈川県藤沢市へ移住したんだけど、藤沢では長男の保育園で友だちができて、地域の人とのネットワークを作ることができて、周囲の人に助けられながら長男の育児をすることができるようになりました。それでしばらくして2人目がほしいな〜と考えるようになったころに、二男がやってきてくれました。

二男の妊娠中はとくになんの問題もなく妊娠経過も順調、赤ちゃんも健康と言われていたので自宅出産をしました。でもその後、母乳を飲む力が弱かったことや心臓に穴が空いていたことなどから「こども医療センター」で検査を受けることに。その検査の結果は10日後ぐらいにわかったのですが、「ダウン症」という診断でした。それが生後1カ月を過ぎたころのことでした。検査をしてから結果を聞くまで、ネットで「ダウン症」の検索ばかりして、不安が募りました。

初めに「ダウン症」という検査結果を聞いた直後は、サーッと血の気が引いて頭の中が真っ白になったことを覚えています。「ダウン症」がどんなものかよくわからないから怖かったし、家の中をめちゃめちゃにするモンスターがやってくるようなイメージがありました。先が見えなくて不安で「障害のある子に産んでしまった」と自分を責めてたくさん泣きました。仕事もできなくなるかもしれない、これまで関係を築いてきたママ友とも離れてしまうかも、孤独になってしまうかも、と心配ばかりでした。

でも実際に育ててみると、二男はよく寝てよく笑いよく食べる子で、なかなか寝なくて泣きやまなかった長男とまるで違いました。わが家に限って言えば、健常児である長男の育児のほうがよっぽど大変で、障害児の二男は本当に育てやすかったんです。不思議なことに、長男のときはつらくてたまらなかったはずの泣き声も、二男は愛おしいと思えました。それに10歳になっていた長男が二男の子育てを手伝ってくれる要員になってくれたのも心強かったです。

地域の人とあたたかな交流の中で一緒に子育て

「佳恵ちゃんの家に泊まった翌朝、美良生くんとお散歩をしているとすれ違う人みんな『美良生くん、おはよう!』と声をかけてくれるのに驚いた」と加藤さん。

――加藤さんはよく奥山さんの家に遊びに行くそうですが、地域の子育ての様子を見てどう感じますか?

加藤 佳恵ちゃんの家に遊びに行くと、道を歩けば近所の人たちがみんな「美良生くん、こんにちは」ってあいさつしてくれるんです。地域の人たちと一緒になって子育てしてるんだなぁって感じました。

私たち家族が住んでる地域は、コロナ禍で公園の遊具も使えなくなってしまったり、近所の保育園にも「門から出たらしゃべらないでください」って張り紙がしてあったりして、地域のかかわりがどんどん薄くなっていく感じがして寂しい気持ちになることもあるから、佳恵ちゃんの住む地域はあたたかな交流が健在でとてもいいなと思いました。

奥山 海が近い地域性もあるのかも。私も藤沢に引っ越してきた初日に地域のセンセーショナルな洗礼を受けたんです。というのも、引っ越しの日にマンションの2階にベッドを運び込む前に業者が帰ってしまう、という事件が・・・。9カ月の長男を抱え夫婦2人でどうしよう、と途方にくれていたら、マンションから数人の若者たちがわらわらと出てきてベッド搬入を手伝ってくれたんです。お礼に新居で宴会をすることになって、だれだかわからない人にビールを渡しながら「ありがとうございました、で、あなたはだれですか?」みたいな(笑)。

近所の人たちのあたたかい人柄に驚き、助けられたできごとでした。それに、藤沢に住み始めてから初めて帽子をかぶらずに外出することができるようにもなりました。その前までは芸能界のお仕事をしているから、と人目が気になっていたんです。
ここなら私は私らしく生きていていいんだ、芸能人の私でいなくていいんだ、と思えて、すごく住みやすい環境に感じました。やがて長男の保育園でのお友達もできて、地域のつながりができて、周囲の人たちに助けられながら一緒に子育てをしてこられたと思います。

美良生くんがいるからわかること

「みんなが美良生くんを知っているから、親の目が届かなくても地域の人が見てくれているよね」(加藤さん)、「本当に、地域の防犯の目がありがたいです」(奥山さん)

――奥山さんが藤沢に住んで20年。美良生くんは小学校の普通学級で学んでいるそうです。どんなふうに過ごしていますか?

奥山 美良生はこの春で小学校6年生になります。入学前にインクルーシブ教育を推奨する方々と出会い、背中を押してもらえたことがきっかけで普通学級へと通っています。

二男は小学校6年生の今、ひらがなを練習している状況で、学習面ではクラスメイトよりだいぶゆっくりしています。なぜ普通学級に通わせているかというと、ダウン症の美良生のことを知ってもらいたいからです。障害児としてではなくて、美良生という人間を見てもらうために、地域に住んでいる子どもたちと一緒に過ごさせたいと思いました。

実際入学してみたら、初日からお友だちはまるごとの二男を見て受け入れてくれました。年齢が小さいほど障がいという概念がないからか、字が書けなくてもからかう子は1人もいませんでした。「美良生くんはこういう個性だね」という感じでとらえてくれて、この5年間一緒に過ごしてくれています。

加藤 美良生くんはお友だちとはどんなふうに遊んでるの?

奥山 うちに遊びにきてくれるお友だちは、たとえば「美良生くんとドッジボールをするにはどうしたらいいかな」と二男も一緒に遊べるようにルールを変えたりして考えてくれるんです。それでみんなで汗だくになって笑いあって遊んでいる感じ。その様子を見ていると、こんなふうに二男とのつき合い方を考えてくれる子どもたちが大きくなった世の中は、きっと豊かになるんじゃないかなって思います。彼らは、困っている人に「サポートが必要かな」「どういうふうに力を貸したらいいかな」って日常的に考えてくれているから。そう思うと、私の立場でいうのはおこがましいけど、二男の存在ももしかしたらいろんな人の役に立ててるんじゃないかなって。

加藤 うちの子どもたちは、美良生くんと遊ぶときに「どうしたらいいかな?」って考えながら、いい方法が思いつかないこともあるけど、そういうときはお兄ちゃんの空良くんがみんなで遊べるようにやさしく導いてくれるよね。子どもたちは美良生くんと一緒に過ごすことで、違う個性の人とどうやって楽しく生きられるか考える力が身につくと思う。

奥山 そうだといいなぁ。日本の多くの学校は“できる”か“できない”かで普通級と支援級とが分けられているけれど、実際の世の中にはいろんな人がいてごちゃ混ぜなのだから、小学校教育の最初の段階からごちゃ混ぜであったほうがいいんじゃないかなと思っています。クラスの中にいろんな個性の子どもがいるからこその普通学級なんじゃないかなって、今は率直に思っています。

今はわが家では二男の“中学どうする問題”が勃発しています。今年の12月までに中学校は普通級に行くか支援級に行くかを決めないといけないので、それぞれの教室を見学させてもらって考えているところです。

お話/奥山佳恵さん、加藤貴子さん 撮影/山田秀隆 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

奥山さんは「私が二男のダウン症を公表し、子どもとの生活の様子を発信することで、かつての私のように障がい=不安と思っている人や、ダウン症の人たちがもっと生きやすい世の中になればいいなと思います」と笑顔で話しています。

●記事の内容は2023年4月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

奥山佳恵さん(おくやまよしえ)

PROFILE
1990年、映画の全国オーディションにてグランプリを射止め、92年主演でスクリーンデビュー。翌年日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。以降、ドラマ・バラエティー番組などで活躍。2001年結婚、翌年長男を出産。2011年には二男を出産、その後二男がダウン症候群であることが判明。現在は、2度の子育て、ダウン症の二男を迎えての家族の日々などを伝えることでダウン症への理解を深めてほしいと、TVやイベント出演、講演活動なども積極的に行っている。著書に「眠れぬ森の育児」(主婦の友社)「生きてるだけで100点満点!」(ワニブックス)がある。

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。2014年に第1子となる男児、2017年に第2子となる男児を出産。著書に自らの妊活や不妊治療についてを語った『大人の授かりBOOK~焦りをひと呼吸に変える がんばりすぎないコツ~』がある。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。