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登校しぶり、医療的ケア、息子たちのケアで仕事を続けられなくなった夫婦。「居場所を作りたい」フリースクールを立ち上げた父の思い

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オリコス フリースクール

千葉県在住の三村晋也さんと晃子さん夫婦は、長男の春人くん(8歳)と、二男の康介くん(6歳)の4人家族です。

二男の康介くんは生まれて間もないころから重症心身障害を抱えており、24時間の医療的ケアが必要なため、晃子さんは仕事を辞めました。そんな中、長男の春人くんの登校しぶりが始まり、晃子さんは毎日つき添って一緒に学校へ行くことに。晋也さんは康介くんの育児のために休職したのち、退職を決断することになりました。

そんな状況から、晋也さんは障害や不登校など課題を抱える子どもたちとその家族がともに暮らしやすい社会をめざして「フリースクールオリコス」を立ち上げました。インタビュー後編では、フリースクールを立ち上げたきっかけや、その背景にある思いを聞きました。

▼<関連記事>前編を読む

1年間の休職をきっかけにフリースクールの立ち上げを決意

休職中、康介くんの育児をする晋也さん
休職中、康介くんの育児をする晋也さん

長男の春人くんの登校しぶりにより、晃子さんがつき添い登校を始めたことから、晋也さんは弟の康介くんの育児をするため教員の仕事を1年間休職、そして退職を決断します。休職中に今後の仕事について考え、出た答えが“フリースクール”だったそう。

「転職先や家庭教師などオンラインでできる仕事を探してみたこともあったのですが、結局下の子のケアで休んだり途中抜けたりすることを考えると、どれもむずかしいなと…。

春人を学校に行かせないと家庭が成り立たないという状況を解決するために、最初はホームスクーリング(学校に通学せず、家庭で学習を行うこと)なども考えましたが、それもやはり下の子のケアがある中ではきびしいと思いました。

フリースクールを探しても、私の住む地域で通えるところがない。それじゃあ自分で立ち上げてみよう、という感じでした。自分でやれば、自分の好きな場所で好きな時間にできる。それがいちばんじゃないかと。

フリースクールを立ち上げようと決めてから、不登校についても調べていました。そのとき自分と同じように、不登校児を抱えながら思うように働けない親が多くいることを知りました。そこで、保護者のサポートもできるフリースクールをつくってみたいと思ったんです」(晋也さん)

子どもが不登校でも育児と仕事の両立を。保護者のサポートも考えたフリースクール

晋也さんが立ち上げた「フリースクールオリコス」
晋也さんが立ち上げた「フリースクールオリコス」

晋也さんはフリースクールの立ち上げを決めてから、2024年夏には「保護者向け仕事サポートつきのフリースクール」プロジェクト実現に向けたクラウドファンディングを実施。その後2024年9月に「フリースクールオリコス」を立ち上げました。構想から実際にフリースクールをオープンするまで、わずか3カ月だったそう。

「とにかく早く立ち上げたいという気持ちでした。調べていくうちに、私の住む地域でもこういった場所を必要として困っている家庭が多くあるということがわかったので。取りあえず居場所だけでも早くつくりたいというのが目標でした」(晋也さん)

またクラウドファンディングの支援や企業の協賛で実現させたのが、保護者向け仕事サポート「オリコスジョブサポート」です。オリコスジョブサポートでは、子どもが不登校でも育児と仕事の両立ができるように、フリースクール内で働くことができるよう環境を整え、仕事のスキル講座から仕事の提供、仕事のサポートまで行っているそう。

「オリコスジョブサポートの仕事内容は、おもに動画編集です。研修に1カ月ほどかかるので、研修を終えてから本格的に動画編集の仕事をしていただいています。仕事も今は協賛企業から提供していただいていますが、今後はもっと自分たちでも仕事を増やしていけるよう計画しています」(晋也さん)

子どもにも保護者にも寄り添う『自然の中で自然でいられるフリースクール』

フリースクールの活動の様子
フリースクールの活動の様子

フリースクールのオープンから約2カ月たった現在、年長から高校生までの7人の子どもたちがフリースクールを利用しています。ふだんどんな学習や活動をしているかを聞きました。

「国語や算数などいわゆる勉強という意味での学習は、ほんの少しだけです。まずは、ここに入ってくれた子どもたちの居場所をつくること。最初ここに来た不登校の子どもたちは、車から出られなかったり、ここに入ること自体に抵抗があったりする子がほとんどだったんです。新しい場所がすごく不安な中で勉強だけを進めていくというのは、なかなかできない。

オリコスでは絵を描いたり、私が読み聞かせをしたり、一緒に料理をしたり…。また、外へ出て散歩してみたり買いものをしたり、木工なんかもやっています。今は子どもたちの興味や関心の幅を広げ、社会参加の意欲を高めようとしている段階。

『自然の中で自然でいられるフリースクール』という言葉を掲げていますが、こういった体験の中から学習を広げていきたいというのが私の中にあります。今後は食育体験やステージイベントなど、不定期ですがフリースクールでイベントも開催していきたいと思っています」(晋也さん)

こうした体験学習をとおして、最初は車から出られなかったり抵抗したりした子どもたちも、今ではとてもリラックスしてフリースクールで過ごしているそう。

保護者にも居場所を

カフェの様子
カフェの様子

「毎週水曜日はカフェを開いています。どなたでも出入りできるカフェですが、多くはこのフリースクールに入っている子どもたちの保護者が利用しています。不登校の子どもの親たちは、子どもや仕事の悩みを話したくても話せる場所がなかなかない。悩み相談のような堅苦しい感じではなく、保護者の方たちが気軽になんでも話せる居場所を提供できたらと思っています。

まだまだ始まったばかりのフリースクールなので、これからもっとつくり上げていく予定。不登校の子どもたちにとっては、最低限ここに居場所があるって思ってもらえるようにしたい。あとは、やはり保護者に寄り添いたい気持ちが根底にあります。

今の社会は、子どもが不登校になることで親や家庭が社会的に不利になってしまうのが現状です。不登校でも経済的貧困や社会的不利にならない社会にするための活動ができたら。

私たちは医療的ケア児の問題だけでなく、きょうだいが学校に行けなくなって初めて、両親が共働きできるのが当たり前ではないということに気がつきました。

働き方や子育ての制度、地域の問題などいろいろなことが関係するので、すぐにはむずかしいとは思いますが、こういった複合的な家庭の問題にも対応する支援制度があったらとつねづね思います。そんな社会に少しでも近づくよう、これからも自分たちにできる活動を続けていきます」(晋也さん)

お話・写真提供/三村晋也さん 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部

自身の経験から、フリースクールを立ち上げ、子どもが不登校でも育児と仕事の両立ができる社会をめざして活動を続ける晋也さん。最後に、同じような境遇のお子さんを育てるママやパパに伝えたいことを聞くと、「生まれてきた子どもに障害があったり、医療的ケアが必要になったり、子どもが不登校になったりしたとき、やっぱりショックだしすごく落ち込むと思うんです。もちろんたいへんな日々もあるけれど、今私たちが家族で出かけたり旅行できたりするように、いずれ楽しいこともあるよというのは伝えたい。この先にいつか楽しいことがあると考えるだけでも、すこし気持ちの持ちようが変わるはず」と、話してくれました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

三村晋也さん

PROFILE
教員として10年以上勤務。
不登校の子どもへの支援をしたい思いから、フリースクールの立ち上げを決意。両親ともに働けない日々を過ごした経験から、「働けるフリースクール」フリースクールオリコスを立ち上げ、代表を務める。フリースクールをとおして、不登校の子どもを抱える家庭の仕事と育児の両立ができる社会をめざし、活動を続けている。

フリースクールオリコスのHP

スリースクールオリコスのInstagram

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年11月の情報で、現在と異なる場合があります。

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