SHOP

内祝い

  1. トップ
  2. 赤ちゃん・育児
  3. 赤ちゃんの病気・トラブル
  4. 「どうしても母子手帳を開くことができなかった…」1人のママの思いがつながって。小さく生まれた赤ちゃんのための「リトルべビーハンドブック」、全国47都道府県で実現

「どうしても母子手帳を開くことができなかった…」1人のママの思いがつながって。小さく生まれた赤ちゃんのための「リトルべビーハンドブック」、全国47都道府県で実現

更新

全国のリトルベビーハンドブック。ママたちの思いが詰まっています。

小さく生まれた赤ちゃんの発達や成長を記録するための母子健康手帳のサブブックである「リトルベビーハンドブック」が、今年度末までに全都道府県で運用されることになりました。2025年1月8日、都内で「リトルベビーハンドブック全国展開を祝う会」が行なわれました。3時間におよぶ会の内容から、静岡県のリトルベビーサークル「ポコアポコ」の代表・小林さとみさん、衆議院議員の野田聖子さん、国際母子手帳委員会事務局長の板東あけみさんの話をリポートします。

幸せだった双子の子育て。でも母子健康手帳を開けなかった

小林さんの双子の娘たちがNICUに入院していたころの様子。

小さく生まれた赤ちゃんたちは、母子健康手帳の平均的な赤ちゃんを想定した発育曲線では成長の経過が合わなかったり、成長発達に関する項目に書き込むことができなかったりすることがあります。静岡県のリトルベビーサークル「ポコアポコ」代表の小林さとみさんたちは、わが子の成長を記録したいとの思いから、2011年に初めて当事者によるリトルベビーハンドブックを作成しました。

2002年4月、予定よりも3カ月早く927gと466gの双子の女の子を出産した小林さんは、当時の育児日記のスライドを表示し「当時のことを思い出すと、どうしても涙が出てしまう」と涙ぐみながら話しました。

「小さく生まれた娘たちがゆっくりゆっくり大きくなっていく様子は本当にかわいくて幸せでした。それでも、母子健康手帳には書くことができませんでした。ほかの子と比べないように、あせらないように自分に言い聞かせて子育てをしているのに、母子健康手帳を開くと“子どもたちは普通じゃない”と評価されるような気持ちがしたからです」(小林さん)

あるとき熊本県が低出生体重児の支援でリトルエンジェル手帳を配布していることを知った小林さんたちは自分たちでもリトルベビーの成長を記録できる手帳を作ろうと決意。2010年に静岡県の助成金事業に応募し、2011年にリトルベビーハンドブックを作成。助成金の期間が終わってからもさらに必要な家族に届けるため、静岡県に相談して行政で作成することに。

「保護者目線のハンドブックを作るため、医師、保健師、県の担当者、リトルベビーのママたちなどが集まって何度も話し合い、2018年に『しずおかリトルベビーハンドブック』が発行されました。みんなの思いを込めて作ったリトルベビーハンドブックは私たちの誇りです」(小林さん)

「しずおかリトルベビーハンドブック」の完成が報道されると、ほかの県のママたちからも「自分たちも欲しい」という声が聞こえるようになりました。小林さんたちの思いに賛同した国際母子手帳委員会の板東あけみさんの協力もあり、日本各地の低出生体重児のママたちがリトルベビーサークルを立ち上げ、自治体に作成を要望する動きが広がりました。そして2024年、ついに47都道府県での作成が実現しました(※秋田県は2025年2月発行予定)。

「2023年11月、全国のリトルベビーサークルの代表たちが集まる機会を設けた際、子どもの成長過程でまだまだたりない支援があることに気づき、2023年12月に『リトルベビーサークル全国ネットワーク』を発足しました。私たちは、自分が経験したつらい思いを未来のリトルベビーママにさせないように、という共通の願いを持っています。リトルベビーとその家族が過ごしやすい社会の実現をめざして、こども家庭庁に要望書を提出するなどの活動をしています」(小林さん)

2年3カ月NICUに入院していた息子。医療的ケア児の母として

会の主催者とリトルベビーのママたち。右から2番目が板東あけみさん、中央が衆議院議員の野田聖子さん、野田さんの左隣前列が小林さとみさん。

野田聖子さんは祝う会の冒頭で、自身の子育ても振り返りながら、リトルベビーとその家族を応援する思いについて話しました。

「私自身、妊娠中に切迫早産(せっぱくそうざん)で2カ月間入院し、予定日より2週間も早く帝王切開で出産となりました。2154gで生まれた息子は病気があったためさまざまな処置をしなくてはならず、すぐにNICU(新生児集中治療室)に入院しました。だからNICUの卒業生は息子の同窓生のような感覚があります。

息子は2年3カ月入院したのち、退院できることが決まりました。医療的ケア児のため、酸素ボンベ、人工呼吸器、点滴を携えての退院。それまでの自宅が手狭になるため引っ越しをしたところ、その荷物に紛れて母子健康手帳をなくす、という失敗をおかしてしまいました」(野田さん)

野田さんは大切な母子健康手帳をなくしてしまった息子へのおわびの気持ちも含めて、母子健康手帳やリトルベビーハンドブックなどを通した妊産婦支援への思いを強くしたそうです。

「リトルベビーたちは必ずしもすくすく育つとは限りません。子どもにとって大事なのは教育を受けることですが、早く生まれたリトルベビーたちは、正産期に生まれた子どもと同じ学年に入学すると苦労することが多いです。成長がゆっくりだったり、できないこともあったりするからです。

私の息子も障害者手帳を2冊持ち、健常児と障害児とのはざまにいます。自分が子育てで孤独だったことを忘れずに、皆さんのような仲間がいることに心を強くして、ママたちが子どもたちのために頑張れる余裕のある国を作れるように取り組んでいきたいです」(野田さん)

47都道府県でできたから終わりではない

会に参加した各地のリトルベビーサークル代表者たち。

2011年に小林さんたちが作ったリトルベビーハンドブックに出会い、感銘を受けた板東さんは、「このすばらしい手帳を全国に広めるべきだ」と、全国各地のリトルベビーサークルとともに各県の行政に働きかけ、リトルベビーハンドブック作成に協力してきました。

「私が2011年ごろに初めてリトルベビーハンドブックを見て非常に感動したのは、成長発達についての項目に『はい』か『いいえ』で答える形ではなく、『あなたのお子さんが○○をできたのはいつですか』という書き方になっていることです。わが子の成長の小さな変化を見つけて、子育てを喜びにする1つのツールになります。
また、多くのリトルベビーハンドブックには、先輩ママ・パパのコメントが記載されているので、安心感や成長への期待感を得ることができます」(板東さん)

2025年2月発行予定の秋田県を最後に、47都道府県すべてで作成されることとなりましたが、板東さんは「リトルベビーハンドブックは作って終わりではない」と言います。

「リトルベビーハンドブックは成長の記録であると同時に、リトルベビーと家族が医療機関や相談機関にかかったときに、これまでに受けた治療や健康状態など医療記録の共有に役立つツールでもあります。現在、NICUのある医療機関や、市町村の母子保健担当課などで配布されていますが、今後も、各県の配布状況の確認や、改訂版の作成、関係機関への紹介と講習会などが必要です」(板東さん)

そして、リトルベビーとその家族にかかわる課題のひとつとして「リトルベビーのママが外出先の授乳室で搾乳しにくい」ことをあげました。

「入院しているリトルベビーのママたちは数時間おきに搾乳する必要があります。リトルベビーのきょうだいを連れて大型商業施設に出かけたときなどに、搾乳したくても授乳室を使いにくいという声が多く聞かれます。『赤ちゃん連れでないと入りにくい』『個室で電動搾乳機を使う音が不審に思われる』と気おくれするママたちは、トイレや駐車場の車内で搾乳しています。

授乳室の表示の横にひと言『搾乳もできます』と表示してもらえると、それだけで搾乳が必要な人も使いやすくなるのです。こまかいことですが、ママたちにとっては大事なこと。今、いくつかの自治体や大型商業施設が関心を持って協力してくれていますが、今後も協力者が増えてくれることを願います。みなさんそれぞれの立場で、リトルベビーとその家族にどんな協力ができるかを考えていただきたいと思います」(板東さん)

祝う会では、このほかにリトルベビーハンドブックの作成にかかわった医師や保健師の発表や、こども家庭庁や各自治体が行っている支援についても発表がありました。

表紙の多くはリトルベビーママたちの自作イラスト

リトルベビーハンドブックの表紙イラストは、ほとんどがサークルのママたちの自作なのだとか。地域の特色あるシンボルなども描かれています。祝う会では板東さんが各地域のハンドブックの紹介をしてくれました。

北海道・東北地方のリトルベビーハンドブック

「福島県(左下)の表紙には郷土玩具で子どもの魔よけ“赤べこ”が、山形県(下左から2冊目)は県花のべにばなが描かれています」(板東さん)

関東地方のリトルベビーハンドブック

「東京都(左上)のNICU退院手帳は改訂版を作成中です」(板東さん)

中部地方のリトルベビーハンドブック

「福井県(左上)は恐竜のイラストが描かれています。手帳のタイトルも各自治体やサークルの思いがこもっています」(板東さん)

近畿地方のリトルベビーハンドブック

「奈良県(左下)はシカのイラストが。滋賀県(右上)はサークルで子どもたちが色水遊びをした紙をベースに作っています」(板東さん)

中国・四国地方のリトルベビーハンドブック

「香川県(下右から3冊目)の表紙にはうどんが描かれていてユニークです」(板東さん)

九州地方のリトルベビーハンドブック

「佐賀県(上中央)は熱気球、沖縄県(左下)はシーサーなど、地域色豊かな表紙になっています」(板東さん)

取材協力・写真提供/特定非営利活動法人 HANDS、板東あけみさん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

祝う会では、日本各地のリトルベビーママたちや、赤ちゃんと家族を応援する医師や保健師、行政担当者などのスピーチがありました。子どもの成長を願う家族、それを応援する人たちの熱い思いにあふれた会となりました。
会ではリトルベビーサークル全国ネットワークが作成した動画も発表されました。日本各地のリトルベビーサークルに参加するママたちの思いが約5分にまとめられています。

LBH完成お祝いビデオ

●記事の内容は2025年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

赤ちゃん・育児の人気記事ランキング
関連記事
赤ちゃん・育児の人気テーマ
新着記事
ABJマーク 11091000

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第11091000号)です。 ABJマークの詳細、ABJマークを掲示しているサービスの一覧はこちら→ https://aebs.or.jp/

本サイトに掲載されている記事・写真・イラスト等のコンテンツの無断転載を禁じます。