授乳中に手をニギニギするのはなぜ? 赤ちゃんの不思議なしぐさのワケ
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赤ちゃんが時々、不思議なしぐさをすることはありませんか? 実は、そのしぐさにもちゃんと理由があるのです。東京大学大学院の教授であり、長年、発達心理学を研究している遠藤利彦先生に赤ちゃんの不思議なしぐさ、行動のワケを聞きました。
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0~5ケ月ごろの不思議なしぐさ
生まれたばかりの新生児期から5ヶ月ごろ、こんなしぐさや様子を見かけたことはありませんか?
足の裏を床につけると歩く動作をする
赤ちゃんの首や体に負担がないようわきのしたを支え、足の裏を床につけようとすると、まるで歩いているかのようなしぐさをします。まだ生まれたばかりの赤ちゃんに、どうしてこのような動きができるのでしょうか?
「これは『自動歩行』という原始反射の一つで、2、3ケ月たつと消えてしまうもの。原始反射とは、生まれたときから備わった運動反応で、赤ちゃんの意思とは関係なく反射的に起こる動作のことです。実際に歩き始めるときは、赤ちゃん自身が「歩きたい!」という気持ちを持つようになり、意識的に歩行という運動を行おうとします」(遠藤先生)
両腕を上に伸ばして寝る
赤ちゃんが、バンザイの姿勢で寝ている姿はよく目にしますが、何か理由があるのでしょうか?
「ママのおなかの中では丸まった体勢でしたが、生まれると同時に体を伸ばせるようになります。両手を広げて寝るのは、丸まった体勢から解き放たれたから。がに股でバンザイというポーズは赤ちゃんによくある自然な姿勢です。バンザイをしていると手が布団の外に出てしまい、寒いのではと心配になるママ・パパも多いのでは? でも、赤ちゃんは手のひらや足の裏で体温調節をしています。ミトンなどを使うと体温がこもってしまうことも。赤ちゃんの好きな体制で寝かせてあげましょう」
6~11ケ月ごろの不思議なしぐさ
6ヶ月から1歳までの間には、こんなしぐさが見られることも。
授乳中に手をニギニギする
授乳をしているとき、赤ちゃんが手を握ったり開いたり、グーパーを繰り返していることがあります。落ち着いて授乳できているのか、心配になります…。
「これには、さまざまな理由がありそうです。授乳中、手持ちぶさたになったので動かしているだけだったり、心が落ち着くようニギニギしていたり、今の環境が快適だと握るクセがあったりと赤ちゃんによって理由は異なります。ただこの行動から、人間は赤ちゃんのころから自分の体を使って感情を調節している、ということがわかります。ニギニギしているからと、心配する必要はまったくありません」
1~1歳6ケ月ごろの不思議な行動
1歳を過ぎると、行動にこんな変化が見られることも。
落ち着かず、ひたすら歩き回っている
歩けるようになると、ずーっと動いている印象の赤ちゃん。なぜここまで歩き回るのでしょうか?
「自分の足で歩けるようになったことが、楽しくてしかたがないのでしょう。よちよち歩きを始めると、赤ちゃんは1日にサッカーのグラウンド数周分を歩いているという研究結果もあります。落ち着きがないことに対して、発達障がいを心配するママもいますが、過剰な心配はNG。ママが過敏になりすぎると、赤ちゃんとのかかわりにも変化が起こり、その子が持つ能力を最大限引き出すことができなくなってしまいます。
まわりにいる赤ちゃんや育児書に書かれていることを気にしすぎず、わが子のペースで成長を見守りましょう」
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大人からすると不思議に感じる行動にも、意味があるんですね。今しか見ることのできないしぐさをママやパパはやさしく見守りましょう。
『ひよこクラブ』2018年8月号では、「一点を見つめ、ほほ笑んでいるのはなぜ?」「どうして飛行機のようなポーズをするの?」など、ほかにも赤ちゃんのしぐさのワケを紹介しています。ぜひチェックしてみて♪(取材・文/ひよこクラブ編集部)
■監修/遠藤利彦先生
東京大学大学院教育学研究科・教授。発達心理を専門とし、発達メカニズムや子どもの生育環境を研究する発育保育実践政策学センターの副センター長も務めています。
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