どうやったらできる?おうちでカンタンひらがな練習法
古今東西、読み書きの練習法はさまざまありますが、おうちでひらがなを練習する、いい方法はないのでしょうか。それも子どもに無理をさせず、遊びの延長で楽しくできれば言うことなし! 乳幼児の発達に詳しい白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子先生(発達心理学)に、ひらがなの練習法を教えていただきました。
なぐり書きから徐々に興味を持たせていく
読み書きのいい練習法があれば教えてください。
まずは書くことに興味を持つことが大切です。そういう意味では、まだ文字を書けない段階でのいたずら書きというのも、子どもには貴重な経験です。2歳ごろから、「錯画(さくが)」といって、なぐり書きができるようになります。このころはまだ、円を描くにもぐるぐるとなぐり書きしかできませんが、3歳くらいからは閉じた円を描けるようになります。これができるかどうかは、手首の運動の発達によります。また、同じく3歳くらいから、絵と文字の区別がつくようになり、4歳くらいになると「疑似文字」を書くようになります。文字ではないけれど、文字のようなものです。
ひらがなはどのように覚えていきますか?
4歳くらいになると、「音韻認識」ができるようになります。音韻認識とは、りんごなら、「り」と「ん」と「ご」に言葉を分解して認識することをいいます。これができるようになると、一気にひらがなを覚えることが多いようです。今の日本には文字があふれているので、幼児でも生活の中で自然にひらがなを覚えていきます。ただし、覚えられなくても困ることはありません。幼児は文字ではなく、話し言葉で生活しているからです。
教えなくてもひらがなを書けるようになりますか?
「今日はおばあちゃんとお買い物に行って楽しかった」といった話し言葉は、一定の感情があれば話せます。しかし文字は、系統的な教育を受けないとなかなか書けるようになりません。幼児期は音で言葉を覚えるので、ライオンのことを「ダイオン」と間違えて覚えているようなこともよくあります。小学校で正しい文字教育を受けることで「ダイオンじゃなくてライオンだったのか」と気づくようになります。
小学校で文字教育を受けるまでに、家でやっておくといいことはありますか?
ママやパパとのお手紙ごっこ、七夕の短冊遊びなども、文字に興味を持ついい経験になります。最初はママやパパが手伝ってあげてもいいでしょう。また、不思議なもので、小学校に入ってから文字で自分の伝えたいことを上手に書けるかどうかは、幼児期にしゃべったり聞いたりする経験をどれだけしてきたかということが関係してきます。経験を語ることが書き言葉につながるので、伝えたいことがないと何も書けないのです。「今日、何あった?」、「楽しかった?」と聞いてあげて、親子での会話を重ねていくことが書き言葉につながっていきます。
書けるようになるために話すことが大切だという話は、少し意外ですよね。文字に興味関心を持たせるために、手紙ごっこや短冊などの遊びを取り入れる。そして就学後の豊かな表現力につなげるために、親子の会話を増やす。この2つのポイントを押さえておきたいところです。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
秦野悦子先生
白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻、人間総合学部発達心理学科教授(学科長)、発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援が専門。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)など著書多数。