しつけはいつから? 何を? どう伝える?
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子どもは好奇心のかたまりなので、時にはやってはいけないことをやってしまったりするものです。最初は危険なこと、他人に迷惑なことが何かがわからないため、親がやっていいこととダメなことを教える必要があります。とはいえ、いわゆる「しつけ」は、いつから、何を始めればいいのでしょうか。そして、子どもにどう伝えればいいのでしょう。しつけの始めどきやポイントを、子どもの社会性の発達に詳しい白百合女子大学人間総合学部の秦野悦子先生(発達心理学)に聞きました。
大人の言うことがわかり始めたらしつけどき
――そもそも、子どものしつけはなぜ必要なのでしょうか?
秦野先生:生まれてからずっと親と一緒に過ごしてきた子どもも、いずれ保育園や幼稚園など家の外の世界で過ごすようになり、年齢とともに親と離れて生活する時間が長くなります。そこでは子どもも社会に出る一人の人間。生活習慣や社会のルールを身につけて、自分のことは自分でできるようになっておく必要があります。
――しつけは何歳からスタートすればいいですか?
秦野先生:1人1人スタートのタイミングが異なるので、いつと決まっているものではありませんが、1歳という年齢はしつけを始める最適な時期といえます。というのも、1歳ごろから大人の言うことがわかり始め、「自分でやりたい!」という気持ちが芽生えるからです。
――最初は何から始めればいいのでしょう?
秦野先生:まず、早起き・早寝を実践して、生活リズムを整えることがすべての基本になります。1歳といわず、0歳代から意識してそのリズムを整えるようにしてみてください。生活リズムが整っていると、子どもは一日を元気に、機嫌よく過ごすことができます。ママ・パパとの関係も良好になり、ほかのしつけもスムーズに進むでしょう。
――早起き・早寝を心がけて、規則正しい生活リズムを整えたら、その後はどんなことをしつけていけばいいですか?
秦野先生:時期について大まかに分けると、たとえば1歳代前半なら、身近な危険を伝えることが大切です。薬や洗剤、化粧品など、幼児にとって危険なものをあらかじめ遠ざけておくことが前提となりますが、それでも近づいてしまった場合は、真剣な表情で「ダメ!」、「危ない!」と短い言葉で伝えてください。1歳代後半からは、やりたい気持ちがさらに育つ時期なので、あまりダメダメと言わずに、安全な場所で自由に遊ばせるといいでしょう。着替えや片づけ、手洗いなど、生活習慣の本格的なスタートもこのころがいいと思います。2歳代からは、子どもにも理解力が備わり始めているので、「これはやってもいい」、「これはやってはダメ」ということを、理由を教えながら説明してあげましょう。
――うまくしつけをするポイントを教えてください。
秦野先生:「子どもに○○ができるようになってほしい」という目標を決めながら、しつけを進めるといいでしょう。ただし、親が無理強いしては逆効果。「○○ができないから」といって、無理やり覚えさせるのはやりすぎです。たとえば、お箸を使う、「ごめんなさい」を言わせる、といったことは、1歳、2歳の段階ではまだ教えなくて大丈夫です。遊びの要素を取り入れたり、声かけをしたり、子どものやる気をうまく引き出すような楽しいしかけを入れることがポイントです。
子どもは親のまねをしながらいろいろな行動を覚えます。自分の行動がお手本になっていることを意識して、「こんなときにはどうしたらいいか」を示してあげましょう。また、しつけの中でも、子どもが楽しいと思えることが必要。ほめたり励ましたりして、できるとうれしい、楽しいといった気持ちが芽生えるように、親子の信頼関係を築きながら取り組んでいけるといいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)
監修/秦野悦子先生
白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻、人間総合学部発達心理学科教授(学科長)、発達語用論、障害児のコンサルテーション、子育て支援が専門。『子どもの気になる性格はお母さん次第でみるみる変わる』(PHP研究所)など著書多数。
参考/「1才2才のひよこクラブ」2017年冬春号「押さえておきたいしつけ入門」
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