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風邪の症状がないのに高熱と発疹…1才児に発症した原因不明の病気とは~救急医療の現場から#12

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Travelsouls/gettyimages

赤ちゃんが熱を出したり、発疹が出たりするのは比較的よくあること。心配して受診すると、実は風邪だったということもしばしばあります。しかし、発熱や発疹の症状を起こす病気には、風邪以外にもいろいろなものがあり、なかには、原因不明の病気のことも・・・。今回は、風邪の症状は見られないのに、40度の発熱と発疹が出て救急センターに運び込まれた1才の女の子の症例を、長年、小児救急医療の現場に携わってこられた市川光太郎先生に、ご紹介いただきました。

関連:4カ月の赤ちゃんが急に高熱とうなり声を発し重篤な症状に!〜救急医療の現場から#11

唇とBCG接種の痕(あと)の赤み、目の充血などといった症状も

「1才ちょうどの女の子で、熱が高く、発疹(ほっしん)が出てきて心配と受診されていますが、ぐったりして、心拍が速いです」と、トリアージ(治療の優先順をつける看護師)が診察室に伝えてきた。

「発熱してまる2日、今日で3日目になるそうです。今朝、かかりつけ医を受診して風邪と言われたそうですが、昼から発疹が出て、夕方から熱が高くなり、40度に上がったと心配して受診されています」と教えてくれた。

緊急治療を要する状況のため、順番を早めて診察することをほかの患者さんにも説明するように指示して、診察室に入ってもらうことにした。

診察室で母親から話を聞くと、発熱以外に鼻水、咳嗽<がいそう>(せき)などのカタル症状(風邪などに見られるような症状)はほとんど見られず、嘔吐(おうと)・下痢もないとのことであった。なのに、何か機嫌が悪く、時にぐったりしているのが気になると母親は訴えてきた。

診察すると、のどの赤みは強く認め、左側の頸部(けいぶ)リンパ節も腫(は)れていた。よく見ると、眼球結膜が充血していることもわかった。唇の色が普段より赤くないかどうかを母親に聞くと、「言われてみたら、そんな感じがする」と答えた。

手のひらや足の裏の赤みや腫れはあまり認めなかったが、BCGワクチン接種痕の発赤は認めた。川崎病の可能性が高いことがわかったので、血液検査をかねて点滴を確保して結果を待つことにした。

川崎病は、
1.5日以上続く発熱、
2.眼球結膜の充血、
3.いろいろな形の発疹、
4.唇の充血・亀裂(きれつ
5.四肢末端<ししまったん>(手のひら・足裏)の発赤腫脹、
6.頸部リンパ節の腫れ

上記6症状のうち5症状を認めると診断される、原因不明で乳幼児に多い疾病である。皮膚粘膜の症状以外にも、BCG接種痕が赤くなる、血液検査で炎症反応が高くなる、肝逸脱酵素<かんいつだつこうそ>という肝細胞が壊れたときに血液に出てくる酵素の値の上昇など、全身の血管炎(けっかんえん)を示す血液検査の結果も伴いやすい。

また重篤な合併症として、冠動脈瘤<かんどうみゃくりゅう>(冠動脈という心臓の血管の一部が瘤こぶのようにふくらむ)を形成し、最悪な場合は瘤内に血栓(けっせん)を生じ、それが細動脈をふさいで、心筋梗塞<しんきんこうそく>(心筋に血液が流れなくなる)を引き起こすことがある。川崎病を疑ったら、入院の上、血栓ができるのを抑制する抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)としてアスピリンの内服と、動脈瘤形成防止・炎症抑制にガンマグロブリンの投与が全世界的に行われている。

以上のことを母親に説明したのちに、血液検査の結果からも川崎病と確定診断を下した。

川崎病と診断がつき、ガンマグロブリン療法を実施

川崎病で間違いないことを再度説明し、入院治療を納得してもらった。母親からは、「原因は本当にわからないのでしょうか? 何か私の注意がたりないとかあるのでしょうか? お友だちにうつったりするのでしょうか?」と質問が飛んだ。そこで原因はわからないこと、感染する病気ではなく、経験的には軽いアレルギー体質のお子さんに多いことを再度説明した。

入院3日目には1回目のガンマグロブリン療法で効果が出て、熱も下がり、冠動脈瘤の形成も認めなかった。母親の表情も明るくなり、「心配したけれど、取りあえずよかったです。それにしてもいろんな病気があるんですね」と感慨深げであった。

川崎病とは?

高熱と発疹が続き、全身の血管の壁に炎症が起こる原因不明の病気。4才以下での発症が多く、冠動脈瘤などの重篤な合併症を引き起こすことが心配されます。発熱・発疹以外に結膜充血、唇が赤い、BCGワクチン接種痕が赤いなどの症状があれば、急いで受診を。また診断がついたら、専門医による治療を受けることが賢明です。

発熱と発疹があるときは?

1.よく見られる症状ですが、原因はさまざま。写真を撮り、翌日までにはかかりつけ医に相談を。

2.発疹が出ると薬疹(やくしん)を疑って薬をやめてしまうケースが多いもの。必ず主治医に相談しましょう。

3.発熱・発疹が出たら、いつもとどこが違うかを見極め、様子がおかしいときは救急受診も考えて。

関連:入院準備は?保険は?急な子どもの入院のための予備知識

市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、webでの連載も今回で最後となります。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、全国の医師から尊敬を集めていらっしゃいます。

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