すぐに実践できることばかり!怒りやすい子、キレやすい子との向き合い方
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キレる、よく怒る子どもにどう接すればいいのか、悩むママ・パパも多いでしょう。言葉で意思疎通ができず、イヤイヤ期とも重なる1~2歳のうちはとくに、子どもが怒っている原因がわからず親もイライラ、なんてこともありますよね。キレる、よく怒る子どもたちにどう接すればいいのか。元幼稚園教諭でママでもある、日本アンガーマネジメント協会の本部講師、小尻美奈さんにお話を聞きました。
キレたり怒ったりする5つの原因
そもそも、なぜ子どもはキレたり怒ったりするのでしょうか。小尻さんによると、原因はその時々によって変わるものの、主に5つの原因が考えられるのだそうです。
①言葉が未発達のため、うまく表現する手段がない
まだ言葉をうまくしゃべれない3歳くらいまでの間は、子どもは自分の不満や怒りをうまく表現する手段がありません。そのため、かみついたり、かんしゃくを起こしたりしてしまいがち。いずれしゃべれることが上達すれば、自分の感情を言葉で伝えられるようになるので、大きな心配はいりません。
②生活リズムが乱れている
睡眠時間がたりていない、寝る時間や起きる時間が不規則でバラバラ、ごはんを食べる時間も不規則――。そうした生活リズムの乱れから、キレやすい、怒りやすい状況になってしまうことがあります。おなかがすいている、疲れている、便秘になっているなど、生理的欲求が満たされていないことでイライラしてしまうので注意が必要です。
③情緒不安定になっている
引っ越しや入園、進級など、環境が変化したときの子どもは情緒不安定になりやすく、それがキレたり怒ったりする要因になっていることがあります。また、2人目が生まれたときに、これまで自分が独占していた親の愛情を、下の子に「取られた」と感じ、赤ちゃん返りで怒りっぽくなる場合もあります。とくに気をつけたいのは、夫婦間の不和。暴言が飛び交うようなけんかは、子どもにも悪影響を与える恐れがあります。
④親自身がキレやすい
子は親の姿を見て育つもの。親自身がいつも感情的に怒るタイプだと、子どももそれをまねしやすいとのこと。子どもがキレやすい、怒りやすいという場合は、ママ・パパが自分自身の普段の振る舞いがそうなっていないか、見直してみましょう。
⑤特性としてキレやすい、怒りやすい
感受性が強いタイプの子どもは、ネガティブ感情も感じやすいために怒りが出やすくなることがあります。また、生まれつきの発達の凸凹によって、キレやすい、怒りやすいという特性が出る場合もあります。子どもの特性を変えることはできませんが、親のかかわり方は変えられます。アンガーマネジメントできる親をめざしましょう。
子どもとの日ごろのかかわり4つのコツ
子どものイライラをゼロにすることはできませんが、減らすことは可能です。小尻さんによると、普段の子どもとのかかわり方にもコツがあるのだそうです。
①気持ちを伝え合う習慣をつくる
怒りの裏には「傷ついた」「悲しい」「困った」など別のネガティブな感情が存在します。「つらいね」「悲しいね」「困ったね」というふうに、それを言葉にして子どもに伝えましょう。まだ言葉をしゃべれない赤ちゃんのうちから、言葉にして気持ちを伝える習慣をつけておくことが大切です。親が子どもの気持ちを代弁してあげることで、子どもは今、自分が感じていることが悲しいんだ、困っているんだ、ということがわかり、自分の感情を相手に伝えられるようになります。また、親の気持ちも想像できるようになります。
②生活習慣を整える
規則正しい生活、バランスの取れた食事など、子どもの普段の生活習慣を整えることも、イヤイヤを抑制するためには大事なことです。お散歩や体操など、親子で体を動かしてストレスを発散するのも効果的です。
③肌が触れ合う機会をつくる
子どもは、愛されているという「安心感」があれば、気持ちも安定します。抱っこをしたり、手をつないだりして、親子の肌が触れ合う機会も意識して増やしてみましょう。肌が触れ合うことで、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されて、親子ともに幸せな気分を高められるでしょう。
④日ごろから怒ることと怒らないことを伝えておく
2歳のイヤイヤ期に子どもは「どこまでやったらママ・パパが怒るのかな、ここまでは大丈夫かな」と親のお試し行動を始めます。「昨日は怒られなかったのに、今日は怒られた」というようなことがあると、何がよくて何がダメなのかがわからず、子どもは「なんでダメなの!」とキレやすくなります。やみくもに怒ったり怒らなかったりするのではなく、基準を決めておくことが大事。また、怒る・怒らないの基準だけでなく、おやつの量、テレビを見ていい時間などの基準もつくっておいたほうがいいでしょう。基準がバラバラだと、「今日はもうダメ」と言っても、子どもは納得しません。
子どもがキレた! そのときどうすべき?
子どもが実際にキレたり怒ったりした場合は、どうすれば冷静に対処できるのでしょうか。小尻さんに対応方法を教えてもらいました。
①6秒待つ
感情は伝染するので、子どもが怒っていると、親も引っ張られて怒りの感情がわいてしまいます。そんなときは衝動的に怒らずに、6秒待ってみてください。人間の怒りのピークが持続するのは6秒と言われるので、6秒待つことで反射的な怒りの行動を抑制できます。
②五感を軽く刺激して気分を落ち着かせる
6秒待って自分の気分を落ち着かせたら、今度は子どもの気持ちを切り替えることが大事。イヤイヤしている子どもはパニックになっているので、五感を軽く刺激してみてください。そうすることで、イライラしていた意識をほかに向けることができます。たとえば、水を飲ませる、ベランダに出て外の空気に触れさせる、音楽を聴く、絵本を見る、お絵かきや折り紙で遊ぶ、トランポリンで遊ぶ、などなど。ちょっとしたことでも気分転換になります。
③気持ちを引き出してあげる
「お友だちにおもちゃを取られて悔しかったからなんだね」「抱っこしてもらいたかったんだね」と、怒りだけにフォーカスせず、怒りに至った前の気持ちや子どもの欲求を理解し、寄り添うことが大切です。「そんなことで怒らないでよ!」はNGワード。ママ・パパは自分の気持ちをわかってくれていないんだな、と思ってしまいます。ほかにも、「だからバカなのよ」「ノロマね」「あんたなんかいなくていい」などの人格否定もNGワード。当然ですが、子どもをたたいたり、モノに当たったりしてもいけません。
夫婦間のよくある光景(筆者だけでしたら失礼)として、パパがママに対して「ちょっと怒りすぎじゃない?」と冷めた口調で言って、「あなたはわかっていない」と余計に怒らせてしまうことがありますが、それはパパの理解がたりていないのだそうです。ママ・パパのどちらかが中心になって子育てしている場合は、夫婦間で互いに理解し合うことも、イライラを抑制するためには必要といえそうです。ママとパパで家のルールをそろえることも子どもにとっては大事だそうなので、夫婦で情報のシェアもするようにしたいですね。(取材・文/香川 誠、ひよこクラブ編集部)