幼少期から心がけておきたい室内での花粉症対策!花粉の侵入予防
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春前の2月頃から多くの人が悩まされ始めるのが“花粉症”ですよね。
ひと昔前までは、花粉症というと大人の疾病というイメージがありましたが、実は近年、子どもたちの花粉症率が年々増加傾向となっているのをご存じでしょうか。
一度花粉症が発症してしまうと自然治癒に至る可能性はとても低いものと考えられています。
今や“花粉”は「シックハウス症候群」「カビによる健康被害」などと同じく、住宅環境における健康被害を及ぼす自然環境要因となっています。
特に「換気計画」にて、盛り込んでおかなければいけない大切な要素に。
ここでは、「家庭における幼少期の花粉症対策」に関連した情報を防災アドバイザーの榑林宏之さんに紹介いただきました。
榑林 宏之
一級建築士・防災アドバイザー
一級建築士として活動。「都市環境・住宅環境と防災」「都市環境・ランドスケープ計画における、人の行動・動線設計と危機管理」などに携わっています。
BAUMPLANNING一級建築士事務所
幼少期に心がけておきたい家庭の花粉症対策!
「花粉症」は今や国民病ともいえるほど、日本にて多くの方が有する疾病となっています。国民の「4人に1人」が花粉症を有しているとも言われています。
そんな花粉症において、注視しておきたいのが「小児花粉症患者の増加」「花粉症の低年齢化」です。
昔は、花粉症が発症するまではかなりの時間が必要となるものという考え方がありました。よく「コップに水を灌ぐ」ことに例えられていましたが、花粉を身体に取り込んだ後、抗体反応が限界値を突破するまでに時間がかかるものと考えられていたからです。
*大人になってから突然発症するもの
といったイメージを持っている方も少なくないのは、そんな花粉症の発症メカニズムによるものと思われます。
しかし、実体は異なっており、幼少期から花粉症になるケースが増加傾向となっているのです。
花粉症の実態。子どもの花粉症が増加している3つの要因とは⁉
子どもの花粉症の実態を知る上で2015年に行われたアンケート調査統計があります。
その調査結果によると下記のような子どもの花粉症実態が見えてきます。
出典:ロート製薬「0~16歳までの子ども2,618人の親に聞いた「子どもの花粉症」調査結果発表」
同時に、国民全体の花粉症患者の増加傾向と比較して、「子どもの花粉症患者」の増加割合が多くなっていることもわかりました。
近年、子どもの花粉症が増加しているのには、下記3つの要因があるものと考えられています。
同時に、国民全体の花粉症患者の増加傾向と比較して、「子どもの花粉症患者」の増加割合が多くなっていることもわかりました。
近年、子どもの花粉症が増加しているのには、下記3つの要因があるものと考えられています。
花粉症の親の増加(遺伝的要因)
一番大きな要因と考えられるのが「花粉症を有する親の増加」です。
理論的には、両親共に花粉症(スギ花粉症)の場合、その子どもはほぼ100%花粉症(スギ花粉症)になるものと言われています。
花粉症が広がりを見せる中、現在、親の花粉症割合が多くなっています。必然的に花粉症の親から生まれる子どもたちは、花粉症となりやすいのです。
アレルギー性疾患の増加
花粉症はアレルギー性疾患のひとつです。近年、アレルギー性疾患を有する子どもが増加傾向となっています。
・生活環境の変化(衛生的な生活環境)
・食生活の変化
・遺伝的な要素(アレルギー体質の遺伝など)
など
様々な要素が関係し合うことによって、様々なアレルギー(食物アレルギーなど)を有した子どもが増えているのです。
そんなアレルギー体質(アレルギー性疾患を有している状況)の子どもたちは、同じアレルギー性疾患である“花粉症”になりやすいことに。逆に言うと花粉症の子どもの場合、他のアレルギー性疾患を抱えている可能性があることに注意しておく必要がありそうです。
花粉飛散量の増加及び都心部での粉砕花粉の増加
“スギ花粉症”に関しで、「花粉飛散量の増加」も花粉症拡大の大きな要因として上げられています。
しかし、近年ではスギ花粉症対策も進んできており、以前と比較すると「スギ花粉の飛散量」は微増程度となっています。
それよりも問題視されているのが「都市部での花粉症の増加」です。実際にスギが沢山植えられている地域よりも、都市部にて花粉症患者数が多くなっています。
その要因が「スギ花粉の堆積と再飛散」及び「スギ花粉の粉砕・極小化」です。
都市部では、その大半がアスファルトやコンクリートなどの花粉が吸着・分解されにくい地盤となっています。
その結果、花粉が濃縮され再び風によって再飛散するという状態が発生する環境に。花粉を身体に取り込みやすい環境が作られているのです。
また、スギ花粉は「30マイクロメートル~40マイクロメートル」といった粉塵としてはやや大き目の物体なのですが、それがアスファルトなどとの接触によって粉砕。さらなる微粒子へと変化します。
その結果、住宅内部に侵入しやすく、体に取り込みやすい状況となっているのです。
2歳以上から発症の可能性がある花粉症
花粉症は、体に入ってきた花粉(スギ花粉)を異物と判断し、抗体(IgE抗体と呼ばれるもの)が作られることによって、発症するものです。
抗体(IgE抗体)が作られても実際に抗体が働く(抗体反応)のは翌年の花粉シーズン以降となりますので、「0歳」の時に抗体が作られたとしても、花粉症が発症するのは「1歳~2歳頃」となるわけです。
ですから、実際には子どもの花粉症は「2歳以上から発症する可能性がある」と認識しておいていただければと思います。
家庭で心がけておきたい生活・住宅環境施策
花粉症は一度発症してしまうと、自然治癒される可能性はかなり低いと考えられています。
そういう意味で幼少期の子どもに対する花粉対策を心がけておくことはとても大切なこととなりそうです。基本的な花粉症対策となるのが
*家の中にスギ花粉を侵入させないこと
です。
家の中にスギ花粉を侵入させないために心がけておきたいポイントをご紹介しておきたいと思います。
換気システム上の課題と対策
近年の住宅(マンション、戸建て住宅)には、「24時間換気システム」の設置が義務付けられています。その大半のケースが「排気は機械換気。給気は自然換気」というタイプ。
各部屋の壁などに“給気口(自然給気口)”が設置されており、外気を室内へ取り入れることができます。
ゆえに、スギ花粉の飛散ピーク時期(2月~4月)は、なるべく「窓を開放しての換気」は控えるようにしましょう。
ただ、“給気口(自然給気口)”からスギ花粉が流入してくるケースがあることが課題となります。その対策としては、季節限定にて「スギ花粉用対策の換気フィルター(市販品)」を主に寝室の給気口に設置することが効果的です。
浴室乾燥機の活用
外に洗濯物を干すことでスギ花粉が衣類に付着。室内にスギ花粉を持ち込むケースがあります。
ゆえに、「浴室乾燥機」があるようなら、スギ花粉シーズン中は積極的に浴室乾燥機を使用することがおすすめとなります。
帰宅時に玄関にて花粉除去の生活習慣化
日常の生活行動において、屋外からの帰宅時に花粉を持ち込んでしまう割合が多いと考えられています。
スギ花粉シーズン中は帰宅時に玄関前にて衣服から花粉を払うことを習慣化するようにしましょう。
幼少期に花粉症を発症してしまうと人生の大半を花粉症に悩まされてしまうこととなります。
特に、両親共に花粉症の場合は「幼少期の花粉症対策」をしっかりと意識しておきたいものです。