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不妊治療でも授からなかった…「育てる」ことの可能性を探りたい、特別養子縁組について

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育児のコンセプト
anyaberkut/gettyimages

ワンオペ育児、孤育て、長時間労働、少子化…。長年、妊娠・育児雑誌を制作してきた「たまひよ」ですが、最近取材していると、どうしても日本の子育てが、厳しい問題に直面していると感じてしまいます。
赤ちゃんの笑顔のためには、ママやパパが笑顔である必要があると信じていますが、なかなか難しいと感じる時代に。
この連載では、「令和」が始まった今だから、赤ちゃんをとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも育てやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。
第一回目のテーマは「特別養子縁組」です。「たまひよ 家族を考える」#1

関連:トランスジェンダーの僕が、赤ちゃんを授かるまで

書き手 箕島宇江
ライター 10代から持病があったため、婦人科の勧めで入籍直後から不妊治療を始めるも、持病悪化で体外受精2回目で断念。諦めきれずに調べていく中で、特別養子縁組を知る。最終的には夫婦二人での人生を選択した。

普通養子縁組と特別養子縁組の違いとは

平成27年(2015年)に行われた国勢調査によると、夫婦だけで暮らしている世帯は20.1%、年々増加しているそうです。この中には、子どもが成人して独立した結果、夫婦だけになった世帯もいますし、意識的に子どもを産まないDINKs(Double Income No Kids)もいるでしょう。

筆者は夫婦のみの世帯です。妊活中に不妊治療も行っていましたが、体調の問題で妊娠自体できなくなったという経験があります。不妊治療をやめたとき、妊娠できなくとも、子どもを授かれないかと調べていく中で「特別養子縁組」という制度を知りました。家族の理解が得られず断念しましたが、2016年に新しく法整備されたと知り、改めて制度の全容について調べてみることにしました。

里親とはどう違うの?

子どもの数が少なくなっている影響か、筆者の周りには「家の後継ぎ問題」などで、親戚と「普通養子縁組」を組んだ人が何人かいます。

この「普通養子縁組」では、養親と養子それぞれ本人同士の同意だけで成立し、実父母との親族関係も継続されます。養子に行ったからと言って、戸籍上赤の他人にはならないのが特徴です。

でも特別養子縁組は異なります。厚労省のサイトに書かれた説明を見てみましょう。

「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。
「特別養子縁組」は、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、下記の要件を満たす場合に、家庭裁判所の決定を受けることで成立します。
出典元:厚生労働省「特別養子縁組制度について」

縁組の成立には、家庭裁判所の決定が必要となり、成立すると実父母との関係は終了します。戸籍の記載も、養父母の実親子とほぼ同じとなるのです。

加えて、養子となる子どもの保護を目的として、6カ月以上の監護期間も設定されており、子どもにとって不利益がないよう、注意深く監護しながら進める制度となっているのです。

実際に筆者が団体の説明会に行ったときも、「子どもをもらうという意識じゃだめ! 授かりものなので、どんな子どもがきても育て上げる覚悟が必要です」と言われました。子どもが温かい環境で育つように、国や団体、養親仲間などみんなで支えていると感じたのを覚えています。

もうひとつ、生みの親以外が子どもを養育する制度に、「里親制度」というものもあります。この場合は、普通養子縁組、特別養子縁組とも違い、生みの親との親子関係が継続されるのが特徴です。途中で生みの親の元へ戻るか、18歳になったら自立していきます。あくまで、一時的な養育が目的の制度なのです。

「育てられない」を見かねたある医師から制度は始まった

養子縁組というと、日本には昔からあったかのように勘違いしていたのですが、「特別養子縁組」が法的に整備されたのは、今からわずか32年ほど前のことでした。

発端となったのは、宮城県石巻市で開業していた産婦人科医・菊田昇医師が行った、生みの親が育てられない赤ちゃんを望む夫婦に紹介し、出生証明書を書くという「藁の上の養子」(=他人の子を実子として出生届をして育てること)という行為です。もちろん当時の法律上は違法行為にあたります。発覚後は国会まで巻き込む論争が起き、1987年に民法改正によって特別養子縁組制度が生まれました。

なんらかの事情があって育てられない人のための制度でもあるわけですが、制度ができても、それが活用されてなければ意味がありません。定期的にメディアに登場する虐待の話題に胸を痛めている人もいるかと思います。せっかく赤ちゃんを授かっても、様々な事情で虐待に至ってしまうケースが後を絶ちません。

厚生労働省の発表によると平成30年度(2018年度)の児童相談所への相談件数は15万9850件と前年より19.5%も増え、過去最多となっています。

同時に発表された「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)」によると1年間の間に虐待によって死亡した子どもの数は65人。5~6日に1人の子どもが虐待死していることになるのです。

虐待にあった子どもたちは、乳児院や児童養護施設に保護されます。平成28年現在、乳児院に収容されている子どもの数は2,811人、児童養護施設は26,459人と、合計で3万人近い子どもが保護されています。

それに対して、同じ年の特別養子縁組の成立件数は495件。一時的な養育である里親やファミリーホームでの委託数は6,546件。合わせても、7,041件にしかなりません。

家庭的な養育環境にいる子ども数と施設にいる子どもの数の差から、活動の成果にギャップがあることがわかります。

また、子どもが生まれる以前に「望まない妊娠」という問題もあります。その理由は、性的暴行、貧困、精神障害、社会的孤独など多種多様です。

10代の人工中絶率は年々減少しているものの、まだ政府が目標とする数値まで達しておりません。NPO法人フローレンスが行っている「にんしん相談」に寄せられる声の4割は10代からということ。学校で性教育が十分になされていないという声もあります。

ちなみに、2016年に日本財団が行った調査では、「特別養子縁組制度」の認知率は45.9%、 「里親制度」の認知率は58.0%という結果がでており、里親制度に比べてもあまり知られていないことがわかります。

筆者がまわりに特別養子縁組について相談したときに「人身売買?」と大きな誤解の言葉を投げかけられたのですが、その理由も納得です。世の半分以上の人が知らない制度なんですから……。

これから先、予期せぬ妊娠などで産まれてきた子どもが、放置されたり虐待されたりしないためにも、出産後に任せられる場所がある。その存在を知ってもらうことも重要なのかもしれません。

CREATISTA/gettyimages

制度がまだまだ活かされていない日本

ジェニファー・アニストンが主演のアメリカドラマ『FRIENDS』の中で主人公の親友モニカの養子縁組が取り上げられていましたが、厳しい審査がいくつもあり、その様子からも、海外でも養子縁組は簡単なものではないことがわかります。それでも、成立件数は推定年間12万件ともいわれ、日本とは比べものにならない数の新しい親子が誕生しています。

なぜ、日本では制度が発達しないのでしょうか。

海外では望まない妊娠の相談とその後の養子縁組はセットで考えられています。しかし日本の児童相談所は、産まれた「あと」である虐待対応などに追われ、妊婦や胎児の対応にまで手が回っていないのが現状です。

結果、特別養子縁組制度については、行政がカバーしきれない制度のエアポケットが生まれていました。そこを埋め続けてきたのが、特別養子縁組を助ける民間団体たちです。

民間が支える制度

多くの民間団体は誠意をもって特別養子縁組に関わっています。しかし、中には悪徳業者も登場して、問題になっていました。

例えばネットでスペックだけ公開し、面談など子どものために行うプロセスを無視したり、生みの親には「産んだらお金をあげます」といった人身売買のような告知を行っていた団体も。

こういった業者をなくすために、2016年に「特別養子縁組あっせん法」という法律が成立し、行政の許可なく斡旋などが行えなくなったほか、研修の支援や補助が出るようになりました。

現在、厚労省が公表している許可を受けた団体は19件あります。それらの団体は、望まない妊娠相談から特別養子縁組までサポートしており、養親を希望する人への研修なども行っています。

NPO法人のフローレンスでは、検討をはじめたばかりの夫婦のために特別養子縁組の基礎的な情報が得られるオンライン研修も提供しています。

立場関係なく、皆が知るべき制度

望まない妊娠が消えない限り、身近なところでこの制度と出会う可能性は、誰でもあり得るのではないでしょうか。自身の子ども、友人、家族から相談される可能性も否定できません。

制度を知らないということは、妊娠した人への選択肢を減らし、子どもが家庭に守られて生きるチャンスをも減らすことにもなりかねません。多くの人が、制度を知ることで、温かい養育環境で育つ子どもが一人でも増えることを祈っています。

文/箕島宇江 監修/認定NPO法人フローレンス

令和がはじまってはやくも4カ月が経ちます。新しい時代だからこそ、赤ちゃんの笑顔を増やしたい。今後も「たまひよ」は、さまざまな赤ちゃんを取り巻く問題をわかりやすく紹介していきます。

フローレンス「赤ちゃん縁組」はこちら

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