46歳で出産、女優・加藤貴子 やんちゃな息子を“見守る”難しさを語る
女優・加藤貴子さんは、プライベートでは、5歳と2歳の男の子のお母さん。先日、とある出来事がきっかけで、やんちゃな2人を見守ることの難しさを痛感したといいます。
この連載では、赤裸々な育児話と、加藤さんの育児に影響を与えた言葉を紹介。5回目となる今回は、「親の不安が先行して、子どもの行動を制限し過ぎちゃダメだよ」という、加藤さんの友人からの言葉にまつわるエピソードです。加藤貴子さんの「私だって新米ママ!#5
『見守ること』が育児の課題
間もなく長男が5歳になるので、私も子育て5年生になります。職人さんなら、下積みから少しずつ仕事を任されるようになるころでしょうか?
しかし、私の子育てスキルは、まだまだ下積みレベルから卒業できそうにありません。とくにこの1年は、3歩進んでは3歩下がるような、足踏み(というか、じだんだ?)状態が続いたり、ときには後退してる感覚のほうが強い時期もありました。
私の課題は『見守ること』。長男も次男もやんちゃです。興味を持ったことはある程度自由にさせてやることが大事、とは思いつつ、いつか取り返しのつかない大けがするのではないか?と、いつもヒヤヒヤハラハラ見守って(?)います。
先日も長男は、次男と一緒にベッドの上で飛び跳ねながらまともに次男の頭に顔面をぶつけて、前歯から血を出してしまいました。歯医者さんへ連れて行ったら、すぐにレントゲン。「しばらくおとなしく遊んで、かたいものを前歯でかまないようにね」と指示されて帰って来たにもかかわらず、3日後には保育園でお友だちとぶつかって、またもや同じ個所から出血。歯医者さんでレントゲン。
本人は、痛いその場はしこたま落ち込んで、一応神妙に反省の態度を示すのですが、痛みが和らげばどこ吹く風。そんなことの繰り返しで、私なりに『見守ること』を意識してはいるものの、こらえきれず大声をあげたり、先回りして遊びをやめさせたり…。
長男に与えてしまったトラウマ
ちょうど1年ほど前に、「親の不安が先行して、子どもの行動を制限し過ぎちゃダメだよ。大切な経験も損なわれちゃうし、子どもはいつまでも自分で危険を回避できなくなっちゃうよ」と、親友であり保育士であり先輩ママである友だちから、注意されました。
言われて振り返れば確かにしょっちゅう、「危ないから〇〇しちゃダメよ」「危ないから〇〇に気をつけて」。行動を起こす前から起こってもいない最悪なことを想像して、そこから遠ざけるように、「危ないから…」を口癖のように言い続け、子どもの経験や行動範囲を狭めていました。
自分では子どものことを思って言っていたつもりが、いつの間にか自分が安心できるように言っていたんですね…。結果長男には、危険回避もまともにできないうえに、けがをすると私にしかられるという、トラウマのようなものまで残してしまいました。
長男はけがをすると必ず「ごめんなさい」って泣くんです。あるとき、工作中のこと。机の奥にあるハサミを取ろう、とジャンプしていました。「横着しないで台を使って取ればいいじゃん」と促したのですが、構わずジャンプ。何度か繰り返しているうちに、手をついた先にセロハンテープ台の刃があって、指を切ってしまいました。
そして「いたいよ~」と私の顔を見て、「ごめんなさ~い」って大泣き。その場にいた、ばあばが「あやまらなくていいんだよ。痛い思いをしているのはサクちゃんなんだから」と慰めていました。ばあばの言うとおりだと思います。
痛い思いをした時には、まずは寄り添うのが先なのに、注意は痛みも動揺も落ち着いてからでいいのに、痛がってるそばから、多分ものすごく怖い顔をしていたんだと思います。
安全を確認できなかった自分に腹が立つし、注意を聞き入れなかった長男にもイラっとするし、日々のこんなことの繰り返しにもうんざりだし、そんなこんな積もり積もったことで鬼の形相になったんだと思います。
友人の大きな支え
そういえば以前、長男が手をやけどした際にも似たようなことがありました。冷水で手を冷やしているとき、「カカやめて、手が凍っちゃうよ。ごめんなさい」と言って泣いていました。あせった私の顔が怖かったのでしょう。
それで、危険なことを体験して教訓にする前に、けがを嫌がる母にしかられる!と思って、謝るほうが先に立ってしまうんでしょうね。反省です…。見守りながら、経験させながら、危険から遠ざけるのは、本当に難しいです。
そんな私は前述した友だちから、「ちっちゃいうちは、転んでちっちゃいけがをいっぱいしても、大人ほどダメージないから大丈夫。それよりも子どもが興味を持って行動している流れを止めないであげて。難しいよね。心配だよね。怖いよね。ついつい言っちゃう時もあるよね。でも心がけるだけで違ってくるよ」とアドバイスをもらい、見守られてます。
(構成/ひよこクラブ編集部)
子どものためを思ってしたはずの行動が、知らぬ間に子どものやりたいことを制限していた、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか? 『子どもを見守る』ことは、苦しくて、歯がゆくて、簡単ではないこと。しかし子どもが今後、自分の力で決断し、行動し、生きていくには、すべての親が通らなければならない道でもありますね。加藤さんと一緒に、“心がけ”から始めてみませんか?
次回も、加藤さんの育児に影響を与えた言葉が登場します。お楽しみに!
Profile●加藤貴子
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。