わがままじゃない! 子どもの 食べ物の好き嫌いは「敏感」だから起きる
「うちの子、好きなものばかり食べて栄養バランスが心配・・・」
子どもの食事の悩みで多い“好き嫌い”。これは、単なるわがままではなく、食べられない理由が潜んでいる場合もあるようです。
おうちの方が気がかりな食べ物の“好き嫌い”について、保育者育成やお子さんやその家族への育児支援などに力を注ぐ、藤原里美さんにお話を伺いました。
好きなものしか食べない原因は「五感」にあった!
人間は生まれながらに「五感(※1)」を持ち合わせていて、その捉え方や感じ方は1人1人違います。「味覚」「嗅覚」「触覚」が敏感なお子さんは、多くの人がおいしいと思う味や触感(舌触り)を不快に感じることがあります。
たとえば、赤ちゃんのころにいつもと同じ乳首や粉ミルクしか飲まない、ママのおっぱい以外は受け付けないなどの様子があったお子さんは、さまざまな味や触感に対応できるようになることに、時間がかかる場合があります。
とはいえ、そのような感覚の過敏さは成長とともに低減します(※2)。
無理に食べさせたり、「しかたがない」とあきらめたりせず、気長に考えましょう。好きなものしか食べないことを叱ると、さらに食べなくなる子も見受けられます。母子健康手帳にある「乳幼児身体発達曲線」を参考に、発達曲線のカーブにそって体重が増えているかを確認しながら、お子さんが安心して食べられるように工夫することが大切です。
※1 「味覚」「聴覚」「嗅覚」「視覚」「触覚」の5つの感覚を指します。
※2 個々の状況に応じて、違う場合もあります。
気持ちに寄り添った工夫と声かけで食の幅を広げて
お子さんが受け入れやすい味・におい・食感をはじめ、温度や見た目などを、肩の力を抜いてできる範囲で探ってみましょう。少しずつ食べられる食材を広げていけるといいかもしれません。
たとえば、鶏のから揚げが好きなお子さんなら、鶏肉以外の食材をから揚げにする、から揚げの味を変更する、サラダにから揚げを入れるなどと工夫するのがおすすめです。お子さんが安心して食べているメニューに少し変化をつけてみましょう。
見た目に変化をつけることも大切です。お子さんの好きなキャラクター付きの食器を使う、盛り付けを一口だけにするなどの工夫もいいでしょう。食べることを嫌がったら、その気持ちを受け止め「嫌なんだね」と共感することも有効です。
共感しながらも、保護者や周りの人がおいしそうに食べている様子を見せ、お子さん自身が「食べてみようかな」と動き出すことを待ってみましょう。
■監修:一般社団法人チャイルドフッド・ラボ代表理事 藤原里美先生
明星大学非常勤講師(障害児保育)、臨床発達心理士、自閉症スペクトラム支援士、早期発達支援コーディネーター、保育士。
■イラスト・マンガ/鳥頭ゆば(トリあたま絵日記)