妊娠・授乳中の食事とアトピー、食物アレルギーの関係は?
「妊娠中に私が卵を食べ過ぎたから乾燥肌になっちゃったのかな?」「赤ちゃんをアレルギーから守るためにはママが牛乳を飲んではいけないの?」などの疑問が「ひよこクラブ」に届くことがあります。「秋冬のスキンケアとアレルギー」の4回目は、妊娠中・授乳中のママが食べたものとアレルギーとの関係を、子どものアレルギーに詳しい、国立病院機構相模原病院の佐藤さくら先生に聞きました。
妊娠中や授乳中のママの 食材制限は意味がありません
「食物アレルギーを発症しやすい卵や牛乳を食べないようにすれば、赤ちゃんはアレルギーにならないのでは」と特定の食材を制限している妊婦さんや授乳中のママもいるかもしれません。
しかし、妊娠中や授乳中のママが、特定の食材を制限することでアレルギーの予防にはつながりません。赤ちゃんの成長のためはもちろん、ママの健康のためにも「栄養バランスのいい食事」を心がけることが大切です。ポイントは、なるべく多くの食材を使うこと。毎食手作りは大変なので、市販の総菜なども上手に活用して、効率よく栄養を摂取しましょう。
日本小児アレルギー学会が作成した食物アレルギー診療ガイドライン2016でも、妊娠中や授乳中の母親の食物制限は推奨されていません。
母乳にはごく微量ですが ママが食べたものの抗原が 含まれます
ただ、母乳には、ママが食べたものの抗原がごく微量ですが含まれます。
ですから、離乳食前の授乳中に、赤ちゃんにアレルギー反応が出た、ということがごくまれにあります。一時的な治療として、ママがアレルゲンとなっている食物をやめることがありますが、母乳育児をやめる必要はありません。スキンケアの見直しなど治療を進めるうちに、アレルゲンとなる食物を再び食べてから授乳しても症状が出なくなることも多いのです。ママの食材の制限が必要かどうかは、自己判断しないで必ず医師に相談しましょう。
アレルギーの予防には スキンケアが効果的!
アレルギーの予防には、妊婦さんや授乳中のママの食物制限ではなく、スキンケアを見直すことのほうが効果的です。
アトピー性皮膚炎などで湿疹(しっしん)がありバリア機能が壊れていると、そこから家のほこりなどに含まれる、食物抗原(食物アレルギーのアレルゲン)が取り込まれ、アレルギーを起こしやすい体質になることがあります。アレルギー体質がある場合、アレルゲンを含んだ食材の離乳食を食べたり飲んだりすると、アレルギー反応を起こしてしまうことがあるのです。
つまり、皮膚のバリア機能を高めておけば、抗原に反応するリスクを減らすことができるのです。バリア機能を高めるのに必要なのは「毎日のスキンケア」。皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることが大切です。生後すぐからがもっとも効果的とされていますが、なるべく早く始めれば大丈夫! 栄養バランスのいい食事とスキンケア。毎日の習慣にしたいですね。
佐藤先生教えて
ママ・パパたちから寄せられた、ちょっとした気がかり・疑問について、佐藤先生にお聞きしました!
Q:
「バランスのいい食事」って?
A:
同じ食材ばかりとらず、いろいろな食材を取り入れるのが理想的です。妊娠中だけでなく産後も母乳育児をする場合は母親の栄養不足が赤ちゃんに影響します。肉や魚などのタンパク質、ビタミン・ミネラル、カルシウム、鉄分などはきちんと摂取したいですね。
Q:
牛乳など特定の食材をとりすぎることでアレルギーになりやすくなるということはありますか?
A:
食材の摂取量とアレルギーの関係はまだはっきりわかっていません。ただ、ひとつの食材の過剰な摂取は栄養バランス的に望ましくないので、バランスよくさまざまな食材を食べるようにしましょう。
(取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部)
お話/
佐藤さくら先生
(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部 病因・病態研究室長)
小児科医。日本アレルギー学会代議員。日本小児アレルギー学会評議員。診察と同時に食物アレルギーの現状、原因の研究を重ね、アレルギーに悩む親子に寄り添う。