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セックスだけじゃない!幼児期から教える「身長100cmのママ」の性教育メソッドとは

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『ママは身長100cm』(伊是名夏子/ディスカヴァー・トゥエンティワン)より (撮影:越智貴雄)

突然ですが、子どもに性教育してますか?「性教育」という言葉を聞いただけで、落ち着かない気持ちになってしまうママもいるのではないでしょうか。「性教育」とは恥ずかしいもので、こっそり教わるものでは…といったイメージを持っているママもいるかもしれません。

でも「性」とは本来「生」につながるもの。自分の体を知り、自分の体を大切にできるようになり、やがてその気持ちが他人にも向いていく。お互いを大切にして、自分らしく生きるためのキーワードでもある、と『ママは身長100cm』を書いた伊是名夏子さんは語ります。

伊是名さんが性教育に興味を持つようになったのは、生まれつき骨が弱い「骨形成不全」という障がいがあり、物心がつくよりも前から医療を受けることが多かったこともあるからだそうです。伊是名さんの性教育に対する考え、そして6歳の息子さんと4歳の娘さんにどんなことを伝えているのかを聞きました。

性教育とは、自分の体を大切にすること、そしてパートナーシップを学ぶこと

―――お子さんに性教育をしようと思ったのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか?

「私は幼い頃から大きな手術や入院を繰り返してきました。レントゲンを撮られたり、何度も注射をされたりするのは、嫌でしたし、怖かったりもしました。でもまわりに気を遣って『イヤだ!』とは言えなかった。自分の体や気持ちを大切にすることができなかったんです。だからこそ自分の子どもには『自分の体を大事にしていいよ』と伝えたいと思いました。
性教育というと『セックス』のことを連想しますがそうではなく、性教育とは自分の体を大切にすること、そしてパートナーシップを学ぶことなんです」

―――具体的には、子どもにどんなことから伝えはじめるのでしょうか?

「子どもの場合、最初は『自分の体を清潔にする』ということから伝えていきます。『きれいなのは気持ちがいいね』から始めて、性器の名前も『ペニス』『ワギナ』と正確に伝えます。楽しく体の名前を覚えられるように『頭はどこかな?さわってみよう」』『では肩は?』『ペニスやワギナは?』と言います。このように性器もほかの部位と同じ体の部位の一部だと理解してもらいます。
2、3歳になると『NO』という練習が大事に。性被害にあうのは女の子がミニスカートをはいていたから、露出の多い服を着ていたから、夜道をひとりで歩いていたからと、被害者に何か問題があったように言われることが多いですが、実際には6、7割は家族や親戚、顔見知りの人が加害者になっているというデータもあります。それまで仲良くして信じていた相手から嫌なことをされるのがほとんどだということですね。そういうとき怖いかもしれないけど『助けて!』って言っていいよ、嫌だって思っていいよということを教えています」

―――ー「助けて!」や「嫌!」と言うのも、前もって練習しておかないと、いざそのときになっても言えませんよね。

「そうなんです。『もし公園にいたときに知らない人が来て“ママがあそこで呼んでるよ。一緒に行こう”と言われたらどうする?そんなときは“ママは買い物に行ってるからいないよ”“ママのお名前知ってるの?”と答えてね』など、実際に起こりそうないろんなシチュエーションを伝えています。
出かけたときに男女問わず『トイレにひとりで行かせない』のが大事だと言われてはいますが、うちは男の子と女の子だから同時にはつきそえないし、一緒に入れないこともある。なので『トイレでは、プライベートゾーン(胸や性器など水着を着たときに隠れるところ)を触ってくる人や、勝手に個室に入ってくる人がいることも。危険なことも起きる場所だから何かあったら教えてね。嫌だ!って言ってもいいからね』と伝えてあります。
集団登校していても、夜道を歩くのをやめても、悲しいですがどこかで被害に遭う可能性があります。だからこそ、被害を避けることよりも、被害にあいそうになったときにどうするかを教えたいと私は考えています

性教育を通じて「自分のことは自分で決める」を学んでほしい

―――「性被害にあわないように」ということ以外に、性教育でお子さんたちに伝えていることはありますか?

「児童虐待のニュースを見たときに『ご飯をあげなかったから死んでしまった子がいたんだって。でもね、きっとその子のお父さんお母さんも、ご飯をあげたほうがいいとかお風呂に入れたほうがいいっていうのを知らなかったんだよね』と伝えています。悲しいけれども犯罪を犯す人はたくさんいて、犯罪自体はとてもいけないことだけど、きっとその人もサポートが必要だったんだよ。どうしたらいいか教えてもらえなかった人なんだよ。だから、困っている人がいたら『どうしたの?』と声をかけたほうがいいし、『一緒にやろう』と言うことが大事だよというところまで教えています。本当はテレビでそこまでやってくれたらいいのに!(笑)」

―――困っている人を見かけたときに「どうしましたか?」とすぐ声をかけられる人は、日本では少ないように感じます。障がいのある人や子育て中の人、海外から来た旅行者、高齢者など街で困っている人はたくさんいるはずですが、声をかけあうことに慣れてないのかもしれません。

「そうですね。なので、子どもにも『あなたも“助けて!”と言っていいし、誰かから“助けて”と言われたら一緒にやろうね』と教えています。優先席も同じです。『どうぞ』と譲るのもカッコいいね。だけど疲れているときはあなたも座ってね。だから座ってる人に怒ってはダメだよと」

―――なるほど。「優先席は困ってる人のための席だから座ってはダメ」と教えてしまうと、座っている人に対して「自分は我慢してるのに!」と怒りを向けることになってしまいますね。

「そうなんです。だから座っても座らなくてもいいし、『どうぞ』と譲るか、自分も疲れているから座っておくか。それは自分で決めていいからね。ということなんです。
性教育も結局は『自分で決めていいよ』ということにつながります。自分が嫌なら『NO』と言うし、相手にもどうしたいと思っているのか聞くということなんです。

男の子も女の子も、お互いのことを学ぶことが大切

―――男の子と女の子で伝えることは変わってくるものでしょうか?

「全く同じだと思っています。ただ、男女分けて勉強した方がいい時もあります。小学校高学年くらいになって性の話をすると、恥ずかしくて異性を茶化したり、冷やかしたりすることがあるんです。そういう時は男女分けるのもいいですね。ただファーストステップとしては、男女一緒にやるべきだし、同じ内容でいいと思います。男女がお互いのことを学ぶことが大切だと思うので」

―――男の子に対しては「加害者になる可能性もあるから、そうならないための教育もしなければ」と心配するママの声が多くありますが?

「それを教えてしまうと、女の子のスカートをかわいいと思う僕はダメなのかな? 女の子にさわりたいと思う僕はおかしいのかな?となってしまう。そう思うことがいけないことなのではなくて、かわいいと思ったからといって、相手に聞かずに勝手に触るのがいけないことなんですよね。『あなただっていきなり触られたら嫌だよね? 相手に触るのは男女関係なくお互いの信頼関係のもとに成立することなんだよね』と教えたいです」

性教育の絵本を読ませたいなら、まず親がじっくり読んで

―――伊是名さんのブログでも性教育に関する絵本を紹介されていましたね。子どもに対しては絵本の読み聞かせから始めるのが親にとっても入りやすいと思うのですが、どんな本を選ぶとよいという基準はありますか?
「『子どもにいいもの』をそのまま子どもに与えるのではなく、まずは親が読んで内容を理解してほしいです。そして親が自分で『これはうちの子にも読ませたいな』と思ったものを読んであげてください。だって親が読まずにいきなり子どもに与えて『ママ、これ何?』と聞かれたら何も言えなくなっちゃうでしょ?
親子一緒に学ぶ意味でおすめなのは『あっ!そうなんだ!性と生』(エイデル研究所)です。どんな服を着ても、どんな色のランドセルを背負ってもいいよと、ジェンダー教育や人権教育にまで触れている本です。また、『とにかくさけんでにげるんだ』(岩崎書店)は公園で知らない人から「一緒に行こう」と声をかけられたとき、いやな触られ方をしたときにどうしたらいいか具体的な対処法が学べます。ただ性被害の描写が多いのでママやパパがびっくりしてしまうことも。一度目を通して『これは大丈夫』だと思えたら子どもにも読んであげてくださいね」

―――こういった絵本は何歳ごろからお子さんと読んでいますか?

「『性教育は5歳までに始めたほうがいい』と、北欧などの性教育先進国では言われています。5歳くらいになると物事の考え方が論理的になっていくし、自分以外の人がいることに興味を持ち、想像力が働くようになる年齢だからだそうです。うちでは2歳、3歳くらいから読み始めました。
『おれたちロケット少年』と『ポップコーン天使』(ともに子どもの未来社)という第二次性徴を迎える男の子と女の子に向けてそれぞれの体や心の変化を描いたマンガがあって、私はお友達の子どもが小6になったとき、誕生日にこの本を贈ったこともあります」


―――子どもに教えるなら、まずは親が性教育について学ぶのが先ですね。

「そうだと思います。だって性の話って子どもとの不意な会話で出てくるものなので。絵本を選んで、それだけ読ませておけばいいというものではありません。ただ、子どもから性的なことを聞かれた時に、答えづらいことならすぐに答える必要はありません。『今はわからないから調べてみようね』でもいいし、『パパとママはセックスしてるの?』など本当にプライベートなことなら『それは答えたくない』と言ってもいいと思います。日本だとプライベートについて学ぶ機会が少なくてプライベートなことも平気で聞いてしまうことがあるので。聞いてはいけないことがあるんだと学ぶのも大切ですよね」

より多くの親が「性教育」を実践すれば、世の中が大きく変わるかもしれない

伊是名さんのお話を聞いて、セックスや性被害のことだけに焦点があたりがちな性教育は、「自分の体や心を好きになって大切にすること」であるとわかりました。さらに性教育には、自分も助けてほしいときには「助けて」と言っていいことを学び、自分のことは自分で決めていいという人権教育も含まれるのだとわかりました。
現在の学校教育の現場での性教育について伊是名さんに尋ねると「学校の先生の人権が守られて、働きやすくて無理せず休める環境にならないと、子どもに対して“嫌なときは嫌って言っていいよ”とは伝えられないですよね」と悲しい顔に。まずは子育てをするママやパパが本当の意味の「性教育」について学び、それを子どもに伝えていくことで、世の中が変わっていくのかもしれないと思いました。伊是名さんの性教育への思いは著書『ママは身長100cm』にも書かれています。
(文/古川はる香)

●Profile

コラムニスト 伊是名夏子
1982年沖縄県生まれ。骨の弱い障がい「骨形成不全」で日常生活に電動車いすを使用。身長100cm、体重20kg、右耳が聞こえない。ハイリスクや妊娠、出産を乗り越え、6歳と4歳の子育てを、ヘルパーやボランティア、ファミリーサポートなど、総勢15人以上に支えられながらこなしている。「障がい者は助けてもらうのではなく、お互いに助け合う存在」をテーマに全国で講演のほか、ファッションショーや舞台でも活躍中。

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