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芸人・高山トモヒロ、魂の取材。325グラムで生まれた赤ちゃんと家族の物語

更新

2020年1月、『手のひらの赤ちゃん 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録』という本が出版されました。これはたった325グラムで生まれた女の子・奈乃羽(なのは)ちゃんを中心に、NICU(新生児集中治療室)で懸命に生きる3組の家族に起こった出来事をつづったノンフィクション。今、多くのママから “読んでいて涙が止まらなかった”との声が寄せられています。
著者は2冊の著書を持ち、書き手としても高い評価を得ているベテラン漫才師の高山トモヒロさん。「書きながらこれほど悩み、泣きながら書き進めた本は初めてでした」と振り返ります。
前回記事「325グラムで生まれた赤ちゃんが起こした奇跡と家族の愛」に引き続き、今回は高山さんに、本書を書いたきっかけと、懸命に命をつなごうとする3組の親子を間近で見て感じた“命”と“家族”、そして“幸せの形”について聞きました。

奈乃羽ちゃんの話を聞いたとき、あまりの衝撃に固まりました

―――芸人である高山さんがこの本を書かかれたきっかけは?

「本の主役である奈乃羽(なのは)ちゃんのパパ・敏哉さんから、ある日突然 “相談がある”との連絡をもらったんです。敏哉さんとは長年の知り合いで、たまに食事に行ったりしていたので、〝友達の結婚式の司会したってという話かな”くらいの気持ちで会いに行きました。すると、待ち合わせの場所に奥さんの佑里子さんもいらして、“私たちの赤ちゃんの成長記録を書いてほしい”と。

おふたりに赤ちゃんが生まれたことは知っていたのですが、妊娠6ヶ月の時に325グラムで生まれたこと、NICUで毎日必死に生きようと戦っていることはその時初めて聞きました」

―――すぐに引き受けたのですか?

「最初は固まりました。おふたりの話が、結婚式の司会とは真逆のハードな内容で、もう衝撃的過ぎて、話がほとんど頭に入ってこなかったくらいです。
でも、ハンカチで目を押さえ、時に1分2分中断しながら一生懸命話してくださる佑里子さんと、目を真っ赤にしている敏哉さん見て、“あ、これは書かな!”と。その場で “任せてください”と言いました」

赤ちゃんはママ・パパのことがわかるし、言葉も理解してる

―――本には奈乃羽ちゃんの他に、NICUで頑張っている2組の赤ちゃん&ママ・パパも登場します。辛い状況が降りかかる中、3組の赤ちゃんたちの生命力の強さが印象的です。

「取材させてもらった話の中には、お医者さんも説明できないことや医学ではとうてい考えられないこと、“奇跡”としか言えないようなことが本当にたくさんありました。
例えば、果穂ちゃんという超低出生体重児の女の子は、腸に穴が空いて緊急手術を受けたんですが、手術が難航して脈がどんどん下がってしまいました。お医者さんが果穂ちゃんのママとパパに“今晩が山かもしれません。今すぐ抱っこしてあげてください”と。
ママとパパは“これが最初で最後となる抱っこになってしまうのかも”と覚悟し、抱っこして懸命に話しかけました。すると、ダメかもと言われていた果穂ちゃんの脈が、少しずつ戻ってきたんです。そばにいたお医者さんも目を丸くして驚いているくらい、ありえないことでした」

―――なぜそのような奇跡が起こったと思いますか?

赤ちゃんはママとパパをわかっていると、僕はそう感じました。話しかけられている内容もちゃんとわかっていて、それに答えようとして、そして赤ちゃん自身がママ・パパと一緒にいたくて、すごい力を発揮しているんだと。
もちろん赤ちゃんは言葉がわかりませんが、パパとママが赤ちゃんのそばで“愛してるよ、愛してるよ、愛してるよ”って言い続けたら伝わるんだと、それは確かに感じました。
僕、そういうのは映画とかドラマの世界の話やと思ってたんです。でも、実際にそういうことがあるんやと驚かされました

小さな小さな命がつなげた“どでかい家族愛”

―――赤ちゃんの奇跡や成長とともに、登場するそれぞれのご夫婦もまた変化していきますね。

「日々の中ではケンカもあるんですよ。“病院行ってんの私ばっかりやんか”とか、“あんた5分くらいの時間あるやろ”など、些細なケンカはあるんですけど、赤ちゃんが頑張ってる姿と、退院できてひとつ屋根の下で一緒に暮らせたらいいなというママ・パパの思いが繋がって、今までケンカばかりで離婚も考えていたご夫婦が皆、仲良くなって行きました
小さな小さな命がつなげた“どでかい家族愛”みたいなものを、教えてもらいました」

―――協力し合っていても、赤ちゃんを付ききりで支える生活は大変だったのでは?

「ほとんどの方は、『この本に出てくるママ・パパはさぞ大変だろう』と思うと思うんです。僕も最初は辛いやろな、苦しいやろなとばかり思ってました。でも3組のご夫婦は全員、“幸せで幸せでたまらないんです”と言うんです。 “周りからはどう思われようが、不幸な家族とか、ついていないとか思われようが、私たち幸せなんです” と。
それが強がりじゃなく、心の底からの本当の言葉だと伝わってくるんですね。

3家族一緒に話を聞いた時もあったんですが、皆、とても明るいんですよ。赤ちゃんのことになると涙しはったりもするんですけど、誰も“私ら不幸です”とは生きてないない。心から明るく生きてるんです
だから僕も、ただ悲しいだけの話にはしたくないというのは、書いていてずっと思っていました」

毎日書くのが苦しく、ものすごい泣きました

―――書いていくうえで最も大変だったのはどんな点ですか?

「僕自身が感情移入しまくってしまったことでしょうか。だんだん3家族の身内みたいな気分になって、“うちの姪っ子が、甥っ子がこうなってんねや”って勝手に想像が膨らんで。
だから、書き進めるのが本当に苦しかったです。書きながらものすごい泣きました

同時に、小さな赤ちゃんがこんなに懸命に生きている姿はどう伝えたらいいんだ、パパとママの子どもに対する深い思いはどう伝えたらいいんだと、すごく悩みもしました。
“息を殺した”って書いたすぐ後で、意味は合っているけど“殺す”という単語はなんか違うと思って書き直したり。“この単語で合うてんねやろか”というところからすごくナーバスになって、1〜2行書いては立ち止まり、こんなに文章って進めへんもんかって思いました

大切なことを僕に伝えるため、この本を書かせてくれたのかも

―――高山さんも3人の娘さんがいらっしゃいますが、親として感じたことは?

「“今生きているのは普通のことじゃないんだ”と、強く思うようになりました。
うちの次女も小さい時に入院したことがあって、その時、嫁と僕は“明日死んだらどうしよう”とずっと泣いていました。でも、無事に退院できて、人並みにすくすく育っていったとき、それが当然になってしまっていたんですね。
本当は一つひとつの奇跡が重なって“普通に生きている”ことにつながっているのに、いつの間にか昔の涙を忘れていたんです。

それを、“今一度思い出せよ、高山”って、誰かが僕に伝えるためにこの本書かせてくれてんねんなと。もしかしたら奈乃羽ちゃんが、“高山のおっちゃん、これ書いたらもういっぺん気づくと思うよ”と言うてくれてるのかなって、そんな風に感じています。
事情の違いや程度の差はあっても、どの家族でも誰でも、乗り越えるためのいろいろな試練を与えてもろてるんじゃないでしょうか」

―――芸人としてはどうでしょう?影響を受けた点はありますか?

「今までは舞台で後輩に冷たくツッコンでも、笑いが取れたらそれでOKやったんです。でも今は強いツッコミ入れたときに、“この子にも親はおんねんな、申し訳ない”って心の中で思います。“仕事でやってます、すみません”と。
前は“芸歴30年の重み”を目標に頑張ったんですけど、今は“芸歴30年の軽み”を目標にガードをあけてます(笑)」

どんな形でも「命」が誕生するって幸せなことなんです

最後にこの本を通してママ・パパに感じて欲しいことを尋ねると、「家族愛や支え合いなどもありますが、一番は、虐待や子どもが親に殺されたというような嫌なニュースがなくなったらいいなということです」と高山さん。育てたいのに育てられないかもしれないママ・パパの、ひとつの命を大切に思う気持ちを感じてもらえたらうれしいと語ります。
そして、現在妊娠中のママには、「幸せが待ってる。ホンマ、幸せが待ってるよ!」とエールを送ってくれました。「男の子を生みたかったけど女の子だったとか、小さく生まれてきて不安やとか、いろんな心配はあるでしょうけど、でも、どんな形でも命が誕生するって幸せなんですよ」(高山さん)

わずかな可能性にかけて必死に生きる3組の家族を綴った『手のひらの赤ちゃん 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録』。ここには本当にあった現実の記録ゆえの、リアルな苦悩と喜びと奇跡、そして大きな幸せが溢れています。忙しい毎日の中で忘れてしまいがちな“大切なこと”を、私たちに再発見させてくれるかもしれません。

(文/かきの木のりみ)


手のひらの赤ちゃん - 超低出生体重児・奈乃羽ちゃんのNICU成長記録 - (ヨシモトブックス)

●Profile

高山トモヒロ(ケツカッチン)
1968年7月10日、大阪市生まれ。NSC第7期生。NSCでは故・河本栄得と漫才コンビ「河本・高山」を結成。卒業後に「ベイブ ルース」と改名する。
上方漫才大賞・新人奨励賞をはじめとする賞を総ナメにし、次世代の漫才界を担うコンビともくされていたが、1994年10月、河本栄得永眠にともない活動休止。2001年11月、和泉修と漫才コンビ「ケツカッチン」結成。
2009年、河本栄得の死から15年を経て、初めて綴った小説『ベイブルース 25歳と364日』(ヨシモトブックス、のちに幻冬舎よしもと文庫)が 反響をよび、2011年には舞台化。そして2014年には映画化された。他の著書に、ある日突然家を出た母親との思い出を綴った『通天閣さん 僕とママの、47年』(ヨシモトブックス)がある。

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