新型コロナ ママ・パパは情報から離れる時間を、臨床心理士に聞く
新型コロナウイルスの感染が広がる中での子育ては、ママ・パパにとって大きなストレスを与えています。この不安や心配を、どう乗り越えていけばいいのでしょうか。ひよこクラブでは、乳幼児の心理や親子関係に詳しい、日本女子大学人間社会学部心理学科教授の塩﨑尚美先生に聞きました。
コロナ情報から離れる時間を持つことが大切
――新型コロナウイルスに関する多くの情報が飛び交っていることで、どんどん不安が大きくなってしまうママ・パパが多いように感じます。
塩﨑先生(以下敬称略) 現在、私たちのまわりには新型コロナ情報があふれていますよね。もちろん、重要な情報の収集は必要ですが、ネガティブな情報にさらされ続けると、どんどん気持ちが後ろ向きになってしまいます。「心が疲れている」と感じたら、新型コロナ情報から少し距離を取ることを意識してください。
そして、お子さんやパパと「夏になったら〇〇をしよう」など、ちょっと先の明るい未来について話をしましょう。それだけでかなり心が軽くなると思います。
――今は「親子ともに家にいるしかない」という状況ですが、ワンオペ育児だったり、テレワークと子どもの相手を同時にしなくはいけなかったりと、普段以上にママ・パパの負担が大きくなっています。
塩﨑 今の状況でのワンオペ育児や、在宅での仕事と子育ての両立は本当につらいですね。家族以外の人に会えない閉塞(へいそく)感も、ストレスを倍増させてしまいます。
つらさを誰かに話すだけでも気持ちがラクになるので、ばあば・じいじや親しいお友だちなどに、話を聞いてもらいましょう。
その際、スマホのテレビ電話機能を使ってみて。相手の顔を見て話すとほっとするし、視覚から情報が入ると脳の切り替えがしやすく、ストレスを発散しやすくなるのです。ママ友と「オンラインお茶会(飲み会)」を開くのもいいですね。
それでも心が晴れない場合は、地元の保健センターなどに相談し、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
――この状況でも、保育園に子どもを預けて仕事をしなければいけないママ・パパは、「うちの子だけかわいそう」と感じてしまうこともあるようです。そんなときの子どもへの対応を教えてください。
塩﨑 今、保育園に子どもを預けて働くママ・パパは、医療従事者、インフラや食品関係の仕事についている人など、私たちが生きていくために必要不可欠な仕事をしてくれている人たちです。
まずは、ママ・パパが「今日もお仕事頑張ってくるからね!」と笑顔を見せましょう。そして「ママ・パパはとっても大切な仕事をしているんだよ、だから、〇〇ちゃんは保育園で楽しく遊んで待っていてね」と、子どもに伝わる言葉で説明を。さらに、「帰ったら大好きなお人形で遊ぼうね」など、帰宅後の楽しみを提案すれば、親の覚悟や子どもへの思いが伝わるはずです。
――初節句やハーフバースデー、1才の誕生日などの大切な記念日が、自粛ムードで盛大にお祝いできない…と悲しい気持ちになっているママ・パパもいます。
塩﨑 わが子の一生に一度しかない大切なイベントを、思い描いたようにお祝いできないのは、親としてとても残念ですね。でも、そこは気持ちの切り替えが大切。「来年のお節句を2倍お祝いすればいい」など、前向きに考えてください。そして、盛大にお祝いする時のことを想像して、今を乗りきりましょう。
子どもの心の育ちは、 これからの大人の行動次第
――新型コロナが落ち着いたあと、子どもの心に傷が残らないか、心配するママ・パパも多くいます。その点について、塩﨑先生の考えを教えてください。
塩﨑 今の状況が子どもの心の傷になるかどうかは、大人のこれからの行動にかかっています。周囲の大人がネガティブな発言しかしなければ、新型コロナが収まったあとも、子どもは未来に期待できなくなってしまうかもしれません。
反対に、厳しい状況を乗り越えていく姿を見せれば、子どもは困難に立ち向かう強い心を身につけ、物事を前向きに思い描くことができるようになるでしょう。
子どもの心がどう育っていくかは、全世界の大人が、これから子どもにどんなメッセージを送れるかにかかっていのです。
まずは子どものいちばん身近にいるママ・パパが、カラ元気でもいいから、明るい笑顔を見せましょう。多少無理やりにでも笑顔を作ると気持ちも切り替わり、ママ・パパも前向きになれますよ。
監修/塩崎尚美先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部
新型コロナウイルスから自分と子どもを守りながらの生活はとても大変ですが、この状況はいつか必ず終わるはず。今は「笑顔と元気」を意識して、自分自身と子どもの心を明るくすることを考えたいですね。
塩崎尚美先生(しおざきなおみ)
(日本女子大学人間社会学部心理学科教授)
Profile
臨床心理士。専門は発達臨床心理学、乳幼児からの親子関係、子育て支援。一男一女のママでもあります。