赤ちゃん・子どもが虫に刺されちゃったら、どうケアする?受診の目安は? 専門医
「実はこわい虫刺され。赤ちゃん・子どもを守るには?」連載の第3回は、虫に刺されたときのケアと、受診の目安です。神奈川県立こども医療センター・皮膚科部長の馬場直子先生に話を聞きました。
虫に刺されたときは、まずどうする!? 最初にするべき基本ケア
虫に刺されたときは、すぐに適切なケアを! 次のステップに従ってケアし、必要があれば皮膚科を受診しましょう。
STEP1 何の虫に刺されたか、わかれば確認する
何に刺されたかわかれば確認を。
STEP2 すぐに流水で洗い流す
虫に刺されたら、毒素を洗い流すために、すぐに患部を1分程度流水で洗い流したあと、石けんを使ってやさしく洗います。ゴシゴシ洗いはNG。
ハチに刺されたら、毛抜きなどで針を根元から抜いて、毒をしぼり出すようにして刺された部位を圧迫しながら流水で洗いましょう。
STEP3 保冷剤などで患部を冷やす
腫(は)れやかゆみが強いときは、タオルで包んだ保冷剤や冷水で絞ったタオルなどを患部に当てて冷やします。ただし冷やしすぎには注意! 機嫌が悪くなったら、無理に冷やさなくてもOKです。
STEP4 薬を塗る
蚊は、すぐにかゆみ止めを塗ると腫れが抑えられます。薬は、患部よりも少し広めに塗るのがポイント。
STEP5 つめを切って、かきこわしを防ぐ
患部をかきこわして傷口から細菌が入らないように、つめは短く切ってなめらかに整えておきましょう。
STEP6 受診が必要か見極める
乳幼児は、すぐに腫れるなど症状が出ないこともあるので、よく様子を見て。以下を参考に、受診が必要か見極めましょう。
直径1cm以下の腫れだけならば、自宅でケアしてOK
子どもが虫に刺されたとき「少し腫れているけど、受診したほうがいいかな?」と悩むこともあると思います。
馬場先生に、家で様子を見ていい目安を聞いたところ「ホームケアだけでいいのは直径1cm以下の腫れのときです。かゆがったりする様子がなければ、市販薬を使って様子を見てください。とくに蚊は、薬を塗るタイミングが早いほどいいので、刺されたらすぐに市販のかゆみ止めを塗りましょう」というアドバイスが。
市販のかゆみ止めは、いくつか種類がありますが、実は効果が違うそう。
「かゆみをおさえて腫れを治したいときは、軟膏(なんこう)タイプを選んでください。塗るとひんやりする液体タイプは、あくまでもかゆみを止めと考えて。いずれにしても低刺激のベビー用や子ども用を選びましょう。余裕があるならば、液体タイプでひんやりさせてから、少しおいて軟膏タイプを塗る、という方法もおすすめです」(馬場先生)
またシールタイプのかゆみ止めは、患部を触らないようにするには効果的ですが、貼り方には注意が必要です。
「シールタイプは長時間貼るとかぶれるので、12時間以内ではがしてください。2回目を貼るときは、30分ぐらい時間をあけましょう」(馬場先生)。
子どもが自分ではがして誤飲する事故もあるので、使うときは十分注意を! 手の甲や腕、足など、子どもの目につきやすい部位には貼らないほうが安心です。
かゆがるときなどは受診を! ハチに刺されたときは要注意
虫に刺されたとき
1 直径1cm以上腫れている
2 痛みやかゆみがある
3 まぶたを刺された
4 かきこわしてジュクジュクしている
5 虫に刺された部位がえぐれた
など、気になる症状があるときは受診が必要です。皮膚科で診てもらいましょう。
とくに注意が必要なのはハチに刺されたときです。馬場先生によると「ハチの針には毒があり、2回目以降は、アナフィラキシーショックを起こす危険性がある」と言います。
そのため
1 呼吸がおかしい
2 顔色が悪い
3 全身にじんましんが出た
などの場合は、至急、救急車を呼んでください。
また、スイカの種のような姿をしたマダニが子どもの体についていると、あわててしまうと思いますが、マダニは診察時間内に皮膚科で取ってもらえばいいそう。
「マダニは、血を吸うスピードもゆっくりですし、かまれても痛みは伴いません。ただし専用器具でないと取れないので、診察時間内に皮膚科を受診しましょう」(馬場先生)
かきこわしによる悪化を防ぐためにも、処方薬は医師の指示通りに
虫に刺されたときは、炎症やかゆみを抑えるために、基本的には少し強めのステロイド外用薬が処方されます。よく処方されるのは「ロコイド軟膏」「リンデロン-VG軟膏」「オイラックスHクリーム」などです。またかゆみを抑える抗ヒスタミン薬入りの塗り薬や飲み薬が処方されることもあります。
なかには「ステロイド外用薬は、あまり使いたくない」と考えるママやパパもいますが、馬場先生は「虫刺されは早く治さないと悪化して“とびひ”になったりすることもあります。そのためステロイド外用薬が処方されたときは、医師の指示通りに使ってください」と言います。
ママやパパの自己判断で、回数や塗る量を減らしたり、途中でやめたりすると、ぶり返すことがあるので注意しましょう。
お話・監修/馬場直子先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
虫に刺されたときは皮膚科!? 小児科!?と悩むママやパパもいると思いますが、馬場先生に聞いたところ、虫刺されは皮膚科が基本だそう。ただし虫に刺されたあと、熱が出るなど全身症状が見られたときは小児科へ。いざというときあわてないためにも覚えておきたいですね。
馬場直子先生(ばばなおこ)
Profile
神奈川県立こども医療センター・皮膚科部長 滋賀医科大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部附属病院皮膚科講師を経て、現職。日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会会員。とくに血管腫、母斑をはじめとする先天性皮膚疾患およびアトピー性皮膚炎を専門とする。