「保育園入園に向けてミルクの練習を」と言い続けてきた保育士ママ。体験してわかった一筋縄ではいかないこと
フリーランス保育士で2児の母の相原です。新生児のときには飲んでいたのに、母乳が軌道に乗ってミルクをしばらくやめてたら、いざというときに飲まなかった…なんて経験、ありませんか? 我が家はありました。保育園に預けるまで、5カ月の息子と繰り広げたミルク練習30日奮闘記をお伝えします!
相原 里紗
保育士・のあそびっこプロジェクト 主宰
早稲田大学国際教養学部卒。(株)オールアバウトを経て国家試験で保育士に。親子×のあそび×地域を軸とした「のあそびっこプロジェクト」他、親子向けイベントを多数企画・運営している。0歳、2歳の男子育児に奮闘中。
え、飲まないの!?保育園に向けたミルク練習月間スタート
2月下旬のとある昼下がり、我が家では大問題が発生していました。
4月から保育園に通う次男に久しぶりにミルクを飲ませたら、見向きもせず、断固拒否したのです。
その時次男は5カ月。新生児の頃しばらくは混合でミルクも飲んでいたのですが、実に4カ月ぶりのミルク。確かに、母乳育児が軌道に乗ってからはミルクを作るのが面倒で100%母乳でした。
そうか、これが世の母たちが保育園入園前に悩む「ミルク飲まない問題」か!
園にいた頃は「練習してきてくださいね」と一言、入園前面談でお伝えしていたミルク。飲んできてくれないと、保育園で先生がドタバタ、赤ちゃん大泣き。そんな未来が頭をよぎる…
ここから、保育士の意地とプライドをかけたミルク練習月間がスタートしました。
まるで実験!パターンを洗い出しながら飲まない理由を探せ
保育士時代の知識と先輩ママたちからの情報、通園予定の保育園(長男の送迎で毎日先生たちに会う)の先生にアドバイスをもらいながら、一つ一つ「なぜ飲まないか」を検証する、日々がスタートしました。
飲まない理由1:哺乳瓶の乳首が苦手
大手ベビー用品メーカーから海外メーカーまで多種多様な哺乳瓶が出ていて、哺乳瓶の乳首の味・形・固さもさまざまで、赤ちゃんによっては好みがあります。
第一子の時に使っていた2種類、友人からもらった1種類、購入した1種類の計4種類の哺乳瓶を試し、1つは乳首も2種類でトライアル。
ミルクとの組み合わせまで入れるとパターンが増えてしまうので、まずは絶対に飲む母乳を搾乳し、同条件にして飲める哺乳瓶(乳首)を日替わりで探していきました。
最終的に、どれも積極的には飲んでくれないので、ほんの少し飲んでくれた哺乳瓶に決めて、それを根気よく使う方針にしました。
飲まない理由2:ミルクの味が好きじゃない
ミルクもまた種類がたくさんありますよね。栄養価的には大きくは変わりませんが、メーカーごとに工夫されているので味も微妙に違います。その小さな違いが赤ちゃんにとっては大きな違いで、これも好き嫌いがあるんです。
我が家は、新生児期に助産院であげていた粉ミルクを最初に試したところ飲まなかったため、その後近所のドラッグストアで小分けで販売されている別の粉ミルクを試してみました。このタイミングで1缶入りを買ってしまうと、飲まなかったときにミルクがどんどん溜まっていってしまうので、小さく試せるものから挑戦です。
ここで哺乳瓶を登場させるとややこしくなるので、味を決める時はスプーンで。新しく買ったほうは飲みそうだったので、それに決めて進めることにしました。
飲まない理由3:ミルクの温度
ミルクは人肌よりちょっと熱めの40℃前後であげていました。
しかし、息子はここに大きなこだわりがあることが発覚。
どうしても飲まなかったため、試しに搾乳したおっぱいを自分で飲んでみてその温度くらいに調乳してみました。すると、なんとゴクゴクと飲んだのです!
母乳大好きな赤ちゃんの場合、母乳に条件を近づけてみるのも一つの手段だと思います。
参考:ミルクの作り方 | ミルクについて
飲まない理由4:母だから飲まない
「おっぱいが出ると思うから、母だと飲まない」という噂を聞いたのと、長期化するミルク練習に家族を巻きこもうということで、休みの日のミルクは夫が担当。
これは我が家の場合はあまり功を奏さず。私でも夫でも、あまり変化はありませんでした。
ただ、夫も当事者意識を持ってミルク練習に取り組むようになってくれて、日々の小さな成果を話し、励ましあいながら進められました。長男も「のましてあげるー!」と手伝ってくれたり話し相手になってくれたり、思った以上に心の支えになってくれました。子どもの問題は家族の問題!全員を巻き込むつもりでやっていくのが良さそうです。
飲まない理由5:飲む体勢・環境
ミルクをあげるときの基本姿勢は”赤ちゃんを横抱きにして、乳首を含ませる”です。
赤ちゃんとのアイコンタクトや愛着形成への思いから、保育園勤務していたときも一人ずつ抱っこであげていました。
ところが息子はその姿勢だとミルクに見向きもせず…この体勢になるとおっぱいが出てくると思っている様子。夫にも同じ体勢で飲ませてもらいましたが飲もうとせず、試しに床に寝転がしてみたところ、なんとゴクゴクゴクと飲んだのです。。えええ、その体勢で飲むの!
ミルクの環境をとても大切だと、保育園勤務時代は思っていました。静かな落ち着いた空間でミルクを飲ませることで、安心して飲むことができます。
しかし息子は、なんと静かだと飲まないタイプでした。飲んでいる間は、歌を歌い続ける、音のなるおもちゃを鳴らすなど、気分を盛り上げる工夫が必要。「カラオケの合いの手か!」と一人で突っ込みながら、必死でマラカスを鳴らしていました。
参考:粉ミルクの飲ませ方|和光堂わこちゃんカフェ
発見!これが我が子のベストミルクスタイル
試行錯誤の結果、息子が行きついたミルクスタイルは、
●日本で最も流通している哺乳瓶(最後に買い足したもの)
●某社の通常価格帯のミルク(助産院でゴクゴク飲んでいたものではない)
●温度は人肌、もしくはちょっと低めくらい程度(母乳の温度にできるだけ近づける)
●寝っ転がってマラカスor歌を歌いながら!
試行錯誤の結果行きついたのは、当初想像もしなかったスタイルでした。
これを見つけ出すまでに2週間を費やし、このスタイルで安定して飲めるまでに更に2週間の猛練習(と言っても嫌いにならないように1日1回)。10ml、20ml…と少しずつ増えていき、100mlを超えた頃からは安定的に増えていって、200mlまで!
最終的には、抱っこでも夫でも長男でも、温度も気にせず、盛り上げずとも飲めるようになりました。
無事に慣らし保育完了!そしてやってきたコロナと離乳食
そして迎えた4月。コロナ対策バッチリの入園式を終え、1週間の慣らし保育。ミルクもしっかり飲んで、15時まで問題なく過ごすことができるようになりました。一つミッションを終えてホッとしたのもつかぬ間、まさかの緊急事態宣言により保育園休園!
入園時6カ月だった息子は、休園中に離乳食をスタートさせ、登園できるようになった6月半ばには、立派な食いしん坊に成長。もちろん休園中も忘れないようにと1日1回のミルクは欠かさずあげていましたが…登園再開とともに先生から「今日も3カ月月齢上の子と同じ量食べました!それでお腹いっぱいなのかミルクは飲まないんです…」というお言葉。1カ月後、保育園に預けていたミルクは我が家に返ってきたのでした。
ミルク練習は長期戦。赤ちゃんの好みを探そう
試行錯誤の連続だった30日間。夫も長男も総動員して、みんなでミルクを飲ませようと取り組んだプロジェクトは、オチがついたものの身を結びました。保育園では飲まなくなりましたが「いざとなったらミルクがある!」と思うとなんと心強いことか。今回の教訓は、ミルク練習は、試行錯誤の時間、家族の負担、そして何より赤ちゃんの負担を考えると長期戦を覚悟したほうが良いということです。試行錯誤も楽しみつつ上手に乗り切りたいですね。
飲み出すまでの試行錯誤、飲んだら少しずつ量を増やす…30日間のミルク練習は、家族全員で取り組んだ一大プロジェクトでした。「ミルク飲まない!」と頑張っているみなさん、きょうは飲まなくても、翌日はちょっと飲むかもしれません。いろいろ工夫しながら、ぜひ根気よく取り組んでみてくださいね!