秋・冬小児に流行するウイルス感染症! かかってしまったときのケアと家族内感染予防とは?【小児科医監修】
新型コロナウイルスの収束も見えない中、インフルエンザなどが流行るこれからの季節、注意したいのが家族内感染です。万一、家族全員で感染すると、子どものケアやお世話が思うようにできないなど大変なことに! 帝京大学医学部附属溝口病院の小児科医・黒澤照喜先生に、10月8日現在でわかっている今シーズンの感染症情報と家族内感染を防ぐコツについて聞きました。「新型コロナだけじゃない、秋冬の感染症対策」連載4回目です。
猛暑から一転! 急に寒くなり、上気道炎や胃腸炎で受診する子が増加傾向に
秋・冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行が懸念される報道が続いています。
しかし乳幼児の場合は、注意したほうがいい感染症が少し異なるようです。
「乳幼児は新型コロナウイルス感染症よりも、RSウイルス感染症、インフルエンザが心配です。
また最近は、急に寒くなったため鼻水、せき、くしゃみ、のどの痛みなどを伴う上気道炎や胃腸炎も流行り始めました。
とくに保育園に入園して間もないお子さんは、風邪の症状が長引いたり、次から次へと風邪にかかったりすることがあるので、気になるときは小児科へ。風邪だと思ったら、実はRSウイルス感染症というケースもあります」(黒澤先生)
【黒澤先生がアドバイス】RSウイルス、ウイルス性胃腸炎、インフルエンザにかかってしまったら?
RSウイルス感染症やウイルス性胃腸炎、インフルエンザは小児がかかると重症化したり、治っても本調子になかなか戻らないことも。ママたちから寄せられた病気の体験に、黒澤先生がアドバイスします。
【病気体験談】5カ月でRSウイルス感染症に。風邪だと思ったので驚きました
5カ月から、保育園に通い始めました。しかし入園後すぐに、せきと鼻水が! 風邪だと思って、休日診療で病院を受診したところ「RSウイルス感染症」と診断されました。風邪と同じ症状だったので驚きました。
【黒澤先生より】6カ月ぐらいまでは油断禁物! 風邪症状から、呼吸困難を起こす子も
RSウイルス感染症は、幼児はただの鼻風邪で終わることが多いです。ただし6カ月ぐらいまでは、細気管支炎や肺炎などを起こす場合もあるので注意が必要です。最初の2~3日は、せき・鼻水の症状だったのが、4~6日ぐらいするとゼーゼーとぜん息のような呼吸に変わることもあります。「苦しくて眠れない・機嫌が悪い」「おっぱい・ミルクを飲まない」など気になる様子があるときは、すぐに小児科を受診してください。
また保育園の登園は、かかりつけの小児科医とよく相談を。0歳児クラスは免疫をもっていない子たちの集まりなので、園での感染拡大を防ぐためにも、登園は慎重に判断しましょう。
【病気体験談】ウイルス性胃腸炎で入院! ママにも感染
昨年の冬、息子がウイルス性胃腸炎で脱水症なり入院しました。下痢と嘔吐(おうと)が続いて、とにかく機嫌が悪くて…。こまめに水分補給をしていたつもりですが追いつきませんでした。私も感染して、大変でした。
【黒澤先生より】重い脱水症や水分を受けつけないと入院の可能性が
ウイルス性胃腸炎で入院が必要なのは、重い脱水症や水分をまったく受けつけないときです。また嘔吐が続いている場合や家族全員が重い胃腸炎に感染して、赤ちゃんのお世話ができないと、赤ちゃんに入院してもらうこともあります。
ウイルス性胃腸炎で最も注意してほしいのは脱水症です。ウイルス性胃腸炎は、ウイルスが口から入るため、最初は嘔吐、その後下痢の症状が見られます。
水分補給は、嘔吐が止まってきたら少量ずつこまめに行ってください。下痢の間は、いつもより多めに水分補給をしましょう。
【病気体験談】インフルエンザにかかったのですが、解熱後も元気がありません
昨年末、子どもがインフルエンザになり、40度を越える高熱が! タミフルを服用したら3日目に解熱し、少しずつ回復しました。しかし解熱後、数日しても元気がなくて…。遊んでいても笑顔が減り、だるそうです。
【黒澤先生より】体調が戻るには10日程度かかることも。念のため再診を
インフルエンザウイルスはタミフルを服用しても、すぐにウイルスの残存率がゼロになる訳ではありません。またインフルエンザにかかると、大人でもなかなか体調が回復しません。乳幼児の場合は、回復まで10日程度かかる子もいます。
もし解熱後も元気がなく「食べる・寝る・遊ぶ」様子がいつもと違うならば、念のため再診してください。
インフルエンザ、ロタウイルスの家族内感染を防ぐには予防接種が有効
感染症を防ぐのに有効なのが、予防接種です。インフルエンザの予防接種は、すでに接種が始まっている小児科もあります。
ロタウイルスワクチンは、2020年10月から定期接種になりましたが、効果はどの程度期待できるのでしょうか。
「明確なデータはありませんが、抗体は1カ月程度でつくようです。ただし、ほかのワクチン同様、必要回数を接種しなければ、持続的に十分な免疫を得られません。
ロタウイルスワクチンには、2回接種のロタリックス、3回接種のロタテックがありますが、効果に差はないとされています」(黒澤先生)
ロタウイルスワクチンは、口から飲む経口ワクチンで、6週から飲むことができますが、初回はなるべく早いほうがいいのでしょうか。
「6週からでも可能ですが、ほかのワクチンとの兼ね合いを考えて2カ月からの接種が推奨されています。
ウイルス性胃腸炎にはいくつか種類がありますが、小児でいちばん注意が必要なのはロタウイルスです。対象の子は必ず予防接種を受けましょう。予防接種を受ければ、ロタウイルス胃腸炎にはかかりにくくなりますし、かかっても重症化が防げます」(黒澤先生)
万一、家族に感染者が出たら、感染を広げない対策が第一
RSウイルス感染症、ウイルス性胃腸炎、インフルエンザは接触感染、飛沫感染でうつるので、もし家族に感染者が出た場合は、次の予防を心がけてください。「もしかして新型コロナウイルス!?」と思ったときも、診断がつくまでは同様の方法で感染を防ぎましょう。
【基本の予防】ウイルス感染症にかかった家族からの家庭内感染を防ぐポイント7
[1]感染者とはタオル、食器などの共有を避ける
[2]食事は別盛りにする
[3]看病をする大人はマスクを着用する
[4]感染者に触れたあとなど、石けんを使って手洗いをする。うがいもこまめにする
[5]感染者とできるだけ部屋は分ける
[6]上の子が感染した場合は、症状がおさまるまでは下の子と接触させない
[7]感染したら大人も子どもも受診をして、ホームケアや薬の服用は医師の指示に従う
【ウイルス性胃腸炎なら】上記の家庭内感染予防ポイントにプラスして以下も注意を
さらにウイルス性胃腸炎の場合は、次の点にも注意が必要です。
[1]おむつ替えのときは使い捨て手袋を着用する
[2]トイレは便座のふたをしてから流す
[3]感染者の入浴は、最後にする
[4]嘔吐物を入れたゴミ袋の空気は、室内で抜かない
お話・監修/黒澤照喜先生 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
インフルエンザやウイルス性胃腸炎の感染対策に有効なのが予防接種です。しかし新型コロナウイルスの流行で「小児科に行くのが怖い」「ロタウイルワクチンを接種したいけれど、赤ちゃんがまだ小さくて」と悩んでいるママやパパもいるでしょう。しかし黒澤先生は「新型コロナウイルスにはワクチンのような確実な予防法がありません。しかしインフルエンザやロタウイルスは予防接種で予防ができます。乳幼児は、インフルエンザやロタウイルスに万一感染すると重症化するリスクが高いので、予防接種を受けるメリットは大きいです」と言います。
黒澤照喜先生(くろさわてるよし)
Profile
帝京大学医学部附属溝口病院・小児科。小児科医。東京大学医学部卒業。都立小児総合医療センターなどを経て、現在は帝京大学医学部附属溝口病院小児科に勤務。3人のお子さんのパパ。
※文中のコメントは口コミサイト「ウィメンズパーク」の投稿からの抜粋です