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発達障害と診断された子のうち、2割は誤診の可能性が セカンドオピニオンの重要性【専門医提言】

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かわいいアジアの女の子彼女の顔を閉じるとピーカブーを再生または非表示し、シーク
Sasiistock/gettyimages

30年にわたって発達障害の研究を続け、日本の発達障害研究の第一人者である榊原洋一先生は「発達障害と診断された子どもたちの2割が誤診かもしれない」と警鐘を鳴らします。数多くの子どもたちを診てきた榊原先生に、発達障害の診察・診断の現状について聞きました。

発達障害と診断された100人の子どものうち、20人は発達障害ではなかった

発達障害が注目され、広く知られるようになったのは2000年ごろから。でも、「正しく理解されていないことも多い」と榊原先生は言います。
「発達障害」という名称についてもそうです。「発達障害」は固有の診断名ではなく、「注意欠陥多動性障害」「自閉症スペクトラム障害」「学習障害」の総称。この3つは別々の障害で、対応も治療法も異なります。

――榊原先生が「2割の子どもが誤診ではないか」と考えられた経緯を教えてください。

榊原先生(以下、敬称略) 私が週3回外来診療を行っている診療所には、子どもが自閉症スペクトラム障害などの発達障害と診断されたけれど、お母さんやお父さんが納得できずにセカンドオピニオンを求めて来院するケースや、初診の先生から紹介されて来院するケースが多いのです。そのような子どもを、半年間で100人程度診察しました。そして、そのうちの20人近くを、私は発達障害ではないと診断しました。
もちろん、日本中で発達障害の誤診が多発している、と言いたいわけではありません。あくまでも私が診察した子どもたちに限定した話です。

――100人に20人が誤診だとすると、5人に1人は正しく診断されていないことになります。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

榊原 誤診ではないかと私が診断した子どもたちは、その子の行動の一部や、『M-CHAT』などの行動評価スケールのチェックリストだけで、自閉症スペクトラム障害などの発達障害と診断されていました。
私はチェックリストを使ったり、お母さんやお父さんの話を聞いたりする前に、子どもとじっくり話をして、十分に時間を取って診察します。その結果、「発達障害ではない」と診断した子どもたちが100人のうち20人いたということです。
念のために、それらの子どもたちのその後の経過も診ていますが、ほとんどの子は何の問題もなく幼稚園や小学校に通い、社会生活を健全に送ることができています。

――誤診されることで、子どもたちが受ける最も大きな不利益はなんでしょうか。

榊原 いちばんの懸念は、子どもの将来を変えてしまう可能性があるということです。発達障害と診断されて、特別支援学校(学級)に通うことを選ぶ場合もあります。すると、通常学級で行うような教育は受けられなくなるため、途中で通常学級に戻るのは非常に困難になってしまうのです。

発達障害を診察できる医療機関・医師が少ないことも要因に

--発達障害の研究は進んでおり、わかってきたことも多いと聞きます。それなのに誤診が起きてしまうのはなぜでしょうか。

榊原 たしかに発達障害の研究は日進月歩で進んでいて、それはたいへん喜ばしいことです。しかし、研究が進んだことで、研究者がさまざまな見解の元で診断を下すようになっています。
発達障害は脳波やCTなどの検査だけでは診断できないので、医師の診察で判断することになります。そのため、医師の医療方針・診療方針によって診断結果が異なってしまうことがあるのです。

さらに、発達障害を診断できる医療機関や専門医が少ないことも要因として考えられます。前述のチェックリストは短時間でスクリーニングできるのがメリットですが、チェックで「ハイリスク」という結果が出た場合も、その子が発達障害である確率は50%前後なんです。つまり、約半数は障害がない可能性があるということです。
そのため、時間をおいて複数回チェックすることが推奨されているのですが、1日にたくさんの子どもを見なければいけない医療機関では、何度もチェックしたり、子どもの様子をじっくり観察したりする時間を取ることができません。それが、誤診を生むことにつながってしまうのではないかと考えています。

--発達障害の診察・診断を行う先生方も、短時間診療をよしとしているわけでなく、やむを得ずそうなってしまう現状があるということがわかりました。子どもの発達障害を診てくれる先生は、どのような勉強(研究)をされている方なのでしょうか。

榊原 子どもの発達障害の診断を下すのは小児科医で、小児神経や発達心理などについて学び、研究している医師が診察を行っています。小児科医は全国に約1万7000人(2018年12月31日現在)いますが、発達障害の診断が可能な小児神経専門医は約1000人。圧倒的に数がたりないのが現状です。

診断に少しでも疑問を感じたらセカンドオピニオンを求めよう

――自閉症スペクトラムなどの発達障害と医師に診断されたけれど、子どもの普段の様子を見ていて「本当に発達障害なんだろうか…」と疑問に思った場合、お母さんやお父さんはどのように対応すればいいのでしょうか。

榊原 発達障害を診てくれるほかの医師に、セカンドオピニオンを求めてください。発達障害の専門医がいる市立や県立の病院、大学病院などが適しています。
セカンドオピニオンは基本的には、最初に診察した医師が紹介状を書いて行いますが、紹介状などがない場合は、前の先生の診断名を最初から説明することは、必ずしも必要ないと思います。先入観を持たずに子どもを診てもらうことが大切だからです。
そして、子どものどんなところを育てににくいと感じるか、子ども本人が困っているのはどんなことなのかを説明しましょう。できたら、お母さんやお父さんの話を聞く前に子どもと話をしたり、子どもの行動を観察したりしてくれる医師がベストです。

――市立・県立病院や大学病院などの大病院は、紹介状がないと受診できないのでは?

榊原 中には紹介状がないと受診できないというルールを作っている病院もありますが、多くは診てもらえます。ただし、紹介状がない場合は、初診では5000円以上、再診では2500円以上の「特別の料金」がかかります。

子どものことをいちばんよくわかっているのはお母さんとお父さん。「この子が発達障害だとは思えない」と少しでも感じた場合は、納得できる説明をしてくれる医師を探してください。
お母さんやお父さんのそうした行動が、子どもの将来を大きく左右することになるかもしれないのです。

お話・監修/榊原洋一先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

子どもが発達障害と診断されると、お母さんやお父さんは少なからずショックを感じることでしょう。でも、わずかでも疑問を感じたらそのままにせず、納得できる診察・診断をしてくれる先生を探すことが大切です。

榊原洋一先生(さかきはらよういち)

Profile 
東京大学医学部卒。お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長・発達障害研究の第一人者であり、現在も子どもの発達に関する診察、診断、診療を行う。「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ社)など、発達障害に関する著書多数

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