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時にはマスクを外して心やことばの発達と感染予防のバランスを 村中璃子医師特別寄稿

緊急事態宣言で揺れる今、「このままいったら、また休園・休校?」「なんで今回は休園・休校にならないの?」など、不安に思うママ・パパのために、ドイツ在住で、WHO(世界保健機関)でパンデミック対策に携わった経験を持つ村中璃子医師に、前回記事「新型コロナ、再びの一斉休園・休校をふせぐためにできること」に引き続き、マスクと幼児の付き合い方について、2021年1月11日時点の考えを寄稿してもらいました。

小さい子ほど症状が軽く感染もしづらい傾向に

わたしの暮らすドイツでは、全国にある3000の保育所に通う0から5歳の子どもとその親や保育士の新型コロナ感染について、春のロックダウン解除後の5月から、数万人規模のデータを集めています。

その中で分かってきたことは、「子ども」と一言でいっても、子どもの年齢によって新型コロナへの感染しやすさが大きく異なっていることです。

まず、0から5歳児の子どもは、小学校以上の子どもよりも新型コロナに感染しずらいことが分かりました。また、保育所に通っている子どもの感染は、2020年春のロックダウン以降、市中感染が再び蔓延しはじめた10月までの期間でみれば、むしろ保育所に通っていない同年代の子どもよりも少ない傾向にあり、「保育所に通うことが感染のリスクとは言えない」という評価も出てきました。

このデータと小学生以上の子どものデータを合わせると、さらに興味深いことが分かりました。

0歳から小学校2年生までの子どもの新型コロナ感染例はほとんどないが、3,4年生を移行期として、5年生以上の子どもたちでは市中感染の拡大につれて大人と同じように感染するようになる、つまり、マスクも手洗いもできるし、勉強もある程度はひとりでできる年齢の子どもの感染のリスクが高いけれど、大人がつきっきりで面倒を見る必要のある小さな子どもの感染リスクは低いというのです。

これは朗報です。もしこれが逆で、小さい子は感染しやすいけれど、大きい子は感染しにくいという話だったら本当に大変でした。今後は、万が一市中感染が蔓延してしまった場合でも、保育所も学校もいきなり一斉閉鎖ではなく、小学校高学年以上から休校とするなど、よりきめ細かな対策をとれる可能性が出てきたのです。

子どもの成長にはことばと表情、どちらも必要

先日、幼稚園の園長先生方の団体に招かれ、講演をする機会がありました。
その中で、園でのマスク着用に関する相談を受けました。

言葉の分からない年齢の子どもたちは、大人の話す言葉の中身だけでなく、顔の表情などあらゆる情報を総合して相手の言っていることの意味を読みとろうとします。自分は褒められているのか、怒られているのか。相手は喜んでいるのか、悲しんでいるのか。子どもたちは、大人が伝えようとしているメッセージを、音として聞こえてくる言葉だけでなく、口元を含めた顔全体の表情から行っているのです。また、大人の口元を真似することを通じて、言葉の正しい発声も習得しています。

そのことを考えれば、子どもたちを新型コロナから守るためとはいえ、保育士が常にマスクで口元を覆っていることが子どもの心や言語の発達に与える影響が心配だというのです。

そこで保育士の先生方にアドバイスしたのは、「マスクを外す時間をあえて作ること」。
最大のチャンスは、外にお散歩に行く時間です。

日本では、家庭以外の場所ではいつでもマスクをすることが一種のエチケットとして定着していますが、人と人との距離が十分にとれる屋外で、マスクの必要性はほとんどないと考えられています。屋外では飛沫はあっという間に空気中に拡散してしまうし、その過程で多くのウイルスが壊れてしまうからです。

十分な距離があれば、マスクを取って話しかけたところで、感染した大人の飛沫が子どもに届き、それを大量に吸い込むといったリスクは高くありません。また、子どもの肺は小さいため吐き出される飛沫の量も少なく、顔に向かって大きなくしゃみでもされない限りは、大人が感染した子どもの飛沫を大量に吸い込んでしまうようなリスクもほとんどないと言えるでしょう。

拡大の一途を続ける新型コロナを前に、保育所でもより一層対策を強化しなければならないという気持ちになるかもしれません。しかし、はじめにお伝えしたとおり、小さい子は一般に新型コロナに感染しにくい傾向にあります。言葉ができないためにアンダーレポート(過少報告)である可能性を差し引いても、その傾向はあると言われています。症状もごくごく軽いのが特徴です。屋外などリスクの低い環境では無理してマスクを着用せず、積極的にマスクを外すようにしてみるのはいかがでしょうか。

幸い、子どもの順応性は大人が想像していたよりもずっと高く、保育所や学校で自分がマスクをすることにも大人たちがマスクをしていることにも、慣れています。

それでも、表情を確認しながらのコミュニケーションは、子どもたちの健全な発達や成長に欠かせないもの。

子どもが園から家庭にウイルスを持ちこまないか、自分の子が家庭から園にウイルスを持ちこんでしまわまないかと心配になる気持ちもよく分かりますが、親御さんも保育所にパーフェクトを求めず、保育所もゼロ失点を目指して疲弊してしまうことのないよう、バランスをとって対策を続けていくことが大切なのではないでしょうか。

村中璃子先生
PROFILE
医師・ジャーナリスト。一橋大学社会学部出身、北海道大学医学部卒。京都大学医学研究科非常勤講師。WHOの新興・再興感染症チームの勤務を経て、現在は医業の傍ら、執筆や講演活動を行っている。2017年、科学誌『ネイチャー』等主催のジョン・マドックス賞を、日本人として初めて受賞。海外メディアにもたびたび取り上げられ、世界からも注目を集める。著書に、『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』 (2018年、平凡社刊)。近著に『新型コロナから見えた日本の弱点~国防としての感染症~ 』(2020年、光文社新書)

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