「頑張りすぎない家事」の工夫・ラクチン家事への切り替え方【専門家】
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仕事や育児をしながら家事をするのは大変なことです。でも、いざ家事を省略しようとしても、具体的にどうしたらいいのかわからない…という場合もあるかもしれません。
子どもを含め、家族で家事を分担する“家庭内ワークシェアリング”を提案する家事研究家の佐光紀子さんに、家事をラクにして、負担を減らす具体的な方法を聞きました。
家事の何が負担になっているか、立ち止まって考えることが大切
自身も働きながら3人のお子さんを育ててきた佐光さん。これまでいろいろな家事を省略し、負担を減らしてきたそうです。
「私の母は『家事はきちんとするべきだけど、手がまわらないところは人に任せてもいい』と思っている人でした。母のこうした考え方のおかげで、私も苦手な家事は簡略化したり、省略したりしようと思うようになりました。
家事を減らすにはまず、『自分が負担に思っている家事は何か』に気づくことが大切です。
あわただしい毎日のなかでは、つい見逃しがちですが、一度立ち止まって、どうしてそれが嫌なのかを考えてみましょう。『その家事のどんなところが嫌なのか』がわかれば解決策が見えてくるはず。また、人の意見を聞いてみることで、『自分も試してみよう』と参考になる場合もあるはずです」(佐光さん)
それでは、佐光さんがどのように負担を減らしていったのでしょうか。具体的に聞いてみました。
便利な家電も、本当に必要か一度見直しを
家にあって当たり前の家電。必要なものを厳選することで、身軽になる場合もあるそうです。
「子どもが小さかったころ、掃除は子どもが寝ているときにしたいと思っていました。でも、掃除機は音が大きいのでかけ始めると子どもが目を覚ましてしまいます。そこで、思いきって掃除機をやめてホウキにすることに。すると、音を気にすることなく、さっと掃除ができるようになりました。夜でも気兼ねなく掃除できるというメリットもあります。
また、キッチンに家電がたくさんあると場所も取るし掃除が大変だと思い、炊飯器や保温ポットもやめました。でも、意外に不便さはありません。スペースがあくので、キッチンがスッキリし、掃除の手間も減りました。
家電は便利です。でも、自分のライフスタイルに合わないものは手放すことで、身軽になる場合もあります。もちろん、全部を処分する必要はないのですが、1~2週間使わない期間を設け、無くていけそうだな、無いほうがラクだなと思ったらやめるのもありだと思います」(佐光さん)
掃除や整理整頓が苦手な場合は、管理できるだけのものを持つように
なかなか部屋が片づかないという場合は、物の数を減らしましょう。
「私は整理整頓が苦手で、物が増えるとどこに何があるかわからなくなってしまうタイプです。とくに、子どものおもちゃは部屋中に散乱して、片づけるのが大変でした。数を減らしてみたらどうなるんだろうと思って、子どもが大切にしているものを残して、段ボールにしまってみました。すると、子どもは気づきませんでした。
管理できる数だけ残すことで、整理整頓しやすくなります」(佐光さん)
トイレや玄関のマットも処分したそうです。
「トイレの掃除が嫌だったので、何が負担なのか考えたところ、私が苦手なのは汚れてくさくなったトイレマットを触ったり洗濯したりすることでした。そこで、マット自体をやめることにしました。すると、掃除がとてもラクに。負担が減ったことで、トイレを掃除する頻度もぐんと増えました。おまけにマットだけ別に洗濯する手間がなくなり、しまう場所もスッキリしました。同様に玄関マットも処分したら掃除しやすくなりました。玄関マットも、トイレマットも、家族は不便にも思わなかったようで、とくに文句も言われませんでした」(佐光さん)
洗濯物はハンガーにかけて干してそのままクローゼットに。たたまない!
子どもが自分で着る服を選ぶようになってから、洗濯物はたたまなくなったと言います。
「3人目の子どもの長女は、洋服にこだわるタイプだったので、朝、着る服を決めるのに『これは嫌、あれは違う』と何枚も引っ張り出しては床に散らかしていました。
そこで、洋服はたたまずハンガーにかけて管理することに。洋服を選ぶ際も、パッと見てどんな服かわかるので、洋服を選びやすくなりました。
この方法にしてから、洗濯物はハンガーに干し、そのままクローゼットにしまうように。洗濯物をたたむ手間も省略できました。
洋服の枚数も、子ども自身が管理できるだけに減らしました。ヘビロテするものと着替え用だけをクローゼットにかけるようにしたので、どんな服があるかすぐわかるようになったと思います」(佐光さん)
困っていることは人に相談してみると、思いがけない解決策が見つかることも
負担に思っていることを減らそうとしても、自分だけではいい解決策が見つからないことも。そういうときは、第3者に相談してみるのもおすすめです。
「うちの家族はいか料理が好きだったので、よく食卓に出していました。でも、私はいかの皮をむくのが大の苦手。あるとき、ママ友に『いかの皮をむくのが本当に嫌なんだよね』と相談してみました。すると『別にむかなくても平気だよ』という予想外の答えが。そこである日、皮をむかずに調理したいかを出してみました。すると、家族はだれも気づきませんでした。思いこんでいた私では『いかの皮をむかない』という解決策は見つけられませんでしたが、第3者にちらりと話したおかげで苦手だったことがやる必要のないことだったと認識できました。
家事も育児も、困ったことは同じ立場のママ友などに相談してみると、思いがけないアイデアがもらえることがあります。もし、解決策が浮かばなくても『わかる、大変だよね』と共感してもらえるだけでも心が軽くなるはず」(佐光さん)
とはいえ、相談する相手には注意が必要です。
「気をつけたいのは、おばあちゃんなど家事の達人に相談しないこと。『それくらいできて当たり前でしょ』などと言われると、かえって落ち込んでしまう可能性があります。なるべく似たような状況の人に相談できると、自分でもできる解決策が出てきますよ。ママ友同士の雑談から気づくことも多いでしょう」(佐光さん)
お話・監修/佐光紀子さん 取材・文/齋田多恵、ひよこクラブ編集部
私たちには、“家事はきちんとするべきもの”という思いこみが強すぎるのかもしれません。実はやめてもそれほど困らないものもたくさんあるのかも…。負担に感じるものは、思いきって省略しませんか。家族から何も言われなければその家事はカットし、もし不便があれば、ほかの方法を模索していけばいいんです。その家庭に合った、ラクな方法は必ずあるはず。第3者の意見も聞くなどして、どんどん負担を減らしていきましょう。
佐光紀子さん(さこうのりこ)
Profile
翻訳家、家事研究家。国際基督教大学を卒業。繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に携わったあと、フリーの翻訳者に。本の翻訳をきっかけに、重曹や酢などの自然素材を使った家事に目覚め、研究を始める。2017年、「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす 」(光文社新書)を出版。掃除講座や執筆活動を展開中。