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佐波の告白に部長の返事は?【小説「ご懐妊!!」Vol.9】

更新

『ご懐妊!!』Vol.9
スターツ出版文庫の大人気小説『ご懐妊!!』が、たまひよWEBにて連載中。「たまごクラブ」でもおなじみの産科医・大浦訓章先生のひと言解説もお見逃しなく。

●これまでのあらすじ
広告代理店で仕事に打ち込む佐波。悩みといえば、上司のイケメン鬼部長・一色が苦手なことくらい。それなのに、お酒の勢いで彼と一夜を共にしてしまい、後日、妊娠が判明!不安と途惑いの中、佐波はある決心をし部長に「赤ちゃんがいます」と告げた……、部長の答えは?


三ヵ月

私の顔が、さぞ困惑して見えたのだろう。部長は手を放し、私に向き直る。
「腹の子は、俺たちの一時の激情でできた。この子に申し訳ないと思う気持ちはあるか?」
「それは! ……それはありますけど!」
 真剣な瞳に気圧(けお)される。だけど、そんな簡単な話じゃないでしょう?
 うろたえる私に、彼は言葉を追加する。
「じゃあ、責任を取ろう。ふたりで、この子に対して。俺の言ってることは違うか?」
「違いません……」
「だったら、結婚するぞ!」
 あれ。最近、どっかで似た言葉を聞いたような……。あ、涼也だ。『それが義理人情ってやつやないか?』って。
 部長は、もっとドライな人間だと思っていた。それが、まさか仕事並みの情熱を見せてくれるとは。
「部長は、いいんですか? 責任で……私なんかと結婚しちゃって……」
「正直に言えば、俺はおまえを部下だとしか思ってなかった。丸友の案件のときは、いい相棒だと思ってた。……あんなことになったのは、魔が差したとしか言いようがない」
 彼は渋い顔で、頭をかいた。そうだよね。私もそうだったもん。
「だが、おまえという人間に好感を持ってることは確かだ。家庭を営む上でも、よき相棒になってくれるんじゃないか、という期待もある。俺はあの晩の記憶は全部ある。おまえと話していて楽しかったのは本当だぞ」
 真摯(しんし)な瞳で射るように見つめてくる部長に、私は胸を押さえた。
 私だって楽しかった。こんなに和気藹々(あいあい)と話せる人だったんだ、もしかして気が合うところもあるのかな? そんなふうに思ったのも、してしまった原因だと思うし。
「梅原、おまえはどうだ? 俺のことをどう思う?」
「私は……部長のことがおっかないです」
 包み隠さず本音を言う。今はそのタイミングだ。ここで隠したら、私たちは大事なステップを踏み外すことになる。
「よく怒鳴られるし、正直苦手でした! でもあの夜、楽しく話せて嬉しかった」
 言葉を続けながら、私の中でなにかが動いていく。変化していく。
 妊娠のせい? ホルモンのせい? 私は大きな決断をしようとしている。
「今も、赤ちゃんに責任を取ろうという部長の言葉を、嬉しく感じてます。部長が一緒にこの子を育ててくれるというのなら、私は未来を懸けてみたいです……!」
 これは恋ではない。ひとつの命への責任。
 その重さに、目頭にたまっていた涙がぽろりとこぼれた。
 部長は私をまっすぐ見つめた。まるでこれから新規案件に取り組もうとでもいうように、情熱に満ちた表情で言う。
「俺たちは、夫婦という、いい相棒になれるな?」
「はい! なれます!」
 涙をぐっと拭って、私は答えた。
 決めた。私たちは家族になる。責任を〝家族愛〟に変えていくんだ。
「ところで、梅原。その……腹の子の写真はあるか?」
「写真? あー、エコー! ありますよ」
 バッグをガサガサと探る。手帳に挟んだエコー写真を出して、部長に手渡した。
 彼はしばし、無表情でそれを睨み、「よくわかんないな」と呟いた。
「えっと、これが赤ちゃんの入った袋です。あと、この白い点が赤ちゃんの心臓です」
「なんだ? まだ心臓しかないのか?」
「小さすぎて、よく映ってないんですよ。動画の状態では心臓が点滅してました」
「おお」
 部長はまたしても無言で写真を眺める。それから、ばっと顔を上げた。
「梅原、俺の覚悟を見せてやろう」
 言うなりスマホを取り出す。そして、どこかへ電話をかけだした。
「あ、もしもし? 一色です。今、飲み会に参加してるんでしょ? じゃ、外、出て。いーから!」
「あの……誰に電話してるんですか?」
 彼が答えないので、黙って見守る私。
「外に出ました? はいはい、すぐ済むから。えー、ご報告があります。俺、部下の梅原佐波と結婚することにしました」
 は? 誰になにを言ってんの、この人!? こーいうところは相変わらず、わけわかんない!
「ええ、ずっと付き合ってたんですけど、このたび、子どもができまして。まだ小さいんで内密にしてほしいんですけどね。まー、社長のあんたには言っといたほうがいいかと……」
「しゃっ、社長ぉっ!?」

つづく
【小説「ご懐妊!!】次回をお楽しみに


著者/砂川雨路  イラスト/くにみつ 監修/大浦訓章先生

この小説はスターツ出版文庫から刊行されている『ご懐妊!!』より掲載しています。たまひよWEB版は産婦人科医大浦訓章先生の監修のもと一部改訂しております。


砂川雨路
Profile
群馬県出身。東京都在住。著書に、『愛され新婚ライフ~クールな彼は極あま旦那様~』『クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした』(ベリーズ文庫)、『僕らの空は群青色』(スターツ出版文庫)などがある。現在、小説サイト「Berry's Cafe」「ノベマ!」にて執筆活動中。『ご懐妊!!』(スターツ出版文庫)は現在3巻まで発売中。テキストリンクなどもはれる。

大浦 訓章先生
Profile 
南流山レディスクリニック院長 慈恵医大卒。産婦人科准教授、同大付属病院総合母子健康センター産科部門長、東京母性衛生学会理事、日本周産期新生児学会評議員・副幹事長、日本周産期新生児学会新生児蘇生法委員などを歴任。現在、周産期メンタルヘルス学会評議員、女性スポーツ研究会理事、2020年産科婦人科学会、医会産科診療ガイドライン作成委員、2023年同評価委員。「たまごクラブ」でも監修をつとめる。

南流山レディスクリニック

ご懐妊!!3~愛は続くよ、どこまでも~

OLの佐波は、苦手な超イケメンの鬼部長・一色とお酒の勢いで一夜を共にしてしまう。しかも後日、妊娠が判明! 迷った末、彼に打ち明けると…。大人気シリーズ、ついに3巻発売!

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