働くママはこれ以上自分を追い詰めないで、「手放すこと」こそ必要なタイムマネジメント【専門家】
育児しながら仕事をしていると、毎日やるべきことがたくさんあります。「仕事と育児を両立したいのに、キャパオーバーになってしまう…」と悩むことも少なくないはず。効率よく物事をこなすためのタイムマネジメントについて、育児をしながら、正社員、派遣社員、フリーランスとさまざまな形態で働いた経験を持つキャリアコンサルタントの櫻木友紀さんに聞きました。
大切なことだけ守り、それ以外は捨ててOK
これまでたくさんの働くママの相談に乗ってきたという櫻木さん。“もっとできるはずなのに…”と、自分を追い詰めているママたちを見てきて、感じることがあるそうです。
「そもそも、子どもを育てるということはとても難しいこと。さらに仕事もしているのだから、たいへんで当然です。だからまずは、そんなに頑張りすぎないで、と言いたいです。
『自分は大変なことをしているんだ』と自らを認めてあげましょう。そして、山あり谷ありの子育て期であると割りきり、その場その場で穏やかにやり過ごせる方法を模索していけばいいと思います」(櫻木さん)
“タイムマネジメントで効率よく物事を進めたい”といっても、本当に求めていることは人それぞれだと櫻木さんは言います。
「『仕事のやりがいがほしい』『子どもと過ごす時間を増やしたい』『評価されたい』など、人によって求めるものは異なります。大切なものを見極めることで、効率化を進められます。自分にとって大切なことを守り、それ以外は捨ててしまうことがタイムマネジメントの本質だといえます」(櫻木さん)
「〇〇しなければならない」は捨てる。「自分はこうしたい」を大切に
いざ大切なことを守ってそれ以外は捨てようとしても、どれも重要に思え、取捨選択ができなくなることも…。大切なものと手放すものの見極め方を教えてもらいました。
「日本では母に対して暗黙の役割を求められがちです。たとえば『発熱時のお迎えはママ』『家事は女性が得意』というようなことです。でも、求められたままに頑張っておぼれていませんか? そもそも全部に応じるなんて不可能。自らの心の声に耳をすませ、「本当はこうありたい」という思いを大切にしましょう。
自分がどうありたいのかがわからないと、解決策を見つけるのは難しいものです。ひとりで考えこんでいると視野が狭くなりがちなので、できたら誰かに話をするといいでしょう。言語化することで思考が整理されるはずです」(櫻木さん)
それでは、家庭と仕事、それぞれにおける物事の手放し方について具体的に見ていきましょう。
家庭では、家事への注力する度合いを見極めて
自分にとって大切なものを見極めると、家事の力の入れ方も変わってくると言います。
「私のことを例にあげると、子どもの食事は手作りしたいと思っていたので、料理は頑張ろうと思っていました。
一方で、掃除は嫌い(笑)。だから、まずは掃除の何が嫌なのかを明確にすることに。すると、自分だけが汚したわけではないおふろやトイレの掃除が嫌だなと気づいたんです。
そこで、普段は夫に任せつつ、1~2年に1回程度、プロフェッショナルな掃除を依頼することにしました。結果、手抜きも認められ、イライラが解消しました。
ただ漠然と『掃除が嫌』というだけだと、答えは見つかりません。でも、『掃除の何が嫌? どんな解決方法がある?』と自分に問いかけると、問題点と解決方法が導き出されます。その結果、アウトソーシングや人に任せる、家族も巻き込んで掃除するなど、その家庭に合った方法が見つかるはずです」(櫻木さん)
仕事では、自分に求められていることは何かを明確にし、「見える化」も
仕事においては、自分がやりたいことと、自分に求められていることを知ることが大事だと言います。
「自分がやりたいことや、求められている役割は明確にしましょう。『私でなくてはならない仕事』に対しては力を注力し、そうでない部分は優先順位をつけ、65点くらいで済ませるなど、濃淡をつけることで効率化できます。
また、こだわりすぎないことも大切です。たとえば、仕事のプレゼンテーションなどで必要なパワーポイントの資料はきれいに作ろうと思えばいくらでも時間をかけられます。労力の割に成果が期待できないものは手放しましょう」(櫻木さん)
業務はもちろんのこと、個人的な予定もすべて公開することで、周囲も協力しやすくなります。
「予定や業務の『見える化』はとても大切です。管理職時代、私はスケジュールのソフトを使い、全員に自分の予定を公開していました。どうしても早く帰宅する必要があるときは、『絶対帰る(学校)』など具体的に記入を。早めに帰りたいけれど、状況しだいにで仕事を入れられるときは『できれば帰りたいな~』と軽めに書いていました。すると、周囲にも伝わりやすく、協力も得やすくなります」(櫻木さん)
すべてを全力でこなすのではなく、大事なことは大切にし、それ以外は省くことで、効率化できます。まず、自分の軸を明確にして、問題を解決しましょう。そうすることで、本当に求めていることを手に入れられるでしょう。
お話・監修/櫻木友紀さん 取材・文/齋田多恵、ひよこクラブ編集部
子育てで得たスキルは必ずキャリアに活きると櫻木さんは言います。子どもを育てることは大変でも、しだいにコツもつかめます。限られた時間の中で、大切なものを見極めることで、充実した毎日を手に入れられるに違いありません。
櫻木友紀さん(さくらぎゆき)
Profile
キャリアコンサルタント、プロコーチ、プロメンター。製薬企業で子育てをしながら管理職を経験。退職後、仕事を模索する中で、キャリアコンサルタントの職を知り、2018年に独立。管理職、女性、グローバルをキーワードに、第三者の視点からよりよい組織やキャリアに向けての活動を国内外で展開中。国際コーチング資格(ACC)、メンター資格を保有。
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