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「ステロイドを使っておけば…」後悔してもしきれないわが子の食物アレルギー【専門医に聞く】

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一般的な食物アレルゲンとの組成
写真はイメージです
monticelllo/gettyimages

子どもの食物アレルギーの研究はここ数年で大きく進行し、これまでの常識が非常識になってしまうほど新しいデータや調査が発表されています。中でも、乳児期の湿疹のコントロールが食物アレルギーの発症と関連があることがわかってきたという発表は話題になりました。とはいえ、その情報が育児中のママ・パパのすべてに伝わっているかというと、まだ課題があるようです。重い食物アレルギーを発症した息子を持つママが、自身の体験を語ってくれました。

6才の長男は3つの食物アレルギー。2才の次男は…。

長男・れんくん(6才)と次男・よりくん(2才)の食物アレルギーとの関連を話してくれたのは清水りささん。れんくんは離乳食開始時の6カ月ごろには鶏卵、小麦、乳の食物アレルギーがあり、6才の今も乳アレルギーの治療中です。次男のよりくんも、食物アレルギーを発症するのではないか、心配だったといいます。

「長男のときもそうでしたが、次男のときも育児休暇を取得していて、出産1年後には職場復帰する予定でした。職場復帰後はミルク授乳が増えることも考えて、よりも生後まもないころから母乳とミルクで育てていました。
長男の食物アレルギーの発症の始めはミルクで、それが3カ月のころだったので、次男にはミルクを恐る恐る、慎重に飲ませていました。
その後1カ月ごろになると、次男に湿疹が出始めました。長男も1カ月のころ湿疹が出たので、同じだ…と思いました」(りささん)

湿疹が出ていたが、処方されたステロイド剤は最小限しか塗らなかった

「長男と同じ…」。次男の湿疹を見たとき、りささんは長男の湿疹を思い出したといいます。長男も1カ月ごろ湿疹が出て産科や小児科に相談したところ「よくある乳児脂漏性湿疹だろうから、ステロイド剤を使って様子を見て」と診断されたと言います。
しかし、「ステロイド剤は強い薬だし、赤ちゃんにベタベタ薬なんて使わないほうがいい」という周囲の意見もあり、りささんはステロイド剤を最小限しか使わなかったと言います。

「当時の風潮としてもなんとなく、様子を見れば自然に治る、という空気があったと思います。結果的にステロイド剤は最小限しか塗りませんでした。アトピー性皮膚炎という診断であれば塗っていたのですが……。また、湿疹をケアしないと食物アレルギーのリスクが高まる、という情報もありませんでした」(りささん)

長男は3カ月のとき、ミルクアレルギーを発症

湿疹が出たまま時は過ぎ、長男は3カ月ごろにミルクアレルギーを発症、6カ月ごろから国立成育医療研究センターに通院し、食物アレルギーの治療をすることになりました。

「治療にあたり、食物アレルギーを防ぐためには早期の湿疹ケアをすることが重要であることをはじめて知りました。アトピー性皮膚炎・湿疹をケアして肌を健康に保つことが食物アレルギーの発症予防につながるというのです。逆に言うと、肌が荒れている赤ちゃんは食物アレルギーになりやすいということになります。
私も夫もアレルギーがなく、あまり心配しなかったこと、そして長男が1カ月ごろのとき、ステロイド剤でケアしなかったことを、後悔してもしきれない思いでした。
だからこそ、次男に湿疹が出たときは、すぐにケアしなければいけないと思いました」(りささん)

次男の血液検査の結果はすべて陰性

れんくん3才、よりくん6カ月。よりくんが離乳食を開始して1カ月ほどたったころです。

長男のことがあるので、国立成育医療研究センターのアレルギー科で次男の湿疹を相談して受診しました。すると、アトピー性皮膚炎と診断され、ステロイド剤を処方されました。今回は迷いもなく、ステロイド剤はおふろ上がり週2回と朝の保湿を毎日続けました。その結果…。

「離乳食開始前の5カ月に血液検査を受けたのですが、すべての食物に陽性反応はありませんでした。よく指導されている基本的な進め方のとおり、5カ月から離乳食をスタートし、卵も5カ月から食べさせました。その後次男に体調の変化はなく小麦や乳も問題ありません。‟食物アレルギーは防ぐことができる“と実感した瞬間でした。
」(りささん)

あのとき、ステロイド剤でスキンケアをしておけば……

現在は長男・れんくんには5日に1回、次男・よりくんには週に2回ステロイド剤を塗り、毎日保湿をしているといいます。
れんくんの食物アレルギーは経口免疫療法(原因食物を少量ずつ摂取しながら免疫をつけていく治療法)を受けることで、3才には鶏卵、5才で小麦が好きなだけ食べられるようになりました。6才の今では乳のアレルギーが残りますが、1日20mlまで摂取可能になったと言います。

「私は、ステロイド剤と保湿剤で湿疹をコントロールしたことで次男の食物アレルギーを防げた、と感じています。ステロイド剤はこわい、いやだ、というママやパパもいるかもしれません。しかし、正しい指導のもと使えばこわくありません。むしろ、湿疹をコントロールしないことで発症する可能性がある、食物アレルギーのほうがもっと恐ろしい病気だと感じています」(りささん)

国立成育医療研究センター・山本貴和子先生より

食物アレルギーを予防するために、(1)乳児期にアトピー性皮膚炎を発症したらすぐに治療介入をおこない皮膚バリア機能を正常化し、IgE抗体をつくらせないようにする、(2)アレルギーになりやすい食べ物を遅らせずに摂取して免疫寛容を誘導する、の2点が食物アレルギー発症を予防する戦略といえます。他方、妊娠中や授乳中の母親のアレルゲン除去が子どもの食物アレルギー予防につながる根拠はありません。バランスのいい食事をとるよう、心がけましょう。

監修/山本貴和子先生 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部

長男の食物アレルギー体験を踏まえ、次男の食物アレルギー発症を回避できたという清水りささん。できるだけ多くの人に、早いタイミングで「湿疹をコントロールすることの重要性を知ってほしい」と、話してくれました。

山本貴和子先生(やまもときわこ)

Profile
国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科医長。
2003年山口大学卒業。小児科学、アレルギー学が専門。小児アレルギーのリスク因子の同定や予防法の開発研究を行う。

研究成果
※文中の名前は仮名です。

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