トイトレ・おむつはずれは、子どもだけでなく、親のメンタルも重要【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第15回。前回に続き、テーマは赤ちゃん・子どもの「おしっこ」についてです。ついついしかってしまいがちな、トイレトレーニング(おむつはずれ)を進めているときのおもらし。そのとき、親はどう対応したほうがいいのか、自身の体験も交えて教えてくれました。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#15。
食事中に子どもをしかる?しからない?夫に疑問を感じた出来事
先日、3才の息子が食事中にスープにおもちゃを入れ、そのおもちゃを口にくわえて遊んでいました。すると、それを見た夫が突然「やめろ!」と大きな声を出して、口にくわえたおもちゃを乱暴に引き抜いたのです。
息子は驚いて泣き出し、私も、あまりに乱暴なしかり方にショックを受けてしまいました。夫は普段それほど声を荒らげることがなく、なぜそこまで激しく反応したのか理解ができませんでした。
スープにおもちゃを入れることは、お行儀が悪く、好ましくない行動であることは事実です。ただ、夫だってテレビやスマホを見ながら食事をするなど、お行儀が悪いことなど多々あるし、何がなんでも小さいうちから守らせる必要のあることだとは思えませんでした。
「マナー」「お行儀」のしつけは、優先順位低めでOK
私は、子どもに対してしかったり注意をしたりする際に、優先順位と伝え方の強度について自分の中に基準を持つようにしています。その中で、3才児において「お行儀」「マナー」に関するしつけはそれほど優先順位は高くありません。
<私の優先順位>
【1】危険に関すること
【2】危険ではないが、社会のマナーに関すること
【3】お行儀やできるとうれしい+αに関すること
【4】親の都合
最も優先度が高いのは、「危険」に関する行動に対して。口に食べ物を入れて動き回る際には「のどに詰まると危ないから座って食べて」、公園で先のとがった木の棒で遊んでいるときは「お友だちの目に入ると危ないからやめて」など、子ども自身や周囲にとって「危険」であることに対しては、理由とともに強く伝えるようにしています。
優先順位をつけないと、そのときの気分によって内容やしかり方の強度に変化が出てしまい、子どもも混乱するし、自分自身も疲れて嫌になってしまうからです。でも、しかったあとに「今のはほとんど【4】だったなー」と反省することもしばしば。できれば夫婦の間でも統一したいと思っています。
トイレトレーニングは、「しからないこと」がとっても重要
「排せつの失敗をしからない」というのは、トイレトレーニング(トイトレ)において極めて重要です。排せつの失敗は、ただでさえ自尊心・プライドが傷つく出来事。それに加えてしかられたり、恐怖心を与えられると、大きな精神的ストレスになります。ストレスと排せつは強く関係しているため、トイレの自立からも遠ざかってしまいます。
しかるだけではなく、ため息をついたり、ガッカリした表情を見せるのも同様にNG。ほかにも、本人のいる前でほかの人におもらししたことを話すのもよくないです。つまり、子どものメンタルへの配慮が、とっても大切ということ。わかっていてもしかってしまうという場合は、おそらく【4】の理由(親の都合)が大きいのだと思います。
外出先や布団の上でおもらしした場合、保護者の心理・業務上の負担が一気に追加されます。先日、息子がお店でおもらししてしまった際も、店員さんがあわてて飛んできて消毒してくれました。申し訳ないし気まずいので、店員さんへの「申し訳なさアピール」として、「ダメでしょ」としかっておいたほうがいいのか?という考えが一瞬よぎりました。
しかし「排せつのことはしからない」と決めているので、店員さんには「ありがとうございました」「お手数をおかけしました」と、息子には「おしっこしたくなったときには教えてね」と普段通り伝えるにとどめました。
トイトレでしからなくて済むよう、親の負担を最小限にする工夫を
家の中であっても、疲れているときや余裕のないときに、追加の洗濯や掃除といった業務が発生することに対して、ネガティブな気持ちが生じるのは当然です。
「とにかく排せつに関してはしからない」と決めてしまい、おもらしした際の保護者の負担を最小限にすることを考えましょう。夜のおもらしによる洗濯への負担感が大きい場合、子ども自身も抵抗がなければ、おむつをして眠ることも悪くありません。
子どもを「しからない」「ほめる」ためには、保護者のメンタルが元気であることも大切です。「どうしてしかってしまうのか?」を一度考えてみるのもいいですね。
「周囲はみんなおむつがはずれているので、不安であせってしまう」「おむつ代が経済的に負担でイライラしてしまう」「体力が限界で、これ以上仕事(洗濯・掃除)を増やしたくない」「子育て以外のことでストレスがある」など、さまざまだと思います。
冒頭のエピソードのあと、夫は「仕事で疲れてイライラしていた」と、【4】の理由(親の都合)が大きかったことを認め、反省していました。
トイレトレーニングには子どもも保護者もメンタルがとても重要。排せつに関して、つらさや悩みを感じている場合は、お子さんの年齢にかかわらず一度かかりつけの小児科で相談してみてください。
構成/ひよこクラブ編集部
トイレトレーニングは、2~3才代のママ・パパにとっては最大の関心事の一つ。とくに子どもがおもらしをしたときは、思わずしかってしまいがちです。でも、なるべくしからず、親子ともに最小限のストレスで進められるように工夫できるといいですね。次回も、気になる子どもの性器や排せつに関するお話を、お楽しみに。