「男の子だから」「女の子だから」… その思い込みは要注意!【ママ泌尿器科医】
ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の連載第18回。今回のテーマは、「産まれてくる赤ちゃんの性別に対する、まわりの反応」です。
岡田百合香先生が、2人目の妊娠・出産を通して感じた“男女の性別に関する固定観念”について語ります。「お母さんのためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#18。
2人目出産は予定日超過で、周囲の言葉にイライラ…
先日、第2子となる女の子を出産しました。
第1子は予定日より早く産まれたため、今回も予定日前に産まれると思っていたのですが…、1週間超過し、誘発分娩となりました。
予定日を過ぎてからの1週間は、腰痛やおなかの苦しさに加えて、「本当に産まれてくれるの?」「胎盤機能が低下していないだろうか?」といろいろ不安で…。周囲の「どう?」「産まれそうな兆候はある?」といった言葉だけでなく、「おなかの中のほうが居心地いいんだね~」というやさしい言葉にも、イライラしてしまう始末。予定日超過でこんな気持ちになるとは知りませんでした。
何はともあれ、無事に生まれてくれたことに感謝です。
「男の子はかわいいよ~」と言われるけど、女の子は?
さて、妊娠中はいろいろな人から、子どもの性別を聞かれます。
第1子は男の子だったので、「男の子です」と答えると「男の子はかわいいよ~」とたくさんの女性(子育て経験者)から言われました。しかし、第2子のときに「女の子です」と答えても、「女の子はかわいいよ~」という言い方はほとんどされませんでした。
確かに、産まれてから今に至るまで、息子は私にとって最高にかわいい存在ですし、これからもきっとかわいいのだと思います。ただ、「男の子だから」かわいいのかと言われると、「?」な気もします。
「男の子はかわいい」という意見を掘り下げて聞いてみると、
[1]男の子は、同年齢の女の子と比べて幼いから
[2]異性なので、母親にとって小さな恋人のような存在になってくれるからという意見が多く出ました。
“男の子は女の子より幼い”の思い込みに注意
[1]はよく聞きますが、本当なのでしょうか?たとえば女の子のほうが口が達者とよく言われますが、幼児期の言語発達に明らかな性差はないようです。研究論文でも「性差はない」、もしくは「無視できる程度の微々たる差」とされています。
「男の子のほうが幼い」というのは、「男の子はわんぱくなほうがいい」「女の子はお行儀よくしていたほうがいい」といった社会通念が先にあり、同じこと(いたずらなど)をしても、男の子は許容され、女の子は注意される…というような環境が生み出しているのかもしれません。
「男の子は幼い」「幼いほうがかわいい」という大人の思い込みや都合で、危険や性(プライベートゾーン)に関する行動に対して教育する機会を逃すことは、男の子にとってもマイナスです。
女の子だったらしかるのに、男の子はスルーしてしまうことがないか、一度振り返ってみてほしいと思います。
男の子の「ぼくがお母さんを守る!」は、素直に喜んでいい?
また、[2]の「小さな恋人」という考え方も注意が必要です。
たとえば、「ぼくがお母さんを守る」と言われたらうれしいですか?このセリフはよく耳にし、好意的に受け取られがちです。私も瞬間的に「かわいい!うれしい!」と思ってしまうかもしれません。
一方で「ぼくがお父さんを守る」や、女の子が言う場面もほとんど見聞きしません。「男の子はお母さんを守ってあげてね」と周囲から言われるのかもしれませんが、女性は男性より弱い存在、男性にかばわれる存在であるという認識を幼少期から持つのは、あまり望ましくないと私は考えています。
また、将来、わが子が何かを決める際に「お母さんが喜ぶかどうか」に縛られないでほしい。子どもには親を喜ばせたり守ったりする義務はないことを、親(大人)側がちゃんと認識しておく必要がありますね。
今回は、「子どもの性別はどっち」に対するコメントの男女差から、いろいろ考えてみました。第1子が女の子で第2子が男の子の場合、子どもたちが同性の場合、また、父親の世界でも「男の子はかわいい」もしくは「女の子はかわいい」的なやりとりがあるのか気になります。
今のところ、息子と娘の育児で性差を感じる場面はありませんが、今後成長に伴って変化が出てくるのかどうかも楽しみです。
文・監修/岡田百合香先生 構成/ひよこクラブ編集部
2人目を出産して、男の子と女の子の育児真っ最中の岡田百合香先生。男の子・女の子、それぞれの妊娠時のまわりの反応が興味深く、性別による思い込みや決めつけは、子どもの将来のためにもよくないことだとあらためて感じたそうです。
次回も、子どもの性や、性器、排せつなど、ママ・パパが気になる話をお届けします!お楽しみに。