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小児救命救急センター24時【熱中症(ねっちゅうしょう)】

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体育館は熱気が充満! 娘は汗をかいたあとで疲れて寝てしまい…

 「突然の発熱でぐったりしている8カ月の女の子を搬送したい」と、なじみの救命士からホットラインがあった。私はすぐに救急室へと急ぎ、救急車の到着を待つことにした。救急車から母親に抱っこされて降りてきた女の子は、確かに元気がなくぐったりしており、呼吸状態はやや多呼吸であった。また、手足は冷たく、顔色も悪く、頭は少し熱を帯びていた。酸素濃度を計る検査では状態はいいものの、心拍が速く、血圧も低下して危険な状態であることを思わせた。そこで、すぐに点滴と採血、X線検査、検尿パックの装着を行うよう指示した。

 採血検査の結果では血糖値はいいものの、血液ガス分析検査*1では呼吸不全(こきゅうふぜん)や腎不全(じんふぜん)など重篤な疾患の可能性が考えられた。そのため、点滴の速度を速めることと、血清電解質(けっせいでんかいしつ)*2の測定を急がせるよう指示して、診察の様子を不安そうに立ちつくして見ている母親から話を聞くことにした。とくにこの数日、女の子には風邪のような症状もなく、元気であったとのこと。今日はお兄ちゃんのバスケットの試合があり、お昼前から小学校の体育館に応援に行っていたそうだ。「3時間ほど応援していたのですが、確かに体育館内は熱気もあり、むし暑かったと思います。風が入る窓際にいたのですが、私も汗をかくほどの状態でした。娘も最初のうちは汗をかき、着替えがなかったのでタオルでふいてあげていました。ベビー用イオン飲料を持参していたのですが、後半は汗もかかなくなり、疲れたのか眠ってしまったので、わざわざ飲ませることなく寝かせていました」

*1 血液中の酸素や二酸化炭素などの濃度や比率を分析する検査のこと。
*2 血液中のナトリウム、カリウム、クロール(塩素)、カルシウム、リン、マグネシウムなどのこと。

家に帰って熱を測ると39度!ぐったりとした様子で心配に


 「試合が終わって家に帰ってきてもグズって起きようとしないし、顔色がいつもと違うように思えました。抱きかかえてみると体が熱くて、あわてて熱を測ると39度を超えていたんです。ぐったりしていつもと様子が違うので、心配になって救急車を呼びました」

 母親の話と女の子の状況、血液の状態から考えると、おそらく熱中症であろうと予測された。それと同時に、血清電解質の結果は高(こう)ナトリウム血症(けっしょう)*3の可能性が高く、体内の水分が著しく低下している状態であることがわかった。血清ナトリウム値が高いので、慎重に点滴を行うことと、血液検査を行うために入院の指示を行った。母親には「熱中症による強い脱水を起こしていて、病気の進行を食い止めるための集中治療が不可欠です」と説明すると、納得いかない表情で「熱中症って、日射病(にっしゃびょう)みたいなものでしょう!? 日に当たっていない体育館の中にいたのに、どうしてですか!?」と質問された。「日に当たっていなくても、暑い場所に長くいると、小さな子どもほど簡単に熱中症になってしまうんです。汗をかいたらそれ以上に水分を補給する必要があります。そうしたバランスが今日はできなかったのでしょう」と説明すると、母親は納得した顔で入院治療に同意し、子どもに「ごめんね」と謝っていた。

*3 血液中のナトリウム濃度が正常値を超えて上昇した状態。

【熱中症とは?】
夏に限らず、暑さの厳しい環境にさらされることにより起こる症状です。「熱(ねつ)性けいれん・熱失神(ねつしっしん)」という初期(軽症)と、「熱疲労(ねつひろう)」という中等症、生命の危険がある「熱射病(ねっしゃびょう)」という重症型があります。悪化のスピードはとても速いので、こまめに水分補給するなど、早め早めの対処が不可欠です。

■監修:(故)市川光太郎先生
北九州市立八幡病院救命救急センター・小児救急センター院長。小児科専門医。日本小児救急医学会名誉理事長。長年、救急医療の現場に携わり、子どもたちの成長を見守っていらっしゃいます。

【市川先生から…】
熱中症は体育館や車内など、日に当たっていない状況でも起きること、低年齢の子どもほど起こりやすいことも知っておこう。汗が止まるなど熱中症の兆候が見られたら涼しい場所に移動し、経口補水液をこまめに与えて。

イラスト/にしださとこ

【お知らせ】
市川先生が、赤ちゃんがかかりやすい病気や起きやすい事故、けがの予防法の提案と治療法の解説、現代の家族が抱える問題点についてアドバイスしてくださった「救命救急センター24時」は、雑誌『ひよこクラブ』で17年間212回続いた人気連載でした。2018年10月市川光太郎先生がご逝去され、連載は終了となりました。市川先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます(構成・ひよこクラブ編集部)。

※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。

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