おしっこは無菌って知ってた?おちんちんの皮はむいた方がいい?【ママ・パパのためのおちんちん講座】
たまひよONLNEでコラムの連載を持ち、4才の男の子と1才の女の子のママである泌尿器科医・岡田百合香先生。先生は不定期で「ママ・パパのためのおちんちん講座」をオンライン開催しています。テーマは「男の子の子育てで知っておきたい おちんちんケアに関して やるべきこと、やらなくてよいこと」。2022年7月下旬の夜、子どもたちが眠ったころの時間に行われた、このオンライン講座の内容をリポートします。
おちんちんの皮をむくとは、ルーズソックスを下げるような感じ
講座は(1)おちんちんの皮、むくむかない問題(2)洗い方(3)おむつ替えの3つのテーマに分かれていて、岡田先生からの講義のあとに参加者の人からの質問に答えるというスタイルです。
1つ目の「おちんちんの皮、むくむかない問題」は、男の子のママ・パパならとても関心が高いテーマではないでしょうか。
「男性のおちんちん(陰茎)は、亀頭が包皮に覆われていて、亀頭と陰茎の境目のところに『冠状溝(かんじょうこう)』というくびれがあります。『おちんちんの皮をむく』とは、包皮を陰茎の根元に向かって下げて、冠状溝まで出せるかどうかがポイントです。
その状態・状況は3つに分類することができます。勃起(ぼっき)したときと洗うときに
【タイプA】亀頭が冠状溝まで出ている
【タイプB】亀頭の一部が出る
【タイプC】亀頭が完全に覆われている
によって分けられます。
平常時はどのタイプでも問題がありませんが、勃起したときと洗うときに亀頭がどのくらい出るかによって、排尿や性行為、洗うときにどのくらい影響が出るかが異なります。
生まれたときのおちんちんは全員『真性包茎』の状態で、包皮と亀頭が癒着しています。その癒着が徐々にはがれ、包皮がずれるようになってきて、幼児期から思春期が終わるころにかけて自然と冠状溝まで露出できる状態になりますが、こ
の時期には個人差があります。
また、『皮をむく』というと、バナナのようにぺろっとむけるのかと思ってしまいますが、そうではなく、20年以上前に流行したルーズソックスのような感じで、靴下を下にずり下げるっていうようなイメージが近いでしょう。『おちんちんの皮をむく』とは、かぶっている皮を下の方に引き延ばすような動作になります」(岡田先生)
「むくか・むかないか問題」とは?
多くのママたちが気になる「おちんちんの皮をむくか・むかないか」。専門家の間でも意見が分かれているこの問題を、どのように考えたらいいのか、岡田先生がヒントを示してくれました。
「『むくか・むかないか問題』とは、生まれたときの真性包茎の状態のおちんちんを、乳幼児期に保護者が癒着をはがして亀頭を露出するようなケアをすべきか、という問いのことです。
これは専門家の間でも意見が分かれています。『3才児健診で保健師さんにむくように言われたけれど、小児科医に相談したらむかなくていいと言われて、混乱している』といったママからの質問をたくさん受けます。
なぜ『むくべき』と考えるか、その1つはむかないとばい菌が入りやすくなってしまうこと、もう1つは、上の図のタイプBやタイプCのように将来性行為のときや衛生面に支障をきたすことを予防するため、といわれています。
しかし、現在では基本的には、親が無理に乳幼児の亀頭の癒着をはがす必要はないという考え方が主流です。無理にはがすことで、逆に亀頭を傷つけたり、再癒着してしまったりすることがあるからです。あとは子ども自身が嫌がったり痛がったりすることもあり、それを無理に行うことの倫理的な問題もあります。アメリカ、イギリス、オーストラリアなど日本以外の国でも、親が無理に癒着をはがす必要はないというのが基本的な考え方になってきています」(岡田先生)
包茎は恥ずかしいことではない、というのが正しい価値観
親がおちんちんの皮を無理にむかなくていい、とはいえ、「おちんちんのことはほうっておいていい、ということではない」と岡田先生は言います。
「おちんちんの皮をむく・むかないにかかわらず、正しい洗い方を親が実践しながら教えてあげることが大切です。そしてもう一つお伝えしたいのは、『包茎は恥ずかしい』という誤った価値観が社会にまん延していることです。その価値観によって、美容広告などの影響を受けて、必要がないのに手術を受けて傷ついたり困ったりしている男性もいます。親自信が、『包茎はいじめられる』『包茎はモテない』から包茎を治してあげたい、ではなく、その価値観を終わらせることが、子どもを含め多くの男性を救うと考えています」(岡田先生)
おしっこは無菌なので汚くない。おむつ替え時におしっこだけならふかなくても
このほかに岡田先生は、(2)洗い方のパートでは、おちんちんの正しい洗い方、「むいたら戻す」を子どもに教えてあげること、石けんはつけるならしっかり流すこと、などのポイントを教えてくれました。
続いて(3)おむつ替えのパートでは、おしっこはそもそも無菌であり汚くないので、おむつ替えのときにおしっこをふく必要もないこと、おちんちんも汚くないので男の子がおちんちんを触っていても「汚いよ」という必要はないこと、など、ママたちのモヤモヤがスッキリするような話をしてくれました。
「世の中にあふれる子育て情報を、あれもこれもやらなきゃと思うと、ママたちは大変ですよね。だからせめておちんちんのことに関しては『やらなくてもいいこと』と『どっちでもいいこと』を明確にして、そのことに悩む時間を減らすことができたら、と考えています」(岡田先生)
おちんちんについての疑問、教えて!岡田先生
セミナーの後半では、参加者の皆さんからの質問や感想に、岡田先生が答えてくれるパートも。その中からいくつかを紹介します。
Q 4才の長男は皮をむいたことがありません。おふろで洗うときにはむいてあげたほうがいいですか?(パパの参加者)
【岡田先生より】
おちんちんの先に包皮がたわんでいる部分は、おちんちんの根元に向かって少し引き下げて洗ってあげるといいと思います。引き下げられるところまでで大丈夫です。子どもが痛がるまで引っ張らないようにしてください。そして、洗ったら元に戻してください。このような正しい洗い方を小さいときからしてあげると、子どもも自分で正しく洗えるようになると思います。
Q むきむき体操はしたほういいですか?(ママの参加者)
【岡田先生より】
むきむき体操は、子どものおちんちんを親がむいてあげると清潔をたもてる、また将来の困りごとの予防をできるという考え方です。ただ現在では、親がむくのはデメリットのほうが大きいとわかってきているので、基本的にはやらなくて大丈夫です。
けれど、自分の子どものためにおちんちんの皮をむいてあげたい、という保護者もいます。その人にとっては正しいむき方、戻し方も伝える必要があるとも思います。
Q 男女差別にならないために、男性器のおちんちんのように、女性器の呼び方も教えるべきでしょうか?(ママの参加者)
【岡田先生より】
男性器は「おちんちん」という呼びやすい幼児語が広まっていますが、女性器についてはテレビなどでは放送禁止用語になっています。女性器の呼び方は、各家庭によっていろいろ、というのが現状だと思います。女性器の呼び方も、男性器の「おちんちん」のように日常語になるといいのですが、まだまだタブー感が強いです。フラットに呼べる女性器の名称が見つかるといいなと考えています。
取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
講座の感想には「おしっこが無菌とは意外だった」というコメントも。岡田先生は「おむつ替えのときにおしっこがかかったり、服についたり、床がぬれたりしたときに、全然汚くないと知っているだけで、育児ストレスが軽減されると思います」と話しました。
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泌尿器科医ママが伝えたい おちんちんの教科書
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