【女優・加藤貴子】おちんちんの皮はむいた方がいい?触るくせ、やめさせたほうがいい?泌尿器科医が回答!


赤ちゃんのお世話の中でも、おちんちんのことについては、ママにとってよくわからないことが多いのではないでしょうか。7才と4才の2人の男の子のママである女優・加藤貴子さんも「おちんちんの皮をむいていないと、からかわれることがあると聞いて心配になった」といいます。
育児関連の悩みや気がかりについて加藤さんが専門家に聞く連載、第5回。今回はおちんちんがテーマ。4才の男の子と0才の女の子のママで、たまひよONLINEでも連載を持つ、泌尿器科医の岡田百合香先生に話を聞きました。
医学的には、おちんちんの皮は親がむく必要はない
加藤さん(以下敬称略) 私は3姉妹で育ったこともあり、おちんちんのことをほとんど何も知らずにいたので、おちんちんの皮を赤ちゃんのうちにむくかむかないか、ということは周囲のママたちとの雑談で初めて耳にしたくらいでした。でも、周囲のママたちの話によると、6カ月健診で保健師さんにむいてもらったとか、むいていないとおちんちんにばい菌が入りやすいとか、思春期になった時にお友だちにからかわれる、などなど。話を聞いて、どうしたものか、今からできることはあるのかと悩んでいます。
岡田先生(以下敬称略) 以前はおちんちんの皮はむいたほうがいいという医師も多かったので、その時に学んだ看護師さんや保健師さんの中には、むいたほうがいいという指導を続けている方もいます。
むいたほうがいいといわれた理由の1つは、むかないと汚れがたまって炎症を起こしやすいからというもの。
2つめは、真性包茎(しんせいほうけい)に関することです。8〜9割の人は思春期が終わるころまでに問題がない程度まで皮がむけるようになりますが、真性包茎のまま大人になる人も1割程度います。真性包茎は炎症を起こしやすい、性行為に支障が出るなどのトラブルが起こることがあるので、子どものうちにむくことで真正包茎を予防しようという考え方です。
けれど、現在この2つのおちんちんに関するトラブルは、乳幼児期に親がむくかむかないかとは関係がないという考え方が泌尿器科医の中での主流です。逆に、無理にむくことで傷を作ってしまったり、癒着の原因になったり、嵌頓(かんとん)包茎(包皮をむいたら戻らなくなってしまった)という状態を起こす原因にもなり得ます。
なので、保護者がむくことよりも、正しいケアのしかた、洗い方を子どもに教えることが大切です。言葉がわかるようになってきたら、入浴時には「むけるところまでむいて、やさしく洗う、洗ったら必ず皮を戻す」ことを伝えましょう。
加藤 成長によって自然にむけるようになるんですね。おちんちんはいつごろからどんなふうに成長するのでしょうか。
岡田 乳児期から10才くらいまでは、体の成長に伴って少しずつ大きくなります。生まれてすぐの赤ちゃんは全員が真性包茎で、3〜5才くらいにかけてだんだん皮がむけやすくなっていきます。その後、10~12才ころから思春期(第2次性徴)が始まると、大きくなってきた精巣から男性ホルモンが多く分泌されて、性器の見た目が変わってきます。個人差が大きいですが、このころにおちんちんも大きくなって皮がむけてくることがほとんどです。
仮性包茎は医学的に正常。誤った価値観に惑わされないで
加藤 包茎だとからかわれる、ということも耳にして気になっています。真性包茎かどうかというのは、見た目でわかるものですか?
岡田 まずは「包茎」について簡単に解説します。おちんちんは陰茎の先端部分に亀頭があり、それを包皮が覆っています。赤ちゃんの時期はみんな、亀頭の先まで包皮が覆っていて皮が下がらない状態で、これを真性包茎といいます。それが、成長とともに皮が下がるようになり、亀頭の下のくびれ(冠状溝/かんじょうこう)の部分まで包皮がむけるようになってきます。普段は皮をかぶっているけれど、洗う時や性行為の時にスムーズに亀頭を露出できる状態が仮性包茎です。真性包茎も仮性包茎も、通常時は亀頭が包皮で覆われている状態なので、見た目では区別はできません。
男性の中には、常に皮をかぶっていない状態がかっこいい、という価値観もあるようで、平常時に皮がかぶっていたら「包茎」とからかわれることもあるようです。けれど、仮性包茎は医学的には何の問題もありません。
私は助産院などで「ママのためのおちんちん講座」を開いていますが、加藤さんがおっしゃったように「いじめやからかいの原因にならないか」という不安は耳にします。
でも、そもそも包皮に限らず、身体的特徴に優劣をつけて、からかうこと自体大きな問題ですよね。
「いじめられないように、包茎を何とかしたい!」ではなく、「包皮の状態でからかったり、からかわれたりするのは無意味でおかしいことだ」という考え方を保護者にも子どもにも伝えていきたいです。
加藤 おちんちんのことがよくわかっていないままに、どうやらからかわれる原因になるらしい、など不安要素ばかりを膨らまして心配になっていました。正しい知識を持つとともに、人のプライベートなことは指摘すべきではないと、大切なことを子どもたちに伝えていきたいと思いました。
おちんちんを触るくせ、やめさせたほうがいい?
加藤 長男も次男もばい菌が入っておちんちんが腫(は)れたことがあります。長男は泌尿器科、次男は救急で小児科を受診しましたが、いつもどこに行ったらいいか迷います。何科を受診するといいですか?
岡田 おちんちんをかゆがる、腫れた、などの症状なら、かかりつけの小児科に行くといいでしょう。ばい菌をやっつける飲み薬や塗り薬を処方してくれるはずです。「嵌頓包茎」や「精巣捻転(たまたまが腫れる、痛がる)」は緊急で専門的な処置が必要なので、泌尿器科もしくは泌尿器科のある総合病院の救急外来を受診しましょう。
加藤 息子たちはよくおちんちんを触るんです。「ばい菌が入るから触っちゃダメ」と注意してもやめる気配がありません。どんなふうに注意したらいいですか?
岡田 自分の体を自分で触ること自体は何も悪いことではないので、無理にやめさせる必要はありません。自分の性器に興味を持つことはすごく大切で、普段の自分の正常な状態を知っておけば、何らかのトラブルや異常が起きた時にすぐに気づくことができます。
「おちんちんを触っちゃダメ」というと、自分の性器に対して「触ってはいけないもの」というネガティブなイメージを持ったり、触っていてトラブルがあった時に保護者への相談が遅れるというデメリットもあります。
私が開催している講座で200人くらいのママたちとお話ししてきましたが、「うちの子はおちんちんを触りません」という人はほとんどいません。
おちんちんって、とても触りやすい場所にありますよね。ちょうど手を伸ばすと触れるからだの前面で、意味なく触りやすいというか。
かゆみや違和感、気になることがないかどうかの確認は必要ですが、「なんとなく」触っているだけなら、やめさせる必要はありません。
ただ、いつでもどこでも触っていいわけではないことは伝える必要があるでしょう。
「触ることは悪いことではないけれど、人前では触らないようにしようね」「大切な場所だから、キレイな手で触ろうね」と伝えるのがポイントです。
加藤 そうなんですね。家で触るぶんには、あまり指摘しないようにおおらかに構えてあげようと思います。
お話/加藤貴子さん、岡田百合香先生 撮影/アベユキヘ 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
「ママはおちんちんのことがよくわからないからこそ、正しい知識を持ったほうがいいし、パパも女の子の体のしくみを学ぶべき時代になっていくと思う」と岡田先生。性器はとても大切だからこそ、ママやパパが小さいうちから正しい知識を伝えケアしてあげることで、子ども自身も、自分の体を大切にすることにつながるのではないでしょうか。
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加藤貴子さん(かとうたかこ)
PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。